情報政策レポ

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    資料紹介

    堀部政男著『インターネット社会と法』要約
    2006年6月に公表された『平成17年情報通信白書』によるとインターネットの普及率は62.3%であり、2003年に比べ1.7ポイントの増加となった。同白書は普及が相当進み伸び率は鈍化したがe-Japan戦略の始まった2000年末から人口普及率は25.2%増と大幅な増加となっており国民のインターネット使用率は着実に上がった。インターネットのこのような普及はあらゆる分野に影響を与えてきており、将来的にも与え続けるであろう。
    このインターネットの爆発的な普及を支える科学技術の爆発的な発展は様々な分野に衝撃を与えており、その衝撃は法の分野にも及んでいる。科学技術の研究開発は法の枠組みを超えており、法はこれに対応していかねばならない。情報化の進展への法の対応という観点を3つに分けて考えることとする。
    1情報化法的点検論
    情報化社会の進展に対して法の観点から点検し、その発展を促進すべきか抑制すべきか議論すること。ただ情報化はヒトクローンの開発等とは異なり肯定的に捉えられているので、それをプロモートするための法的条件設備をすることが考えられる。しかし、プライバシー問題等、情報化が問題を引き起こすことが明確である場合はそれを抑止するべく議論を展開し、法的制約を課すことも必要である。
    2現法体制変革論
      情報化の進展に対応して現法体制を変革すべきかどうか議論をすること。
    3現法体制内対応論
    解釈的対応論 現行法の解釈で対応すべきか
    一部改正的対応論 現行法の解釈には限界があるのでその一部を改正するという方法で対応すべきか
    新立法的対応論 現行法の解釈改正では対処できないので新たに立法化するという方法で対処すべきか
     IT戦略本部は前述の情報化法的点検論の中で情報政策としてのe-Japanへの取組が盛んに展開している。その戦略の中でもユビキタス化の推進が重要視されており、今後もこの概念は重要性を増すであろう。IT戦略本部とはIT基本法の第3章で規定されているものであり、内閣に設置され本部長は内閣総理大臣である。
     インターネット社会においては誰でも情報の発信者になることが可能であり、それは表現の自由に関わる問題であってその重要性は強調するべきである。しかしその反面、他人の名誉・信用・プライバシーなどを侵害する事例も問題になっている。世界人権宣言第19条で「すべての者は、意見および表現の自由についての権利を有する。」と掲げられた後の情報テクノロジーの発展はめざましく、メディアも新しいものが実用化されるようになった。それらのメディアは相互に競合・融合しつつある。しかし法的枠組みにはまだほとんど変化が見られず新しいメディアについても現法体制内対応論で対処しなければならない。このことはインターネットにも妥当するが新立法的対応論が重要な役割を果たすようになってきている。メディアについて民主主義との関連で見るならば、国民の知る権利の充足の役割を担っているのがメディアである。そのため印刷メディアも放送メディアも法的に制約を受けていないように表面的には考えられがちであるが法律レベルでは厳密に区別されている。しかし新たなメディアが飛躍的に発展する現在においてそのような区別は妥当するのであろうか。
    また、通信においては検閲が禁止され、秘密が保護されなければならないことが民主主義の要請である。そのため通信においてはどのような表現をすることも法的には自由である。しかし迷惑電話・迷惑メールのようにその自由を濫用する例が見られており、さらにはインター

