公訴権濫用論

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    (1)事件の概要
    水俣病公害を引き起こしたとされるチッソ株式会社(以下、チッソ)に対し、水俣病患者である被告人は、被害の補償を求めるため、他の患者や支援者と共に、交渉のため繰り返しチッソの本社に赴き、チッソ社員としばしば衝突していたところ、チッソ社員4名に加療を要する傷害を負わせたとして、傷害罪で起訴された。本件は、被告人に対する本件起訴が、検察官の訴追裁量権を逸脱し濫用に当たるのではないかが争われた事件である。
    第一審は、被告人の公訴権濫用等の主張を退けた。
    これに対し被告人は控訴。原審は、?公害史上稀にみる水俣病被害を引き起こした加害企業に対する検察権の発動が時機を失した一方、工場廃水の排出中止を求めて抗議行動に出た漁民等に対する刑事訴追と処罰は迅速、峻烈であった、?水俣病をめぐる複雑な事情を背景に登場した被告人ら自主交渉派の置かれた客観的状況の下で、本件起訴は対立する当事者の一方に荷担する結果をもたらした、?本件傷害の被害者らには被害を甘受すべき理由はないが、被告人らのチッソに対する感情には同社の対応に起因して容易に抜き難いものがあり、被告人らの行為に行過ぎがあったとしても刑罰で臨むのは妥当性を欠く、?自主交渉の過程におけるトラブルでは被告人ら患者や支援者にも負傷者が出ているのに、チッソ社員に対して訴追がなされていない不平等がある等の事情を挙げて、「立体的巨視的な観点」からみたとき、「被告人に対する訴追はいかにも偏頗、不平等であり、これを是認することは法的正義に著しく反する」とし、控訴棄却の判決をした。
    最高裁は、検察官の訴追濫用権の逸脱が控訴の定期を無効ならしめる場合はありうるが、それは、「たとえば控訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られる。」とし、本件の場合は、公訴の提起が当然に不当とはいえないとした。

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    公訴権濫用論
    最決昭和55年12月17日 刑集34巻7合672頁
    (チッソ川本事件)
    groundnut
    (1)事件の概要
    水俣病公害を引き起こしたとされるチッソ株式会社(以下、チッソ)に対し、水俣病患者である被告人は、被害の補償を求めるため、他の患者や支援者と共に、交渉のため繰り返しチッソの本社に赴き、チッソ社員としばしば衝突していたところ、チッソ社員4名に加療を要する傷害を負わせたとして、傷害罪で起訴された。本件は、被告人に対する本件起訴が、検察官の訴追裁量権を逸脱し濫用に当たるのではないかが争われた事件である。
    第一審は、被告人の公訴権濫用等の主張を退けた。
    これに対し被告人は控訴。原審は、①公害史上稀にみる水俣病被害を引き起こした加害企業に対する検察権の発動が時機を失した一方、工場廃水の排出中止を求めて抗議行動に出た漁民等に対する刑事訴追と処罰は迅速、峻烈であった、②水俣病をめぐる複雑な事情を背景に登場した被告人ら自主交渉派の置かれた客観的状況の下で、本件起訴は対立する当事者の一方に荷担する結果をもたらした、③本件傷害の被害者らには被害を甘受すべき理由はないが、被告人らのチッソ..

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