戸別訪問 完成(手直し必要)

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    資料紹介

    資料の原本内容

    第4章 戸別訪問禁止規定の違憲性
    昼休みに女子高生のマヤちゃんは留学生の友人とおしゃべりしていました。
    マイケル:まやちゃん!最近日本で選挙があったらしいね!
    まや:そうなの!マイケルよく知ってるね。
    ベッツ:日本の選挙ってたしかいろいろ制約があったよね。
    まや:そうなのかな?たしかに18歳の選挙権は最近認められたけど。
    マイケル:でも、日本って僕の出身のアメリカと違って個別に訪問できないよね?
    まや:そうだっけ?
    ベッツ:まや!自分の国をちゃんと勉強しないと!

        私の出身のイギリスも一軒一軒訪問してるよ!私もボランティアでしてたしね!
    まや:そうなんだ!日本ってどんな制度なんだろう。調べてみるね!
    海外の戸別訪問

    戸別訪問は日本において禁止されている。これは後ほど詳しく述べていく。では、海外において戸別訪問はどのような立ち位置を取っているのだろうか。以下ではアメリカとロンドンの選挙事情について述べていく。

    アメリカの例

    アメリカでは、留守宅の郵便受けにチラシを入れることは違法であるので、玄関の隙間に挟み込むという方法で選挙活動をするのだ。また、日本における選挙と大きく異なる手法をとるのが寄付集めである。アメリカでは、企業・団体献金は禁止であるので、立候補する人の支持者の自宅で開催されるパーティーにおいて「○○ドルお願いします。」と寄付を頼むのが主流である。よって、日本と異なり、投票依頼を直接一対一で行うことができるのである。

    イギリス・ロンドンの例

    次にイギリスにおける戸別訪問の立場を紹介する。イギリスにおいて戸別訪問は選挙運動の基本となっている。つまり、日本とは大きく異なり戸別訪問が選挙の手法の大きなツールとなっているのである。また、電話やブログ、ツイッターなどインターネット上での選挙運動は自由に行うことが出来るのである。日本で選挙運動の手法として大きく利用されている、選挙カーでの遊説などを見かけることはほとんどない。

    イギリスの議会は単純小選挙区制であり、一つの小選挙区が日本に比べると非常に小さい。イギリスの区あたりの有権者数が平均7万4千人で、最も多い南部のワイト島でさえ約11万人であるのに対して、日本は最も少ない高知三区ですら21万11750人いる。つまりイギリスでは、有権者がひとつの選挙区あたりで非常に少ないため、候補者は地域に密着せざるを得ないということになる。さらに、イギリスの政党は各選挙区での地縁と関係なく候補者を選ぶことがあるから、有権者との直接の会話が重要になってくるのである。以上のことから、イギリスでは、戸別訪問が選挙活動の基盤となりイギリスの選挙制度を支える大きな柱となっているのである。
    まや:海外の選挙ってこんなふうにするんだ。

       でもなんで日本は戸別訪問を禁止してるんだろう。

       先生!なんで日本では戸別訪問を禁止しているんですか?
    先生:難しい問題だね!

       現実には戸別訪問というのはすばらしい選挙活動のひとつなんだよ?

       でも日本では賄賂など犯罪の温床になると考えられているんだよ。
    ◎日本における戸別訪問とは?
    ケース1

    Aさんは友人BさんにC候補の投票依頼をするためにBさん宅に赴いて、C候補の投票依頼をした。その際にBさんは「これって個別訪問じゃない?」と言われた。Aさんの右行為は戸別訪問にあたるのだろうか。このAさんの行為は戸別訪問禁止規定にあたるのだろうか。
    ケース2

    Aさんが友人Bさんに電話をもちいてC候補の投票依頼をした場合はどうだろうか。
    ケース3

    Aさんが外出中に友人Bに出会い、Bさんが偶然選挙の話をしてきたので、Aさんが支持しているC候補の投票依頼をした場合はどうだろうか。
    戸別訪問禁止規定とは
    公職選挙法138条1項

    何人も、選挙に関し、

    得票を得もしくは得しめ

    または得しめない目的をもつて

    戸別訪問をすることはできない

    公職選挙法138条1項

    何人も、選挙に関し、

    得票を得もしくは得しめ

    または得しめない目的をもつて

    戸別訪問をすることはできない 個別訪問を禁止する規定は公職選挙法138条1項において定められている。すなわち、①選挙に関して②得票を得もしくは得しめまたは得しめない目的で③戸別訪問を行えば公職選挙法138条1項に該当し、1年以下の禁固または30万円以下の罰金となる。(公職選挙法239条1項3号)
    個別訪問禁止規定の趣旨・目的

