万葉仮名と音便の発生について(合格対象分)
A.万葉仮名
日本には、もともと日本語を表記する文字がなかったため、中国語を表記する漢字を借用し、その読みを話し言葉の文字として表現しようとした。例えば、中国語で「阿」や「
安」は【あ】という音なので、【あ】と発音する時にその文字をあてた。名称の由来は、仮に音だけをあてる文字で、主に日本最古の歌集である『万葉集』に多く用いられたとされることから“万葉仮名”と呼ばれるようになったとされるが、実際には記紀万葉に使用された仮名全般のことを指す。ほかに「真仮名」とも呼ばれたり、当時は男性が使用していたこともあり、「男仮名」とも呼ばれていた。
このように、漢字の字音や字訓を表意的に使用して表記した仮名のことを「万葉仮名」という。万葉仮名には、漢字の音読みを借用した「借音」という読みと、漢字の訓読みを利用した「借訓」という読みがある。例えば、『万葉集』の中では、前者は「余能奈可波」を「よ・の・な・か・は(世の中は)」と音で読み、後者は「春過而」を「はる・すぎ・て(春過ぎて)」と訓で読まれている。
また、現代では一音節で一つの発音だが、万葉仮名には一字を二音で表すものと、二字を一音で表すも...