犯罪から見るニュータウンとは

閲覧数5,308
ダウンロード数4
履歴確認

    • ページ数 : 7ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    (初めに)
    1997年、五月に神戸市須磨区で「酒鬼薔薇聖斗」による連続児童殺傷事件が起きた。小学生ながらに鮮明にその当時のことを覚えている。そして、私が「社会心理」に興味を持ち始めたのも、この事件がきっかけだ。
    その際に持ち上げられたのは「ニュータウン」である。その整備された空間によって、人通りは少なく、監視の目がなかった。共同体の希薄が事件を防げなかったなど、多くのマイナスイメージが報じられた。人の目による「監視」不足を補うかのように、あちこちで、それまでは緑化運動といって推進されてきた植え込みなどが伐採されたことは記憶に新しい。また、この事件の犯人逮捕と同時に多くの「ニュータウン批判」本が出版された。
     そして、たまたま目にしたインターネット配信の新聞記事で再び「ニュータウン」はマイナスイメージで捕らえられていた。2006年、1月の多摩ニュータウンにおける、母親(77)を殺害した男性(54)のことだ。そのほかにも、「ニュータウン」は「(郊外型)犯罪」を引き起こすとして持ち上げられ、最近では「秋田小1男児殺害事件」がその例となっている。
     しかし、本当にニュータウンは犯罪の温床となりうるのであろうか。そのことについて以下、論じていこうと思う。
    1.(ニュータウン批判の概要―文献から)
    A;宮台真司「透明な存在の不透明な殺意」
    (学校化)
    宮台氏が主張していることは「学校化」である。これは、「学校的な機能をバックアップすることが、家や地域社会の機能だという風に自己認識することである」と定義している。簡単に言うと、地域でも家でも、子供の成績が重要視されているということだ。そのことは、彼のいう「同質化の中の異質化競争」に通じている。ニュータウンでは、「収入が全く同じクラスのやつが同じブロックに住んでいる」ため、同質性が生まれる。そのため「同質性の圧力の中での異質化競争」や差別が起きるとしている。その例が、「教育や車」である。
    (ニュータウン的状況)
    B;西澤彰彦・町村敬志「都市の社会学~社会が形をあらわすとき~」
    (ニュータウンは虚構)
      西澤氏は、「酒鬼薔薇少年の父親にとって、一戸建ての家が整然と並ぶ清潔な郊外のニュータウンこそゴールではなかったか。そして、このゴールの夢の世界は過去をうずめて成立した虚構」であり、「同化を演技する所」で、社会学としてはその「同化」の失敗の持つ意味こそを論議する必要があるという否定的な取らえかたをしている。
    (均質性と一元的価値競争)
    西澤氏は、郊外を「階層的フィルタリングに加えて、同一年齢層の、同一家族周期にあたる人々が集まった」ために、「均質性が発生した」とした。また、小沢浩明氏の団地住民をとらえる階層意識調査を例に、階層性を反映して、一戸建ての住人がわずかな差異に反応して、市営団地に住む人を低く貶めるといった現象がおこっているとした。そして、郊外は「均質性であるがゆえに、一元的な価値に沿った競争主義がみたされやすい」と述べている。
    (階層問題)
    さらに、竹中英樹氏のニュータウンにおける住宅階層問題を例に挙げていた。竹中氏が「ある種別や区域の住宅に住む集団と、ほかの種別や区域の住宅に住む集団との間で、社会経済的な格差や差異が顕在化し、差別や紛争の原因」を住宅階層問題としていたが、西澤氏は、ニュータウンにおいては、「所得や資産の格差が直接的にニュータウンにおける社会生活を決別するのではない。そうではなくて、特定の種類の住居への入居が、地域社会において、相互に格差の認識を有する集団を形成していく主要な契機となりうる

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    (初めに)
    1997年、五月に神戸市須磨区で「酒鬼薔薇聖斗」による連続児童殺傷事件が起きた。小学生ながらに鮮明にその当時のことを覚えている。そして、私が「社会心理」に興味を持ち始めたのも、この事件がきっかけだ。
    その際に持ち上げられたのは「ニュータウン」である。その整備された空間によって、人通りは少なく、監視の目がなかった。共同体の希薄が事件を防げなかったなど、多くのマイナスイメージが報じられた。人の目による「監視」不足を補うかのように、あちこちで、それまでは緑化運動といって推進されてきた植え込みなどが伐採されたことは記憶に新しい。また、この事件の犯人逮捕と同時に多くの「ニュータウン批判」本が出版された。
     そして、たまたま目にしたインターネット配信の新聞記事で再び「ニュータウン」はマイナスイメージで捕らえられていた。2006年、1月の多摩ニュータウンにおける、母親(77)を殺害した男性(54)のことだ。そのほかにも、「ニュータウン」は「(郊外型)犯罪」を引き起こすとして持ち上げられ、最近では「秋田小1男児殺害事件」がその例となっている。
     しかし、本当にニュータウンは犯罪の温床となり...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。