会社法Ⅱ 新株の不公正発行

閲覧数2,837
ダウンロード数1
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    会社法Ⅱ
    新株発行
    問題)株式公開会社である甲株式会社(授権株式総数2000万株、発行済株式総数1
    000万株)が乗っ取りを専門とするBから株の買い占めをされた上、経営権の譲
    渡を要求された。そこで甲会社は取締役会決議の上、授権枠残り1000万株を利
    用して500万株の新株を1株につき800円(時価1000円)で会社に友好的
    な第三者に割り当てる第三者割当増資を行った。Bはいかなる主張をしうるか。ま
    たその主張は認められるか。
    1.序説
    2.時価を下回る有利な価額での新株発行
    3.経営権保持のみを目的とする新株発行
    4.新株発行の有効性
    (1)判例
    (2)学説
    5.検討
    1.序説
    株式公開会社では、常にこのような買収問題が生じる可能性がある。こうした場合に、
    被買収会社がとりうべき対抗手段として、新株発行によって買収者の持分を減少させる方
    法がある。その際に、本問のような問題が生じる。
    本問では、甲会社は①時価を下回る有利な価額での新株発行
    ② 現 経営陣の経営権保持のみを目的とする新株発行はどのような問
    題を生じるか
    ③当該新株発行は有効か という問題がある。
    2.時価を下回る有利な価額での新株発行
    商法は、株主以外の第三者に対して、特に有利な価額で新株を発行する場合には、その
    理由を示して、株主総会における特別決議による賛成を得なければならないとする(28
    0条ノ2第2項)。ここにいう「特に有利な価額」とは、判例によれば時価の3~5%の割
    引で、実務においては時価の96%以下の価額でこれに該当するとされている。この条件
    に当てはまる価額での新株の第三者割当であれば、280条ノ2第2項に該当し、株主総
    会での特別決議が必要となる。
    本問の場合、時価1000円/株であるところ、800円/株での発行であるから、時
    価の80%での割り当てであり、判例・実務いずれの基準においても280条ノ2第2項
    の「特に有利な価額」に該当する。
    3.経営権保持のみを目的とする新株発行
    商法は、定款・法令違反または「著しく不公正な方法」による新株の発行によって株主
    が損害を被る虞がある場合には、株主は新株の発行の差し止めを会社に対し請求できると
    いう発行差止を規定している(280条の10)。現経営陣の経営権保持のみを目的とする
    新株発行が、ここにいう「著しく不公正な方法」に該当する場合には、株主は会社に対し
    発行差し止めの請求をすることができる。この点について判例は、「新株発行が特定の株主
    の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされたもので
    あるときは、その新株発行は不公正発行にあたる」とし、差し止めの対象となると判断し
    ている。しかし、既に新株が発行された場合には差し止めの効力は及ばない。
    4.新株発行の有効性
    (1)判例
    著しく不公正は方法による新株の発行は、280条の10で発行差止請求の対象となる
    ことは前述したとおりだが、「差止請求」はその名が示すように、不公正発行の事前防止の
    手段であり、この差し止め発行の効力は、既に発行がなされた場合には及ばない。そこで、
    既に発行がなされた新株について、事後的な新株発行無効の訴えによって無効主張は可能
    であるかが問題となる。
    取締役会決議を経ないでされた特定株主の持株比率を大きく変動させる効果を持つ新株
    発行について、新株発行の無効主張がなされた事件で、最高裁は「会社を代表する権限の
    ある取締役が新株を発行した以上、たとい、新株発行に関する有効な

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    会社法Ⅱ
    新株発行
    問題)株式公開会社である甲株式会社(授権株式総数2000万株、発行済株式総数1
    000万株)が乗っ取りを専門とするBから株の買い占めをされた上、経営権の譲
    渡を要求された。そこで甲会社は取締役会決議の上、授権枠残り1000万株を利
    用して500万株の新株を1株につき800円(時価1000円)で会社に友好的
    な第三者に割り当てる第三者割当増資を行った。Bはいかなる主張をしうるか。ま
    たその主張は認められるか。
    1.序説
    2.時価を下回る有利な価額での新株発行
    3.経営権保持のみを目的とする新株発行
    4.新株発行の有効性
    (1)判例
    (2)学説
    5.検討
    1.序説
    株式公開会社では、常にこのような買収問題が生じる可能性がある。こうした場合に、
    被買収会社がとりうべき対抗手段として、新株発行によって買収者の持分を減少させる方
    法がある。その際に、本問のような問題が生じる。
    本問では、甲会社は①時価を下回る有利な価額での新株発行
    ② 現 経営陣の経営権保持のみを目的とする新株発行はどのような問
    題を生じるか
    ③当該新株発行は有効か という問題があ...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。