味の素の技術戦略
まずは味の素株式会社の企業概要、特色について触れようと思う。味の素株式会社は日本の食品企業であり、食品会社として広く認知されている。日本の食卓でよく見られる「味の素」や「ほんだし」といった調味料などの食品事業、化粧品ブランド「Jino」を製造販売も行っていることからわかるように、アミノ酸生産技術を活用したファインケミカル事業、医療事業もおこなっている。味の素はこれらの事業を経営の柱として、『あしたの「おいしさ」、あしたの「健康」へ』を掲げ、地球上の人々に貢献する世界企業をめざしている。つまり、味の素は「食品・アミノ酸系の、日本から出発した世界企業」をめざし、21世紀にふさわしい企業活動を展開していくために、コア事業に経営資源を集中し、世界市場で揺るぎない基盤を確立しようとしている。
コア技術戦略とは、特定の技術分野に集中することによって、競争優位を確かなものとし、その技術をベースとした新製品を次々と開発・導入する戦略である。では、味の素におけるコア技術戦略について触れていく。
味の素の事業と研究・開発の出発点は、グルタミン酸をはじめとするアミノ酸を食品として提供することを起点として成長してきた。アミノ酸の一つであるグルタミン酸を主成分とするうま味調味料「味の素」から出発し、調味料、加工食品などいろいろな食品分野へ積極的に多角化する一方、長年培ったアミノ酸の製造技術と用途研究を基盤に、その成長の過程を通して育ててきた、発酵技術、合成技術、評価技術をコア技術と捉え、特に、アミノ酸、健康、環境の3つの領域において事業を多角化してきている。また、味の素はグローバルに研究・開発を進めている。海外では、ロシアに世界トップレベルのアミノ酸発酵微生物の研究をおこなう研究所を設立し、食品面では、日本・中国・アメリカの三極体制で研究・開発を推進し、国内外一体となったグローバル体制でビジネスを展開している。味の素の知的財産報告書によると、2003年度のセグメント別研究開発投資は、アミノ酸あるいは医療事業への緩急開発投資が全研究開発費の半分以上になっている。セグメントとは企業グループの財務状況を事業別・地域別などによって区分して算出・開示する情報のことをいう。アミノ酸の用途は幅広く、輸液や経腸栄養剤などの臨床栄養分野をはじめ、医薬品原料、サプリメントやフレーバーなどの食品、化粧品原料、医薬中間体原料など広い範囲に及んでいる。アミノ酸事業の今後の事業展開において、医薬・バイオ業界は大きく変貌し、アミノ酸の機能をさらに生かした展開となる可能性が広がる。また、食品用途においても、日本を中心に健康と栄養を切り口にした製品の開発が活発化しており、今後世界的な需要の拡大が期待される。そのなかでも、健康ブームと言われる現在、人々の関心が高く、大きな成長が期待される健康科学(ヘルスサイエンス)分野において、アミノ酸を核とした素材の持つ生理機能を活かした健康・機能性食品の領域が注目されている。
アミノ酸の生理機能を活かしたアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」シリーズは、スポーツ&フィットネスのブランドとして、あらゆるスポーツをする人に広く愛用されている。プロスポーツにおいてアミノ酸の必要性は常識であったが、アミノ酸には筋力の向上、持久力の向上、疲労回復といったこれらの優れた働きが注目され、昨今のアミノ酸への関心の高まりから、日常でも使用されるようになり、飛躍的に売り上げを伸ばしている。また、低カロリー甘味料のニーズが高まる状況の中で、アスパルテームという砂糖の約
味の素の技術戦略
まずは味の素株式会社の企業概要、特色について触れようと思う。味の素株式会社は日本の食品企業であり、食品会社として広く認知されている。日本の食卓でよく見られる「味の素」や「ほんだし」といった調味料などの食品事業、化粧品ブランド「Jino」を製造販売も行っていることからわかるように、アミノ酸生産技術を活用したファインケミカル事業、医療事業もおこなっている。味の素はこれらの事業を経営の柱として、『あしたの「おいしさ」、あしたの「健康」へ』を掲げ、地球上の人々に貢献する世界企業をめざしている。つまり、味の素は「食品・アミノ酸系の、日本から出発した世界企業」をめざし、21世紀にふさわしい企業活動を展開していくために、コア事業に経営資源を集中し、世界市場で揺るぎない基盤を確立しようとしている。
コア技術戦略とは、特定の技術分野に集中することによって、競争優位を確かなものとし、その技術をベースとした新製品を次々と開発・導入する戦略である。では、味の素におけるコア技術戦略について触れていく。
味の素の事業と研究・開発の出発点は、グルタミン酸をはじめとするアミノ酸を食品として提供...