審判の対象論

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    資料紹介

    (1)事件の概要
    本件は、裁判所が、訴因の変更を促し又はこれを命じないことが審理不尽になるか否か、つまり、裁判所には、312条2項により権限を与えられている、訴因変更命令を出す義務があるか否かが争われた事案である。
    この点について最高裁は、裁判所は原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促し又はこれを命ずる義務を否定したが、「証拠上、起訴状に記載された殺人の訴因については無罪とするほかなくても、これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合」には、例外的に、訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があり、殺人の訴因につきただちに無罪の判決をするのは、審理不尽の違法がある、とした。
    (2)事件の進行と当事者の関連図
    <事件の進行>
    昭和38年12月9日午前1時30分頃:A組組員である被告人は同組事務所において、B組の組員であるMと口論になったところ、A組組長Kから猟銃1挺を渡されたので、Mを射殺しようとし、同人に発砲したが、その傍らにいた被告人の兄弟分Nに命中し、死亡させた。
    その後、殺人の訴因で起訴。
    第一審判決:事件のいきさつについて、被告人は組長から度胸試しをされて行きがかり上猟銃に弾丸をこめ、傍らにいた愛人Oが止めようとしたのを振り払ったはずみに弾丸が発射されてものであり、被告人がMを殺害する犯意のもとに装弾し、殺人の犯意のもとに発砲したとは認められず、殺人罪の成立は否定された。
    3)最高裁判決の判旨
    「裁判所は、原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促しまたはこれを命ずべき義務はないのである(昭和三〇年(あ)第三三七六号、同三三年五月二〇日第三小法廷判決、刑集一二巻七号一四一六頁参照)が、本件のように、起訴状に記載された殺人の訴因についてはその犯意に関する証明が充分でないため無罪とするほかなくても、

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    審判の対象論
    最決昭和43年11月26日 刑集22巻12号1352頁
    groundnut
    (1)事件の概要
    本件は、裁判所が、訴因の変更を促し又はこれを命じないことが審理不尽になるか否か、つまり、裁判所には、312条2項により権限を与えられている、訴因変更命令を出す義務があるか否かが争われた事案である。
    この点について最高裁は、裁判所は原則として、自らすすんで検察官に対し、訴因変更手続を促し又はこれを命ずる義務を否定したが、「証拠上、起訴状に記載された殺人の訴因については無罪とするほかなくても、これを重過失致死という相当重大な罪の訴因に変更すれば有罪であることが明らかな場合」には、例外的に、訴因変更を促し又はこれを命ずる義務があり、殺人の訴因につきただちに無罪の判決をするのは、審理不尽の違法がある、とした。
    (2)事件の進行と当事者の関連図
    <事件の進行>
    昭和38年12月9日午前1時30分頃:A組組員である被告人は同組事務所において、B組の組員であるMと口論になったところ、A組組長Kから猟銃1挺を渡されたので、Mを射殺しようとし、同人に発砲したが、その傍らにいた被告人の兄弟分Nに命中...

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