    資料の原本内容

    堀部政男著『インターネット社会と法』要約
    2006年6月に公表された『平成17年情報通信白書』によるとインターネットの普及率は62.3%であり、2003年に比べ1.7ポイントの増加となった。同白書は普及が相当進み伸び率は鈍化したがe-Japan戦略の始まった2000年末から人口普及率は25.2%増と大幅な増加となっており国民のインターネット使用率は着実に上がった。インターネットのこのような普及はあらゆる分野に影響を与えてきており、将来的にも与え続けるであろう。
    このインターネットの爆発的な普及を支える科学技術の爆発的な発展は様々な分野に衝撃を与えており、その衝撃は法の分野にも及んでいる。科学技術の研究開発は法の枠組みを超えており、法はこれに対応していかねばならない。情報化の進展への法の対応という観点を3つに分けて考えることとする。
    1情報化法的点検論
    情報化社会の進展に対して法の観点から点検し、その発展を促進すべきか抑制すべきか議論すること。ただ情報化はヒトクローンの開発等とは異なり肯定的に捉えられているので、それをプロモートするための法的条件設備をすることが考えられる。しかし、プライバシー問題等、情報化が問題を引き起こすことが明確である場合はそれを抑止するべく議論を展開し、法的制約を課すことも必要である。
    2現法体制変革論
      情報化の進展に対応して現法体制を変革すべきかどうか議論をすること。
    3現法体制内対応論
    解釈的対応論 現行法の解釈で対応すべきか
    一部改正的対応論 現行法の解釈には限界があるのでその一部を改正するという方法で対応すべきか
    新立法的対応論 現行法の解釈改正では対処できないので新たに立法化するという方法で対処すべきか
     IT戦略本部は前述の情報化法的点検論の中で情報政策としてのe-Japanへの取組が盛んに展開している。その戦略の中でもユビキタス化の推進が重要視されており、今後もこの概念は重要性を増すであろう。IT戦略本部とはIT基本法の第3章で規定されているものであり、内閣に設置され本部長は内閣総理大臣である。
     インターネット社会においては誰でも情報の発信者になることが可能であり、それは表現の自由に関わる問題であってその重要性は強調するべきである。しかしその反面、他人の名誉・信用・プライバシーなどを侵害する事例も問題になっている。世界人権宣言第19条で「すべての者は、意見および表現の自由についての権利を有する。」と掲げられた後の情報テクノロジーの発展はめざましく、メディアも新しいものが実用化されるようになった。それらのメディアは相互に競合・融合しつつある。しかし法的枠組みにはまだほとんど変化が見られず新しいメディアについても現法体制内対応論で対処しなければならない。このことはインターネットにも妥当するが新立法的対応論が重要な役割を果たすようになってきている。メディアについて民主主義との関連で見るならば、国民の知る権利の充足の役割を担っているのがメディアである。そのため印刷メディアも放送メディアも法的に制約を受けていないように表面的には考えられがちであるが法律レベルでは厳密に区別されている。しかし新たなメディアが飛躍的に発展する現在においてそのような区別は妥当するのであろうか。
    また、通信においては検閲が禁止され、秘密が保護されなければならないことが民主主義の要請である。そのため通信においてはどのような表現をすることも法的には自由である。しかし迷惑電話・迷惑メールのようにその自由を濫用する例が見られており、さらにはインターネットのHPのように公然性を有する通信が現在議論されており、伝統的な法的枠組みでは対応することが難しくなっている。
    インターネットについては国内外で議論が繰り返されているが、郵政省電気局の報告書「インターネット上の情報流通について」(1996年)で情報テクノロジーと人権について明らかにされている。この中でインターネットは高度情報通信社会における個人の基本的人権というべき情報発信権や情報アクセス権を実現する核となるメディアとして位置づけられている。この報告書では情報流通における批判・問題点も掲げられている。
    出版・放送等と異なり発信者にプロの職業倫理が働かない場合がある。
    匿名性があるため無責任な情報発信が心理的に容易にできる場合がある。
    違法な内容のある情報がサーバーから削除されても別のサーバーに簡単にコピーできるので情報が流通し続ける可能性がある。
    ある国で違法な情報の流通を禁止しても別の国で違法でなければその情報が世界中で流通する。
