中央大学法学部通信教育課程 民法5(親族・相続) 2016年度第2課題 合格レポートです。A判定でした。【課題】「扶養義務二分論」について論じなさい。
1.民法上の扶養義務と扶養義務二分論
扶養義務とは、ある人の生活を維持するためこれに経済的給付を行う義務であり、民法は877条にて親族における扶養義務者の範囲を規定している。同条によると、直系血族及び兄弟姉妹は扶養義務を負い(1項)、三親等内の親族間でも特別の事情があれば家庭裁判所が扶養義務を負わせることができる(2項)とされる。扶養の順位(878条)、程度・方法(879条)について具体的な規定はなく、最終的には家庭裁判所の裁量に委ねられることになる。
このような民法の規定とは別個に、戦前の旧法時代から提唱され、判例・実務において通説となっているのが扶養義務二分論である。家族法の泰斗である中川善之助博士によって提唱された同理論は、扶養義務の内容を生活保持義務と生活扶助義務に二分するものであった。前者は「最後に残された一片の肉まで分け与えるべき義務」であるのに対して、後者は「己れの腹を満たして後に余れるものを分かつべき義務」であるとされる。これら明文規定から離れた2つの扶養義務が現行法下でどのような役割を担っているのか、以下、検討する。
2.生活保持義務と生活扶助義務
生活保持義務..