EU統合の目的と意義

閲覧数30,642
ダウンロード数58
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 会員660円 | 非会員792円

    資料紹介

    EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
     EU統合の最も重要な目的は、不戦共同体として平和の維持・確立といった現実的な要請である。第二の目的は、政治統合や共通安全保障体制の確立により、ヨーロッパ全体の国際的発言力を強化することである。第三の目的は、ヨーロッパの相対的地盤沈下を食い止め、活力あるヨーロッパを実現しようとする経済的動機である。  EUを不戦共同体として、ヨーロッパに平和を実現することは人々の願いであり、古来よりヨーロッパでは戦火が耐えなかったことを考えれば容易に理解できる。二度の世界大戦で疲弊・荒廃したヨーロッパは、一刻も早い復興と、再び戦争をするような国・政治体制を作らないことが最重要・緊急の課題となった。ヨーロッパに再び栄光を取り戻すため、ヨーロッパが結束を図ること、とりわけドイツとフランスの30年戦争以来続く不協和音を解消し、人々が平和で安全で自由な生活を送れる共同体を建設することを提唱したのはイギリスのチャーチルであった。
    ヨーロッパ統合へ向かった要因には、内的要因と外的要因の二つが存在する。内的要因は、前述のように、戦争が各国の主権争いの軋轢から生じたものであったことから、戦争を二度と起こさないために、旧来から対立関係にあったドイツとフランスを含む欧州諸国が主権を譲り合うことを目標としたことである。  外的要因としては、旧ソビエト連邦の軍事力を中心とした脅威や、イギリスの「鉄のカーテン」宣言、米国からのマーシャル・プランを推進するにあたっての要請などが挙げられる。そして、ドイツの豊富な資源と工業力の復興に注目した政治的勢力により、石炭と鉄鋼生産の共同管理をするためにECSCが設立された。  その後、経済的統合を目的としたEEC、原子力の平和利用に関してEURATOMが発足し、前述のECSCを含んだ三つが統合して、1967年ECが発足した。これに対して、旧ソビエト連邦を中心とする東ヨーロッパ諸国では、1949年にCOMECON、1955年にワルシャワ条約機構が締結され、独自の流れを見せた。しかし、西ヨーロッパの経済発展に及ぶことはなく、1989年ベルリンの壁が崩れ、東西の分断は終わった。そして、ECは1973年にイギリスを加え、北・南・東ヨーロッパ諸国からの加盟申請を受けて1993年より人・物資・経済の自由化を目標としてEUとして再出発することになったのである。
    共通安全保障もEUの重要な設立目的のひとつである。ドイツ、フランス、イギリスはEU加盟国の中において、経済的にはもちろん政治的に多大な影響力を有する国である。そして、ドイツとフランスはEU統合において主導的役割を担ってきた。政治力の大きさはそのまま軍事力の大きさに結びつく。しかし、前述の通り、この二国は戦争で対立した経緯があり、EU統合という大きな目的が無ければ、協力は困難であったと考えられる。
    現在のEUは様々な安全保障防衛を目的とした政策を行っている。1992年のマーストリヒト条約では、欧州共通外交安全保障政策が規定された。1998年には、英仏首脳は、EUが欧州独自の軍事行動を遂行する能力・機構を保持すべきとの共同宣言(サン・マロ宣言)を出した。また1999年のアムステルダム条約では、欧州共通外交安全保障政策の一部として欧州安全保障防衛政策に関する規定が盛り込まれた。そして2003年にはイラク問題から、EU加盟国間の立場の違いや米欧間の亀裂が見られるように

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。もっとも基本的な目的と具体的な発現状況を要約して述べよ。
     EU統合の最も重要な目的は、不戦共同体として平和の維持・確立といった現実的な要請である。第二の目的は、政治統合や共通安全保障体制の確立により、ヨーロッパ全体の国際的発言力を強化することである。第三の目的は、ヨーロッパの相対的地盤沈下を食い止め、活力あるヨーロッパを実現しようとする経済的動機である。  EUを不戦共同体として、ヨーロッパに平和を実現することは人々の願いであり、古来よりヨーロッパでは戦火が耐えなかったことを考えれば容易に理解できる。二度の世界大戦で疲弊・荒廃したヨーロッパは、一刻も早い復興と、再び戦争をするような国・政治体制を作らないことが最重要・緊急の課題となった。ヨーロッパに再び栄光を取り戻すため、ヨーロッパが結束を図ること、とりわけドイツとフランスの30年戦争以来続く不協和音を解消し、人々が平和で安全で自由な生活を送れる共同体を建設することを提唱したのはイギリスのチャーチルであった。
    ヨーロッパ統合へ向かった要因には、...

    コメント4件

    natsu9000 購入
    参考文献がほしかったです。
    2007/01/02 21:54 (17年3ヶ月前)

    reckazu 購入
    参考にさせていただきます。
    2007/05/06 10:21 (16年11ヶ月前)

    asym 購入
    まとまっていると思います
    2007/05/29 19:21 (16年10ヶ月前)

    yoshihiro000 購入
    good
    2007/08/03 18:34 (16年8ヶ月前)

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。