「日本的雇用」をめぐる経緯

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    「日本的雇用」をめぐる経緯
    (1)はじめに
     いわゆる「日本的雇用」とは、長期的雇用制度、年功序列賃金制度、福利厚生などから成る、日本独自の雇用慣行を指す。本稿では、(1)「日本的雇用」はなぜ出現したか、(2)「日本的雇用」は19世紀から20世紀初頭にかけてどのていど定着したか、(3)19世紀から20世紀初頭にかけて出現した「日本的雇用」は後の時代に何を残したか、という3点について述べる。
    (1) 「日本的雇用」はなぜ出現したか
    日本的雇用慣行は、第一次世界大戦前後からの大規模近代工業化の過程で始まった。欧米の技術を導入して大規模な工業生産を立ち上げ、急成長していた当時の日本企業は、急成長を支えるだけの基幹労働者を安定的に確保する必要に迫られていた。当時の日本には、労働市場が成立しつつあったものの、こうした企業側の需要を満たすだけの人材を外部労働市場から調達することは困難であった。そこで、各企業は自社で使用する労働者を自ら採用・養成し定着させ、内部化するため、労働者にとって会社に長期にわたって定着することが有利となるような賃金制度・雇用制度を作っていくことになる。
    例えば繊維産業では、不熟練労働者である製糸女工が必要とされていた。こうした不熟練労働力は工場から遠く離れた農村から供給されていたが、その募集にあたっては地域の学校などと結びついた募集請負人が存在し、彼ら募集請負人は特定企業と結びついていた。こうした関係から閉鎖的な労働市場が形成され、大手企業は各地の農村を労働力供給源として内部化することに成功した。それでも第一次大戦前後からの好況期に入ると労働力不足が顕著になり、企業間で女工の引き抜きが横行した。これに対し、企業は寄宿舎や長期雇用者に対する割増賃金、社内預金といった年功的賃金制度の導入・福利厚生の充実などを打ち出し、女工の流出防止にあたることになった。
    また、機械や重工業においては、機械工などの熟練労働者が工場を渡り歩いて熟練形成していくというキャリアパスが一般化し、外部労働市場が形成されることになった。外部労働市場が形成されるということはすなわち、後発企業が先発企業から熟練工を引き抜く事が可能になることを意味する。日露戦争後に民間造船所が次々に設立されると、こうした引き抜きが活発に行われるようになり、企業は熟練工を自社で養成し、かつ定着させることを必要とすることになった。そのため、1910年前後から15歳程度の学校修了者を採用・育成し、年功賃金によって定着させようとする養成工制度が設けられるようになった。
    このように、「日本的雇用」は、日本企業がヒトという資源を内部化するため、人的資源が自社に長期定着することを促すような賃金制度・雇用制度を整備していくなかで出現したのである。
    (2) 「日本的雇用」は19世紀から20世紀初頭にかけてどのていど定着したか
     こうした日本的雇用は、実際にはあまり定着する事が無かった。なぜなら、日本経済が20世紀初頭から戦間記にかけての時期に好況と不況のサイクルを二度に渡って経験することになったからである。
     まず第一に、20世紀初頭の日本経済は好不況の波が激しかった。このため、従業員は好況期により好条件の職場を求めて移動し、不況期には長期定着することを促すような賃金制度・雇用制度の下で職場に定着しようとすることになった。逆に、会社側は、好況期には従業員を定着させるような施策を次々と打ち出したものの、不況期に合理化が必要になると、こうして定着させた従業員を解雇せざるを得なかった。
     そして第二に、第一次大戦

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    「日本的雇用」をめぐる経緯
    (1)はじめに
     いわゆる「日本的雇用」とは、長期的雇用制度、年功序列賃金制度、福利厚生などから成る、日本独自の雇用慣行を指す。本稿では、(1)「日本的雇用」はなぜ出現したか、(2)「日本的雇用」は19世紀から20世紀初頭にかけてどのていど定着したか、(3)19世紀から20世紀初頭にかけて出現した「日本的雇用」は後の時代に何を残したか、という3点について述べる。
    (1) 「日本的雇用」はなぜ出現したか
    日本的雇用慣行は、第一次世界大戦前後からの大規模近代工業化の過程で始まった。欧米の技術を導入して大規模な工業生産を立ち上げ、急成長していた当時の日本企業は、急成長を支えるだけの基幹労働者を安定的に確保する必要に迫られていた。当時の日本には、労働市場が成立しつつあったものの、こうした企業側の需要を満たすだけの人材を外部労働市場から調達することは困難であった。そこで、各企業は自社で使用する労働者を自ら採用・養成し定着させ、内部化するため、労働者にとって会社に長期にわたって定着することが有利となるような賃金制度・雇用制度を作っていくことになる。
    例えば繊維産業では、..

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