「トワイライト」論

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     この物語は、ある小学校の卒業生達が卒業して三十年近く後にタイムカプセルを開けるために集まるところから始まる。小学生の頃は「ドラえもん」に出てくる主人公達のように純粋で、夢があった彼らが、三十年という長い月日の中で変わり、それぞれに問題を抱えていた。会社をリストラされた克也。仕事が軌道にのらなくなった淳子。離婚寸前の徹夫と真理子。いつ死ぬか分からない病の杉本。変わらないのは浩平四十才直前の彼らに問われたのは、泣き担任教師からの「あなたたちはいま、幸せですか?」の一言だった。それは四十才の頃に不倫相手に殺されてしまったその先生からの最後の問いかけだった。生徒達は今、幸せなのだろうか、それぞれどんな気持ちでこの言葉を受け取ったのだろうか。そして新たにタイムカプセルに入れたいものは、未来に残したいものはなんだったのだろうか。
     彼らが育った「たまがわ」は所謂懐かしい田舎というわけではなかった。当時話題になった新しい土地新しい生活、そして新世代と呼ばれた彼ら。その頃住民が描いていた未来、大阪万博。夢や希望に溢れ、それを実現しようとしていた世界だった。でも三十年近くたってしまった今では、その世界ももう古びた過去となっていた。朽ちていく一方となったその「たまがわ」を彼らはどのように受け止めたのだろうか。
     淳子は、生活が下降の一方を辿っていた。「古文のプリンセス」とよばれた塾講師は、段々と生徒の人気も減り授業も低いレベルしか受け持てず、このままでは解雇も有り得ていた。小学校の頃からあまり友達の輪に入ろうとしなかったのは一人でもいられる性格なのか、今でも結婚はしていなかった。多分、人に執着したくない人間だったのだと思う。その彼女が、同窓会で、人気者だった真理子と久々に会い、彼女達の問題に巻き込まれる。生きているか分からないのにタイムカプセルを埋める提案を、その深い意味や重みを多分分かっていないだろう浩平に頼んだ杉村に対して「わたしと性格にてるね、と杉本にこころの仲で声をかけて」といっている。人と深い付き合いをあまり望まない、人と人の間で起こる問題や感情を避けるようにしているように思われる。だから、彼女は不倫相手に殺されてしまった担任の白石先生が嫌いだった。お互い家族がいるのにその家族を捨ててでも一緒にいようとして周りを騒がせることになった先生に対して怒りを覚えた。ずっと努力すれば報われると、正しいことをしていれば幸せになれると信じていた彼女だから。先生の家族への過ちを悲劇のヒロインとして誤魔化していることが許せなかったのだと思う。そして先生に「幸せですか」と聞かれることに対して疑問があった。どうしてそんなこと聞くんだと。「ええ、わたし幸せですよ、と答えてやりたい。意地でも笑って。できるだけ軽い声で。そして逆に言ってやりたい。なんでそんなことを訊くんですか――?」そう彼女は言うが、意地にならないと笑えない。彼女は本当に幸せと言える自信がなかったのだと思う。タイムカプセルを掘る時、「まるで墓をあばいているみたいだ――と思う。(中略)努力すれば必ず報われて、遊んでいれば必ずあとで痛い目に遭う。そう信じていた頃の思い出の品と、もうすぐ二十六年ぶりに再会する。見たくない。(中略)「いつか」が「いま」になってしまうと、懐かしさよりも怖さのほうが強い。」と書いてある。それは今までがむしゃらに努力して仕事をこなしてきて、それなりの地位にまで上り詰めたのに、これからはどんなに努力しても下降の一方であり、努力だけでは乗り越えられないことを知ってしまったから。「いま」の自分が努力し

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     この物語は、ある小学校の卒業生達が卒業して三十年近く後にタイムカプセルを開けるために集まるところから始まる。小学生の頃は「ドラえもん」に出てくる主人公達のように純粋で、夢があった彼らが、三十年という長い月日の中で変わり、それぞれに問題を抱えていた。会社をリストラされた克也。仕事が軌道にのらなくなった淳子。離婚寸前の徹夫と真理子。いつ死ぬか分からない病の杉本。変わらないのは浩平四十才直前の彼らに問われたのは、泣き担任教師からの「あなたたちはいま、幸せですか?」の一言だった。それは四十才の頃に不倫相手に殺されてしまったその先生からの最後の問いかけだった。生徒達は今、幸せなのだろうか、それぞれどんな気持ちでこの言葉を受け取ったのだろうか。そして新たにタイムカプセルに入れたいものは、未来に残したいものはなんだったのだろうか。
     彼らが育った「たまがわ」は所謂懐かしい田舎というわけではなかった。当時話題になった新しい土地新しい生活、そして新世代と呼ばれた彼ら。その頃住民が描いていた未来、大阪万博。夢や希望に溢れ、それを実現しようとしていた世界だった。でも三十年近くたってしまった今では、その世界..

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