熱力学関数
熱力学がこんなに美しかったなんて。
ヘルムホルツの自由エネルギー
定圧変化において d'Q と同じ意味を持つ状態量がエンタルピー H であった。 また断熱変化において d'W と同じ意味を持つ状態量は内部エネルギー U であった。
では他には作れるだろうか? 例えば、等温変化において d'W と同じ働きをする状態量というのはどうだろう? やってみよう。
と書ける。 エントロピーにはこんな使い道があるのだ。 この式を意識しながら、
という量を作る。 この微小変化量は
であるから等温変化 dT = 0 の場合には、
となる。 これはさっきの d'W と同じではないか。 つまり新しい状態量 F は等温変化の時に取り出せる仕事 d'W を表しているのである。 しかし等温変化以外の時の物理的な意味はあまり無い。 この状況はエンタルピーと同じだ。
この式の中の -TdS の部分は温度を一定に保つために使われるエネルギーを表しており、自由には取り出せないエネルギーである。 よって「束縛エネルギー」と呼ばれている。 それに対する意味で F を「自由エネルギー」と呼ぶ。 式を次のように書いた方がイメージしやすいだろうか。
内部エネルギーに、仕事として取り出せる部分とそうでない部分があるわけだ。 自由といっても、束縛エネルギー以外は仕事として必ず取り出さなくてはならないわけで、自由に量を決められるという意味とは違う。 むしろ「仕事として解放 ( free ) される」といった意味に近い。
この他にも似たようなものが後から出てくるので、区別するために F を「ヘルムホルツの自由エネルギー」と呼んでおくことにしよう。
他の状態量を探せ
他にはどんな状態量が作れるだろう? この調子でどんどん作れそうな気がする。 しかし下の表を見てもらいたい。
等温変化 d'W = dF d'Q = T dS 断熱変化 d'W = dU d'Q = 0 定積変化 d'W = 0 d'Q = dU 定圧変化 d'W = - p dV d'Q = dH すでに出来そうなものは全て埋まってしまっている。 今のところ、これ以上新しい量を作り出す理由はないようだ。
溢れ返る関係式
熱力学の第一法則をもう一度書く。
これにここまでの知識を当てはめることで、
と書き換えることが出来て、これは状態量の微小変化の間の関係を表している。
これは U の全微分の形式になっているが、少し変形するだけで S や V についての全微分の形式にすることも出来る。
ところで全微分というのは
という形になっているはずである。 この3つの式とその前の3つの式の係数を比較すれば
という関係が成り立っていることが言えるだろう。 いきなり幾つもの関係式が出てきてしまったが、イメージの伴わないような式が幾らザクザク出てきたところでそんなに面白いものではない。 本当に役に立つ関係かどうかもよく分からない。 たまに「科学者は使えない式を新しく見つけては喜んでいる」というような誤解を受けることがあるが、そういう趣味を持つのは一部の人だけだ。
今の興味はむしろ、全部で幾つほどの関係式が導き出せるものなのか、という部分に向いている。 たとえ全ての関係を書き出すのが現実的でないとしても、それらを系統立てて理解することができるならそれでもいい。 丸暗記はまだやめた方がいい。
この他にもまだ関係式が導き出せる。 全微分条件というのを使う。 前にも話したが、もう一度説明しよう。
熱力学関数
熱力学がこんなに美しかったなんて。
ヘルムホルツの自由エネルギー
定圧変化において d'Q と同じ意味を持つ状態量がエンタルピー H であった。 また断熱変化において d'W と同じ意味を持つ状態量は内部エネルギー U であった。
では他には作れるだろうか? 例えば、等温変化において d'W と同じ働きをする状態量というのはどうだろう? やってみよう。
と書ける。 エントロピーにはこんな使い道があるのだ。 この式を意識しながら、
という量を作る。 この微小変化量は
であるから等温変化 dT = 0 の場合には、
となる。 これはさっきの d'W と同じではないか。 つまり新しい状態量 F は等温変化の時に取り出せる仕事 d'W を表しているのである。 しかし等温変化以外の時の物理的な意味はあまり無い。 この状況はエンタルピーと同じだ。
この式の中の -TdS の部分は温度を一定に保つために使われるエネルギーを表しており、自由には取り出せないエネルギーである。 よって「束縛エネルギー」と呼ばれている。 それに対する意味で F を「自由エネルギー」と呼ぶ。 式..