2-7アインシュタインの解決法

閲覧数1,002
ダウンロード数10
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 全体公開

    タグ

    資料の原本内容

    アインシュタインの解決法
    2種類の質量が区別できないなら、同じものだと考えよう。
    偶然は必然だ
     前回は慣性質量と重力質量が物理的に全く違う概念であるにも関わらず、両者に違いが見出せないことの不思議さを説明した。 実はこのことがアインシュタインが一般相対性理論を導くきっかけになったのである。
     二つの全く違う概念として定義されたものが偶然にも全く同じ値を持つとすれば、それは偶然ではなく必然であろう、とアインシュタインは考えた。 つまりそうなるような何らかの仕組みが隠されているに違いないというわけだ。
    アインシュタインの解決法
     上向きに加速するエレベータに秤を載せて物体の重さを量ると秤の目盛りは普段より大きな値を示す。 しかしこの方法では重力質量と慣性質量の違いは全く見つけられないのであった。  このことは次のことを意味している。 密閉されたエレベータに乗っている人にとっては、エレベータが加速を始めたのか、なぜか突然に地球の重力が増えたのかは、物理的な観測では全く区別できない! まあ、普通は重力が突然増すなどということはないから常識で判断しているわけだが。
     もちろん、エレベータの中から外を見れるようになっていた場合には自分が加速していることを知ることができるかも知れない。 しかしエレベータの内部から得られる証拠だけでは何も言えないのである。
     いや、今のうちに本当のことを言っておこう。 実はエレベータの内部で「本当の重力」と加速による「見かけの重力」を区別する方法がひとつだけある。 地球の重力は地球の中心に向かっているので、少し離れて観測した結果を比較するとその力の向きは平行していないことが分かる。 つまり、真の重力の場合には空間の「曲がり」が存在するわけである。 これが真の重力と、加速による見かけの重力の唯一の違いである。
     だから先ほどの表現を正しく言い直そう。  一点のみの観測ではエレベータの内部で「本当の重力」と加速による「見かけの重力」は区別できない。  そこでアインシュタインは次のように考えた。 2種類の力の区別が出来ないとすれば、これらの力の原因は実は同じものであって物理的には同じ形式で書いてやってもいいのではないだろうか。  前にエレベータの外と中とで座標変換をしたように、重力のある場所とない場所の違いは同じように座標変換で表せるのではないだろうか。
     ただし「真の重力」のように位置が変わると重力の方向が変わる場合もあるので、この座標変換はある一点と別の一点との間の変換である必要がある。 これを「局所的座標変換」と呼ぶ。 各点によって変換の仕方が少しずつ違う、という意味である。  一方、ローレンツ変換などはある慣性系から別の慣性系への座標変換であったので、同じ慣性系に属する全ての点が一斉に同じ変換を受けるのであった。 これを「大域的座標変換」と呼ぶ。 別にこの辺りの用語はどうでもいいのだが、そのような概念の違いがあることを伝えたかっただけである。
    一般相対性原理
     ここまで実に単純なアイデアである。 しかし、どうやってそれを実現するのだろうか? ここからが面白い。
     アインシュタインは、「エレベータの場合の座標変換がこうなるから・・・その形式を理論に取り込むためには・・・」なんてこまごましたことを考えて辻褄を合わせることをしなかった。 まさに、ズバッと一刀両断するような方法を取ったのだ。
     すでに慣性系から慣性系への座標変換は導かれている。 ローレンツ変換だ。 もしこの変換が少しでも変更を受ければ、これは慣性系以外の系への変換になる。 すなわち、加速度系への変換になる。  ではこのローレンツ変換をずらす要因、それはすなわち重力なのだが、その重力の原因は何だろうと考えたとき、ニュートン力学ではそれは質量であった。 ところが質量はエネルギーと等価であることがすでに導かれているので、アインシュタインは質量の代わりにエネルギーを使おうとした。
     ここでふと考える。 特殊相対論では「相対性原理」というものを考えた。 全ての慣性系は同等であると言う主張であり、その主張を貫くためにローレンツ変換しても式の形が変わらないような形式で物理法則を記述することを提案したのだった。 それこそ特殊相対論の本質だったのだ。  では、ここでその考えを拡張してはどうだろうか? 「全ての慣性系」だけに限らず、重力場中でも加速度系でも同じような形式で物理法則を記述することができる、とするのである。 これを「一般相対性原理」と名付けよう。
     そこで、特殊相対論でも登場した座標変換しても形式の変わらない「エネルギー運動量テンソル」をエネルギーの代わりに使うことにしたのである。 つまり、ローレンツ変換をずらす原因は「エネルギー運動量テンソル」であると!
     あとは、こうして作った式の結果が、通常の範囲でニュートン力学の結果と一致するように係数をちょいちょいと合わせたというだけである。 まさに理論物理学の勝利! 後ろめたいところは何もない!
     実験の結果、これがニュートン力学よりも広範囲で正確だというのだから誰も反論の出来ようがない。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/einsolution.html

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。