1-12相対性原理の実践

閲覧数1,149
ダウンロード数11
履歴確認

    • ページ数 : 5ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    相対性原理の実践
    物理の革命とはこのことを言うのだ。
    相対性原理
     「相対性原理」とはあらゆる慣性系が同等であり、それぞれの系で同じ形の法則が成り立つことを要求するものである。  これからその要求を満たすような形式で法則を記述していくことを考えてみよう。 まず手始めに力学法則からである。
     ニュートンの運動方程式
    F = ma
    は相対性原理の要求を満たしていない。 なぜなら、ここで出てくる力 F は3次元の量であり、空間座標に沿って測られる量である。 よって力は座標と同じ変換を受ける。 しかしローレンツ変換では空間座標と時間軸とがお互いに交じり合うので、力 F を無理やりローレンツ変換しようとすると「力の時間軸方向の成分」などという訳の分からない量が追加されることになってしまうのである。 これはローレンツ変換によって法則の性質が変わってしまうことを意味しており、相対性原理にはふさわしくない関係式だというわけだ。
     ではどうすればよいかと言えば、始めから「力の時間軸方向の成分」という訳の分からない量を認めてしまって、「力は4次元ベクトルで表される量である」と開き直ってしまえばいいのである。 この量を4つの成分を持つ力という意味で「4元力」と呼ぶ。 3元力である F と区別するために、ここの解説では f ( f0 , f1 , f2 , f3 ) という記号を使って表すことにしよう。 なぜ添え字が右上に書いてあるかは、次のトピックで反変ベクトルや共変ベクトルについて学べば理解できるようになるだろう。 今はあまり気にしなくてもいい。 とにかくこういう量を作っておけば、4元力をローレンツ変換した結果はやっぱり4元力の範囲に収まるのであり、法則そのものが変わってしまうことは無くなる。
     何か屁理屈のようだが、こういう条件を満たす法則こそが宇宙の真実の姿を表す法則として美しい、とアインシュタインは考えたわけだ。
    相対論的な運動方程式
     力を4元力に拡張しただけで喜んでいてはいけない。 これを使って何か関係式を見出さなくては、この量が一体何を意味しているのか知ることが出来ない。 我々は他のものとの関係によって物事の意味を把握するのである。
     例えば、ニュートンの運動方程式が F = dp/dt のように表せることに倣って
    f = dp/dt
    という式を考えてはどうだろうか? もちろん f は4元量なので、運動量 p も4つの成分を持っていなくては式がアンバランスだ。 しかしこれについては4元運動量というものがあることをすでに説明した。 さて、この関係式はローレンツ変換してもちゃんと成り立つのだろうか?
     実はあまり計算する必要も無い。 すでに4元力と4元運動量はローレンツ変換しても4元力と4元運動量であることに変わりないことが分かっている。 問題なのは右辺の微分の分母のところにある時間 t だ。 時間 t はローレンツ変換によって空間座標と混じりあうので、このような量がそのまま式の中に入っていると式の形自体が変わってしまい、相対性原理に反することになってしまう。
     本当はここでその「うまく行かない」計算を具体的にしようかと思ったのだが、運動量を空間座標で微分するという見慣れない計算をしてもいいものかどうか、その計算に意味があるのかどうかで混乱してしまい、結局省くことにした。 道理でこういう危うい部分を載せている教科書を見かけないわけだ。
     この解決法は簡単である。 時間微分の代わりに固有時で微分してやればいい。 固有時は座標系によって変化