    このような問題を抱えているので従来のメディアに対するものとは違った形の法的対応が求められており、これまでにも現法体制内対応論の枠組みの中で様々な対応がなされてきた。現法体制内対応論の中でも解釈的対応論を踏まえながら一部改正的対応の可能性を検討したのが郵政省通信政策局「情報通信の不適正利用と苦情対応のあり方に関する研究会」の報告書(1999年)である。報告書ではネットワーク上での自由な情報の流通は確保しつつも他人の人権を侵害するような電気通信サービスの不適正な利用についてどのような対応が可能かを検討している。この問題についてはその後も議論が展開され、プロバイダーの有害情報に対する責任・立場を明らかにした。このように郵政省通信政策局が提唱した立法化はプロバイダー責任制限法として2001年に実現された。
    政府は21世紀に向けた国家戦略プロジェクトとして「電子政府の実現」を掲げている。電子政府とは全ての国民がインターネットを利用して24時間365日各種の行政手続きを行うことが可能となる社会である。関係法令の整備をはじめ電子政府を実現するためのインフラ整備はほぼ実現し、すでに一部の分野では正式に電子申請が実現しつつある。しかし実務の現場では様々なトラブルが発生しており必ずしも当初の期待通りに運営されているとはいえない。電子政府を真に意義のある制度にするには一般国民の視点に立った制度設計と運用が不可欠である。
    最近では情報セキュリティという言葉が広く用いられるようになっている。情報セキュリティは不正アクセスや個人情報の漏洩といった様々な脅威に対応しつつ、ネットワークの利便性を享受するために非常に重要な意味を持つ。情報セキュリティの考え方は国によってさまざまであり、かつ、時代とともに変化するものである。セキュリティガイドラインの改訂にあたってアメリカは同時多発テロの影響をうけ安全を特に重視した。他方、ヨーロッパはプライバシー保護などの人権尊重を強調している。以上を踏まえ、現行のセキュリティガイドラインから導かれるセキュリティとは情報システムのみならずネットワークを行きかう情報の安全を守ることであり、その際には情報の自由な流通と保護に配慮すべきであるといえる。そのために全ての参加者がセキュリティ文化を取り入れ普及させることが重要視される。わが国でも情報セキュリティの重要性が認識されており、政府レベル・地方公共団体レベルでさまざまな取組がなされている。
    現在も情報セキュリティに関連する法律は数多く存在している。関連諸法律は可用性・秘密性・完全性から分類される。しかし基本法および一般法の観点から見るといまだ「情報セキュリティ法」は存在していない。今後「情報セキュリティ法」の可能性を考える場合、情報化法的点検論・現行体制変革論・現行体制内変革論からの検討をさらに推し進め、インターネット社会のさらなる発展に対する「情報セキュリティ法」のあり方を議論していくべきである
    電子商取引はインターネットをはじめとするコンピューターネットワークを利用した商取引の一種として社会に広く浸透している。しかし現行の法制では電子商取引の特質やそれに伴う多くの問題にそのまま適用できないという深刻な問題が発生している。そこで、政府は電子商取引の特質に応じた法整備を積極的に推進した。来るユビキタスネット社会に向けた懇談会においても電子商取引に関する問題は議論されている。
    インターネットの飛躍的な発展に伴い、企業におけるインターネットの接続率は年々上昇している。これに伴いインターネットを経由した情報漏えいに係る事件が増加している。外部者による情報の不正取得の場合、その対象となる情報は個人情報である場合が多い。それは換金性に優れ、利用価値が高いためである。情報漏えい事件は企業に対し、顧客対策費の支出や販売機会の逸失による売り上げの減少など直接的、または社会的信用の喪失など間接的影響も与える。しかし刑法では有機物を中心とする体系をとってきたため、無形の情報の保護に対する対応が遅れている。したがって情報そのものを侵害する行為について、刑法の財産犯規定の適応は困難である。民事的救済の場合では、損害賠償請求は特定人に対する加害行為が必要である。このようにインターネットを介した情報の不正取得は現行法制度上の間隙と呼ばれており、情報の社会的・経済的価値が増大している現在、何らかの形で対応していく必要がある。不正競争防止法によって刑事罰が導入されたものの、一部の営業秘密漏洩行為が対象から外れるという問題が残された。この現行法上の間隙について、その対象となる情報の定義と構成要件を明確化した上で個人情報窃盗罪を新設するべきであろう。
    インターネットの普及に伴い問題コンテンツが急増した。サイバースペースは独立国家であり外からのいかなる規制からも自由であるべきだとするセルフガバナンス論が当初は強力に主張されていたが、1996年に入ってからは刑事訴追や...

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