高樹のぶ子『浮揚』について

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     『浮揚』は、夫を持つ「わたし」と優柔不断だが思慮のある家庭持ちの大学教師江沢の、お互いに願望を仄めかしながらも一線を超えない付き合いをする、という煮えきれない恋愛を幻想的な「水」のイメージを用いて描かれた話である。
     今回『浮揚』を論ずるにあたっては、戦後短篇小説再発見3(講談社文芸文庫,2001)に収録されている山田詠美『花火』との比較をし、1.構造、2.男女関係の描かれ方(比喩を含む)について論を展開させていく。
     比較する『花火』は、前の会社の上司である高山と愛人関係にある姉と「いい子ちゃん」の妹の「私」とのやりとりに、男女が体も心も結び付いて離れられないのは、花火のように一瞬であり、関係を壊さないためには思いやりが必要ということが述べられている、恋愛に関する一種の教養小説的な構成をもつ話である。
    1.構造
     『浮揚』『花火』はどちらも一人称の形で話しが語られている。それにより、語り手である「わたし」、「私」の心情ははっきりと伝わってくる。しかし、他の人物の心理はあくまで主人公の推測でしかないため、読者も主人公と同様に推測することになる。<わたしがなぜ原稿用紙の梯子段で彼のことを思い出したのか、そこのところの繋がりを想像しているのだろうか。それともサクランボが関心の全てなのだろうか……><わたしの気持ちを見越して、マンションの前でと言ったのだろうか>、<それなのに、何故、こんなことをしている男の人に、その言葉を使うのでしょうか><高山さんのことを考えているのでしょうか><花火のような瞬間を見つけるために恋を重ね行くつもりなのでしょうか。それとも、燃えかすでありながら、暖いものを消さないように大切に持ちつづけるつもりなのでしょうか>といったように相手に対して疑問形で心情を測っている。また、一人称は主人公が抱く疑問が読者全体に問うものとなる。

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    日本文学演習Ⅳ(月曜7・8限)                 2005.8.1.提出
    高樹のぶ子『浮揚』について
    ―山田詠美『花火』との比較から構造と男女関係をみる―
     『浮揚』は、夫を持つ「わたし」と優柔不断だが思慮のある家庭持ちの大学教師江沢の、お互いに願望を仄めかしながらも一線を超えない付き合いをする、という煮えきれない恋愛を幻想的な「水」のイメージを用いて描かれた話である。
     今回『浮揚』を論ずるにあたっては、戦後短篇小説再発見3(講談社文芸文庫,2001)に収録されている山田詠美『花火』との比較をし、1.構造、2.男女関係の描かれ方(比喩を含む)について論を展開させていく。
     比較する『花火』は、前の会社の上司である高山と愛人関係にある姉と「いい子ちゃん」の妹の「私」とのやりとりに、男女が体も心も結び付いて離れられないのは、花火のように一瞬であり、関係を壊さないためには思いやりが必要ということが述べられている、恋愛に関する一種の教養小説的な構成をもつ話である。
     
    1.構造
     『浮揚』『花火』はどちらも一人称の形で話しが語られている。それにより、語り手である「わたし」、「私..

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