    タグ

    資料の原本内容

    相対性原理の実践
    物理の革命とはこのことを言うのだ。
    相対性原理
     「相対性原理」とはあらゆる慣性系が同等であり、それぞれの系で同じ形の法則が成り立つことを要求するものである。  これからその要求を満たすような形式で法則を記述していくことを考えてみよう。 まず手始めに力学法則からである。
     ニュートンの運動方程式
    F = ma
    は相対性原理の要求を満たしていない。 なぜなら、ここで出てくる力 F は3次元の量であり、空間座標に沿って測られる量である。 よって力は座標と同じ変換を受ける。 しかしローレンツ変換では空間座標と時間軸とがお互いに交じり合うので、力 F を無理やりローレンツ変換しようとすると「力の時間軸方向の成分」などという訳の分からない量が追加されることになってしまうのである。 これはローレンツ変換によって法則の性質が変わってしまうことを意味しており、相対性原理にはふさわしくない関係式だというわけだ。
     ではどうすればよいかと言えば、始めから「力の時間軸方向の成分」という訳の分からない量を認めてしまって、「力は4次元ベクトルで表される量である」と開き直ってしまえばいいのである。 この量を4つの成分を持つ力という意味で「4元力」と呼ぶ。 3元力である F と区別するために、ここの解説では f ( f0 , f1 , f2 , f3 ) という記号を使って表すことにしよう。 なぜ添え字が右上に書いてあるかは、次のトピックで反変ベクトルや共変ベクトルについて学べば理解できるようになるだろう。 今はあまり気にしなくてもいい。 とにかくこういう量を作っておけば、4元力をローレンツ変換した結果はやっぱり4元力の範囲に収まるのであり、法則そのものが変わってしまうことは無くなる。
     何か屁理屈のようだが、こういう条件を満たす法則こそが宇宙の真実の姿を表す法則として美しい、とアインシュタインは考えたわけだ。
    相対論的な運動方程式
     力を4元力に拡張しただけで喜んでいてはいけない。 これを使って何か関係式を見出さなくては、この量が一体何を意味しているのか知ることが出来ない。 我々は他のものとの関係によって物事の意味を把握するのである。
     例えば、ニュートンの運動方程式が F = dp/dt のように表せることに倣って
    f = dp/dt
    という式を考えてはどうだろうか? もちろん f は4元量なので、運動量 p も4つの成分を持っていなくては式がアンバランスだ。 しかしこれについては4元運動量というものがあることをすでに説明した。 さて、この関係式はローレンツ変換してもちゃんと成り立つのだろうか?
     実はあまり計算する必要も無い。 すでに4元力と4元運動量はローレンツ変換しても4元力と4元運動量であることに変わりないことが分かっている。 問題なのは右辺の微分の分母のところにある時間 t だ。 時間 t はローレンツ変換によって空間座標と混じりあうので、このような量がそのまま式の中に入っていると式の形自体が変わってしまい、相対性原理に反することになってしまう。
     本当はここでその「うまく行かない」計算を具体的にしようかと思ったのだが、運動量を空間座標で微分するという見慣れない計算をしてもいいものかどうか、その計算に意味があるのかどうかで混乱してしまい、結局省くことにした。 道理でこういう危うい部分を載せている教科書を見かけないわけだ。
     この解決法は簡単である。 時間微分の代わりに固有時で微分してやればいい。 固有時は座標系によって変化しない量なので
    d/dτ = d/dτ'
    となり、座標変換後も同じ形が保証されるのである。 よって相対性理論にふさわしい形の式は
    f = dp/dτ
    だということになる。 あるいは四元運動量の定義を代入して
    f = m c d2x/dτ2
    と書いても良い。
     このように座標変換しても形式が変わらないものを「共変形式」と呼ぶ。 座標と「共に」「変わる」わけではないのに共変と呼ぶのはおかしい気がするが、とにかくそう呼ばれている。 (誰か語源を教えて下さい。) どちらかと言えば「不変形式」と呼んだ方がいいくらいなのだが。  この用語は、次のトピックで出てくる「共変ベクトル」とは関係ないようだ。 全く別の概念として捉えた方が混乱しなくて済むだろう。 いや、何か関係あるのかな?
    四元力の意味
