東京福祉大学の障害者福祉論のレポートです。
科目名:障害者福祉論 科目コード:2022、2023
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障害者の自立支援の現状と課題について述べよ。
障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとされており、障害者手帳の所持者等に限定していない。従来は、障害を個人の欠損や機能不全として捉える「医学モデル」が主流であったが、近年では、モノ、環境、人的環境など社会のあり方によって生み出されているとする「社会モデル」へと障害の概念が時代とともに変化している。
そんな障害者の自立支援は、日本において重要な社会課題の一つである。障害者が社会の一員として平等に生活し、就労や社会活動に参加できるようにするために、さまざまな法整備や施策が進められてきた。しかし、現実には多くの課題が残されており、さらなる支援の充実が求められている。本稿では、障害者の自立支援の現状と課題について整理し、今後のあるべき姿について述べていく。
まず障害者の自立と社会参加に関して、支援の基本原則を定めた障害者基本法では、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現」することを目的としている。そして障害のある人々が自立し、社会参加を促進するために、医療・福祉・教育・就労支援などの幅広いサービスが関わっている。例えば、身体的な障害を持つ人には医療機関でのリハビリが必要であり、発達障害を持つ子どもには特別支援教育が求められる。また、精神障害を持つ人が安定した生活を送るためには、福祉サービスだけでなく、地域の支援機関や雇用支援の関与が不可欠である。このように、障害者一人ひとりのニーズに応じた支援を提供するためには、複数の専門職が連携し、包括的なサポートを実施することが必要となる。
具体的な支援の現状について行政、労働、教育、医療の4つに着目して以下に述べていく。まず行政において市町村は、これまで市町村と都道府県に分かれていた障害福祉サービスの実施主体が、障害者にとって身近な市町村に一元化されたことを受け、障害支援区分の認定、介護給付費・自立支援医療費などの支援決定などを行っている。そして都道府県は、更生相談所を設置し、国は地方公共団体が障害福祉計画を策定するにあたって基本方針を定めている。次に労働機関においては、就職を希望する障害者に対し、職業相談・職業紹介・職場適応指導を行っている。企業との連携を通じて、障害者が働きやすい環境を整備することも重要であるため、雇用促進助成金制度などを活用しながら、障害者雇用の拡大を図っている。
教育では特別支援学校や特別支援学が、個々のニーズに応じた指導が行い、障害児の学習や生活能力の向上を図っている。また年齢や性別、国籍、障害の有無など、あらゆる違いをこえて、誰もが利用しやすいようにデザインされたユニバーサルデザインを教育現場にも取り入れていくことが期待される。医療機関では、障害者の健康維持やリハビリテーションを支援する役割を担う。高齢の障害者は虐待や生活困窮、孤立など複雑な課題を抱えることが多いため、地域共生社会の実現が求められている。
現状、このような支援が行われているが、以下のような課題も存在する。1つ目が、経済的な自立が難しいことである。厚生労働省の「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は677,461.5人で、前年より5.5%増加しており、21年連続で過去最高を更新している。たしかに雇用率は上昇しているものの、平成28年ではあるが、同じく厚生労働省の「障害者の数」によると、障害者総数は936万人で人口の7%に相当する。このうち65歳未満の障害者の数は450万人である。もちろん65歳未満の人が全員働きたい訳ではなく、65歳以上の人でも働きたい人もいるが、仮に67万人の雇用されている障害者が65歳未満で、450万人全員が働きたいと思っていた場合、単純計算で約380万人が働きたくても働けないということになる。現実ではもっと詳しく計算しなければならないが、少なくとも障害者雇用率が最高を更新していても、まだまだ雇用率は低く、経済的な自立が難しい。そして身体障害者の雇用率が知的障害者や精神障害者と比べて高いということも問題となっている。
2つ目が、地域や家においてユニバーサルデザイン化、バリアフリー化の整備が進んでいないことである。近年は、公共施設や職場などの多くの人が利用する場所は環境の整備が進んでいるものの、地域や家についてはあまり整備が追い付いていない。3つ目が、社会全体の障害者に対する理解不足である。国も障害者に関するさまざまな法律を制定し、差別を解消しようと動いているものの、障害者への偏見や無理解が根強く残っている。
このような課題に対し、国は雇用する企業に向けた雇用拡大施策や、就労支援の拡大、障害特性に応じた雇用施策などの障害者への就労支援を行い、毎年12月3日から9日までを「障害者週間」とし、関係表彰の実施や作品展、ワークショップなどを開催している。また近年は、これまで分野別・対象者別に進められてきた縦割りの個別支援のシステムを見直し、地域の福祉問題を我が事として受けとめ、主体的に解決を図る地域共生社会を実現しようとしている。地域共生社会が実現すれば、すべての人が生活における楽しみや生きがいを見出し、さまざまな困難を抱えても社会から孤立せず、安心してその人らしい生活を送ることができる。
ここまで、障害者の自立支援の現状と課題について述べてきた。障害者の自立支援は、多くの法律や施策によって一定の進展を遂げてきたが、依然として多くの課題が残されている。今後は、雇用、教育、福祉サービスの充実だけでなく、社会全体の意識改革が不可欠である。そのため政府や自治体、企業そして国民が団結して取り組むことが求められる。
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