息子について[1]

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    映画研究
       山田洋次監督作「息子」について
     
    八十年代後半くらいの日本社会を描いているが、この映画を観ると当時の状況が現在の世相と重なる部分が多いのに改めて気づかされる。 というより、いまの日本社会に蔓延る問題はあの頃に根源があったということだろうか。 地方と東京の経済格差。東京でも大企業に勤めるサラリーマンとアルバイトや肉体労働者では大きな隔たりが存在する。 台詞を聞かずとも、「政治が悪いんだ」というメッセージが伝わってくる。  そうした社会状況を背景にして、妻を亡くし地方に一人で暮らす父、大卒で大企業に勤める兄、ようやく定職を見つけ肉体労働者として働く弟の三者の関係が描かれている。 父親にとって、一番心配の種だった次男の成長した姿はどんなに嬉しいものなのだろう。 次男の自然体で誰に対しても分け隔てなく愛情たっぷりな姿に心温まる。瀬正敏が出てくるシークエンスが熱っぽく感じられるのは、ただ単に私が永瀬正敏に感情移入してたからだろうな。と言いつつ、物語のウェイトは明らかに永瀬正敏演じる次男坊にかかっている。 長男だって必死で父親のことを思っているが、一家の長としてのプレッシャー...

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