20071205_対人関係心理学_社会的感情

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    社会的感情
    感情がどのようなものであるかは誰もが知っていますが、その定義を求められると誰もが答えられないといわれます。これは感情の種類についても言えることで、何を基本感情と見なすかと言うことすら研究者間で意見が一致していないと知られます。感情(emotion)とは、対象の性質を知るための心的作用を総称して認知と言うのに対して、その対象とのかかわりにおいて経験される『私』の状態ないしは性質に関する意識を総称して感情と言うことです。一般的にはこう分類しています。
    『基本的感情』=生存に直結している。例えば:喜び、驚き、悲しみ、恐怖、怒り、嫌悪(いわゆる、ビックシックス)。
    文化、社会を超えて経験されること
    乳幼児から見られる
    反射行動を生じさせる。
    『社会的感情』=より複雑な感情。例えば:恥、罪悪感、誇らしさ、嫉妬、妬み、劣等感など
    社会対人関係の中で生じ、自己意識と深く関わる。
    文化によって異なる
    個人差がある
    しばしば表出がコントロールされる
    感情の分類は、情動と重複する面がありながら、情動に比べてはるかに困難である。心理学において明確に感情を定義し、区分した定説はないようです。感情は、意志や思考、過去の感情や情動の経験が複雑にからみあって形成され、自覚・認識されるものだからです。例えば、喜怒哀楽は感情の説明によく出されますが、喜びには強弱濃淡様々あり、これに怒りが加わるとより複雑な感情になります。給料が増加していながら、物価がそれ以上に上昇している場合や原稿が完成しましたがさっぱり評判がよくないなど、『苦い思い』『複雑な感情』はこれに当たるでしょう。否定的な感情が重複し蓄積すると、『コンプレックス』とされることもあります。したがって、個々の感情と相互の関連や重複については多様な説明が可能ですが、ここではさまざまな感情について、肯定的感情と否定的感情、そして人間特有なものとして意志的感情を分類してみました。
    肯定的感情:
    『一般的感情』快、充実、自由、安心、喜び、楽しみ等、生命活動一般について
    『社会的感情』連帯、愛情、保護、優しさ、安全、解放等、自然や社会環境一般について
    『優越的感情』優越、自信、自尊、勝利、所有、支配等、個別的対人関係について
    否定的感情:
    『一般的感情』不快、空虚、悲哀、恐怖、失望等生命活動一般について
    『社会的感情』孤独、憎悪、排除、怒り、嫉妬、閉塞等、自然や社会環境一般について
    『優越的感情』劣等、不信、自虐、軽蔑、拘束、恥辱等、個別的対人関係について意志的感情:
    好奇、探究、期待、意欲、信仰、義務、高揚等、主体的に困難解決について
    この中に私の一番注目する感情は服従、つまり支配であることです。ミルグラム実験(Milgram experiment)により、人間の服従が予想外に高いことを示したという結果が広く知られています。我々には、家庭でのしつけや学校教育そしてそれにともなう報酬(制裁)などによって服従的態度がすでに内在化されていると考えられます。上司と部下の関係は、親と子の関係、教師と生徒(学生)の関係との相似形であるので、個人の服従的態度は企業などの組織においても継続されます。さらに、そこでは、家庭や学校のときよりもはるかに大きな影響力を有する報酬(制裁)が上司の命令の背後にあり、部下の服従的態度を強化します。したがって、上司の命令が反道徳的行為を要求するものでも、部下はそれに従ってしまうのでしょう。また、命令-服従関係の強化は、服従によって生じる部下自身の行為と自身の本心との乖離を広げます。そのため、自身の責任の自覚は弱まり、部下は自身の行為とその結果に対する責任を上司に求め、心理的にも責任の転嫁が容易になります。その場合、もし、上司が部下の行為に対する結果責任を自分が取ると明言するならば、部下の責任の自覚はさらに弱められます。こうして、反道徳的行為は誘発されるのではないかと思います。
    最後に、感情には個人の生存を支える基礎的な身体反応や行動のみならず、私たち人間にとって重要な他者との円滑な交流を助ける働きがあります。私たちが適切な社会生活を送るためには、その上で大きな役割を持つ感情と上手に付き合っていくことが重要となっていると思います。

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