     そもそも個別訪問禁止規定はなぜ存在するのだろうか。それを理解するためには日本における選挙がいかなる性質のものかを理解する必要がある。

     皆さんは選挙ときいてどのような選挙を思い出すだろうか。最近行われた統一地方選挙や来年夏に予定されており、18歳の選挙権が認められる最初の参議院選挙など選挙にはたくさんの種類があることは序論で述べたとおりである。

    日本における選挙は主に2種類に分類することができる。まず国家における選挙、つまり国会議員を選ぶ選挙である。これは衆議院選挙と参議院選挙があり、これらの選挙は国民がその代表を選ぶ選挙といえる。そして、もう一つの選挙は地方公共団体における選挙。つまり都道府県議会また市町村議会選挙や都道府県知事、市町村長の選挙である。これらの選挙はその地域の住民として住民の代表を選任する選挙であるといえる。

    そして、これらの選挙でもっとも要請されるのが選挙におけるその公正や公平である。この選挙における公正、公平を担保するために制定された法律のひとつが公職選挙法138条、つまり戸別訪問禁止規定である。この戸別訪問禁止規定によって、戸別訪問という密室空間によって起こりうるであろう犯罪、つまり候補者と投票人の間の金銭の授受などの犯罪行為を未然に防ぐことが可能であり、選挙の公平、公正が担保されることになる。また、戸別訪問禁止規定ではその他にも様々な問題を防ぐことが出来る。まず一つ目に選挙費用の増大を抑えることが可能である。選挙活動において戸別訪問することが可能となれば選挙期間中における活動員も増大しなければならないことは明白である。これによって人件費が爆発的に増加するのは明らかである。さらには、戸別訪問を許可することで投票人に対する迷惑行為、(たとえば深夜の訪問や、複数回の訪問など)が増加することが考えられ、これらが過剰な迷惑行為になれば当然、訴訟に至るおそれも考えられる。

     以上のような理由から、日本において戸別訪問は公職選挙法138条によって禁止されている。
    そもそも戸別訪問とは何だろうか?

     ここでいう戸別訪問とはいかなるものを指すのだろうか。戸別訪問とは「連続して二以上の住居を訪問すること」(注)と大審院は判決で述べている。
    マヤ:ねー先生?裁判所はそう言ってるけど、じゃあ選挙の応援のお願いするのに期間をあけたりして連続しなかったら法律違反にならないの?それと、家に行くんじゃなくて、お店とかに訪問するのは法律に違反することはないのかな?

    先生:良い質問だね!それについても裁判所は判断しているから順にみていこう。
    Q、連続せず一人の訪問であれば本規定に当たらないのだろうか。また住居ではなく店舗や事務所の場合なども本規定に当たらないのだろうか。
     大審院の判決後の判例では、訪問の戸数に関しては「必ずしも不特定の多数者を訪問することはその条件ではないとし」(注)「実際には、特定の数人でも、さらにはわずか二人を訪問したにすぎない場合でもなお戸別訪問罪を構成するものとしているものがある」(注)としている。

     また、「連続して」についてその時間的間隔が問題になるが、判例は「戸別訪問が必ずしも戸より戸へ『間断なく』歴訪する場合のみに限らず、二人の選挙人宅を日時を異にして訪問する場合も包含する」としている。
    以上より、日本における戸別訪問禁止規定とは、上記①~③のすべてに該当する場合であるが、その適用範囲は非常に広くどのような形態であったとしてもほとんどの場合が当てはまってしまう。
    なお、先に挙げたケースのうちケース1は戸別訪問禁止規定に該当する恐れがある。なぜならいくら友人であるからと言っても①選挙に関して②特定候補者Cに対する票を得るため、また得ようとするためにB宅に赴いている。③そして、これは戸別訪問にあたる恐れがあり、公職選挙法138条が成立すると考えられる。

    なお、ケース2とケース3は戸別訪問禁止規定に抵触しないと考えられる。なぜならケース2における投票依頼の手段は“電話”によるものであり、個別訪問という手段をとっていないからである。電話という手段を用いることにより選挙の公正・公平を担保するのである。また、ケース3の場合は当初の目的に投票依頼はなくAさんとBさんは偶然外でであっており、事後的に投票依頼をするに至っている。この場合は、選挙における不正、つまり金銭のやり取りや脅迫・恐喝などが起こりにくいと考えることができる。よって戸別訪問禁止規定にあたらないと考えられる。
    マヤ:なるほど!戸別訪問の禁止はかなり厳しい規定なんだね。

    でも、たしか最近授業でやったけど憲法って国民の表現の自由を保証してたんじゃなかったっけ?この選挙応援のための戸別訪問って憲法の表現の自由で保証されないのかな?
    先生:マヤちゃん!いいところに気づいたね。そこがこの戸別訪問禁止規定の問題点なんだよ!
    政治的表現の自由と戸別訪問
    憲法21条1項

    集会、結社及び言論、

    出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

    憲法21条1項

    集会、結社及び言論、

    出版その他一切の表現の自由は、こ...

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