     いくら相対性原理を満たしているからと言っても、この関係が本当に正しいとまで言えるのだろうか。 そんな心配はしなくてもよい。 四元力 f の意味は、この式を使ってこれから考えるのである。 四元運動量や固有時の意味はすでに説明したのでこれを手がかりにすればいい。 これは四元力の定義式なわけだ。 ただし通常の範囲においてはニュートン力学と同じになることを期待してこの式を作ってはある。
     では初めに、この式がニュートン力学的な極限でどのような意味を持つかを確認しておこう。  まず、固有時で微分している部分であるが、固有時というのは、相対速度が光速に比べて極めて遅い場合には我々が普通に認識している時間とほとんど変わりない。  なぜなら固有時の定義は
    dτ2 = dw2 - dx2 - dy2 - dz2
     すなわち、
    dτ2 = ( c dt )2 - dx2 - dy2 - dz2
    であって、微小時間 dt の間に動く距離 dx, dy, dz は c dt に比べて無視できるからである。  ただ固有時には光速度 c が余分にかかっている点だけが違う。
    dτ ≒ c dt
     また四元運動量は ( E/c , γ px , γ py , γ pz ) であるが、相対速度が遅い場合には γ はほぼ1なので、通常の運動量のように扱っていい。  よって相対論的運動方程式はニュートン力学の極限では
    f = (1/c) dp/dt
    という形になる。 これは光速度 c の違いがあるだけでニュートンの運動方程式と同じものである。 四元力というのはニュートン力学的な極限では、我々が通常使っている力と同じものであって、ただ光速度で割られている分小さいだけだ。
     ところで、四元力の第0成分 f0 は何かといえば、四元運動量の第0成分を入れてやれば
    f0 = (1/c2) dE/dt
    となり、エネルギーの変化、すなわち仕事率を c2 で割ったものになっていることが分かる。  相対論的な速度で運動する他の視点から見れば、我々が力だと思っているものの一部が仕事率に見え、我々が仕事率だと思っているものの一部が力として観察されるのだろう。
     では今度は逆に相対論的な極限で四元力がどのように見えるかを考えてみたいが、こちらは日常とはかけ離れた現象なので、まぁ、式を見てそういうものだと理解するしかないだろう。
     速度が光速に近付くにつれてγは無限大に向かうので、運動量は無限大に近付いてゆく。 逆に言えば運動量が無限にならない限り、物体は光速に到達出来ないという事だ。 さらに、分母にある固有時が0に近付くため、四元力はそれ以上に大きくなる。 逆に言えば、物体の運動量を同じような割合で増加させていこうと思ったら、力をどんどん大きくしていかないといけないということだ。
     しかしこれも少し誤解を生む表現ではある。 何もこの式によって新しい現象が発見できたわけではない。 結局はそういう量を四元力であると定義しただけなのだから。
    まとめ
     このような調子ですべての基本的な物理法則を相対性原理を満たすことが明らかな形で書き直してやる。  すべての慣性系が同等であるということは、基本的な物理法則は全て、ローレンツ変換に対して共変な形で表せるはずだということだ。  これが物理学の新しい流れであり、相対性理論が物理学の革命であると言われるのはこのことなのである。 世間が光速度不変の原理に驚いたことを「これはまさに革命的なことだ」と無邪気に叫んでいるのとはちょっと違う。
     次に電磁気学についても同様の書き換え作業をしてやろう。 とは言っても、マクスウェル方程式がローレンツ変換しても形式が変わらないことはすでに分かっている。 と言うより、もともとローレンツ変換はマクスウェル方程式が形式を変えないようにと考え出された変換なのであった。 しかしそのことが一目で明らかであるような形式にしておきたいのだ。
     実は電磁気学のコーナーで電磁ポテンシャルによる表現に書き換えた時にすでにその形式になっているわけだが、それがそうであることを理解するために、まず「反変ベクトル」や「共変ベクトル」の概念を説明しておくのが良いだろう。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/4force.html

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。