ロマン主義とは何か

閲覧数12,589
ダウンロード数50
履歴確認

    • ページ数 : 8ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    「ロマン主義とは何か、またその担い手たちはどういう意味でロマン主義的なのかをそれぞれ述べよ。」
     今から200年ほど前にヨーロッパで起こったロマン主義とはいかなるものであったか。また、ロマン主義を反映したといわれる文学者たちの作風にみられる普遍的あるいは特殊的な特徴とは何であろうか。 本稿では、ロマン主義の定義付けを時代考証を含めながら行い、次に個々の作家たちの作品、特にワーズワスと、その流れを汲む作家達に焦点を当てながら「ロマン主義的芸風とは何か」というテーマを具体的に叙していきたい。
     ロマン主義とは、勃興した市民階級と激動するヨーロッパ社会の精神が表出したものである。語源は中世の「ロマンス(恋愛や冒険物語)」であるが、次第に自然に対する叙情的な感覚をも指すようになった。 このロマン主義は18世紀後半から19世紀初頭のヨーロッパ全体で起こった芸術運動であり、新古典主義や合理主義への反動として起こった。18世紀の欧州を支配していたのは啓蒙主義であり、それは理性を偏重し、伝統を軽んじる傾向があったため、そういった流れに対する抵抗でもあった。18世紀末葉から19世紀劈頭にかけて、イギリスは激動の時代のまっただ中にいた。国外ではアメリカの独立戦争・宣言、フランスでは革命の渦の中にある一方で、英国内では産業革命の進展が社会構造を急速に変えつつあった。同時にライフスタイルの変遷にともない、人々の生活感情も変わっていったのである。ここに我々は、ロマン主義の萌芽をみることになった。 
    上に述べたような世相を背景にして、ロマン主義勃興を世の中に告げた、イギリス文学史におけるエポックメイキングな出来事が起こったのである。それは「抒情歌謡集」であり、ワーズワスとコウルリッジの両者による共同出版であった。彼らはこの小説集の序文において、理性ではなく想像力や情緒を重んじるロマン主義の時代の到来を宣言した。ロマンティシズムの特徴を3つに絞るとすれば、第1に、時間的空間的に離れたところにあるものに対する憧憬の念である。中世趣味や異国情緒などはその典型であろう。次に、自然と超自然に対する驚異と熱愛である。自然は神秘化され、超自然は自然のものと化した。そして第3点目としては革命的精神である。ロマンティシズムの担い手たちは、理想主義的態度をもって解放を叫び、ユートピアを模索したのであった。 以下、ワーズワスを中心にロマン主義の代表的な担い手たちにスポットを当ててみたい。
    ワーズワス:彼は自然詩人と称され、自然との霊的な交わりを通して文学的表現を行った。ワーズワスの詩は、自然と人間との感応から生まれ、自然のなかに人間の道徳的根拠を求めるものであった。前述の「叙情歌謡集」の中でワーズワスの最も重要な詩と言えば「ティンタン寺院の詩」であろう。過去に蓄積してきたものと未来に待ち望むものとを具体的な自然描写と神秘的な無限の感覚とに合わせて表現している。無意識に自然を享受することに喜びを感じた詩人が、全宇宙を調和する知覚を得るまでの過程をたどりながら、最後にはたとえ神秘的な知覚が失われても、自然がそれを思い起こさせてくれるという思想を訴えている。ここでは感覚、感情、思想が混然としておりその中で自我は人類の表象となり、主観的な回想によって人類と宇宙が結びついている。このような宇宙観はロマン主義の特徴だが、特にその中でもワーズワスの詩は印象的であろう。この作品中で彼が示した趣旨、つまり日常生活から題材を選び、詩の言葉を使わずに日常の言葉の使用を主張して試みたこともその後のイギリス詩壇に重要な指

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    「ロマン主義とは何か、またその担い手たちはどういう意味でロマン主義的なのかをそれぞれ述べよ。」
     今から200年ほど前にヨーロッパで起こったロマン主義とはいかなるものであったか。また、ロマン主義を反映したといわれる文学者たちの作風にみられる普遍的あるいは特殊的な特徴とは何であろうか。 本稿では、ロマン主義の定義付けを時代考証を含めながら行い、次に個々の作家たちの作品、特にワーズワスと、その流れを汲む作家達に焦点を当てながら「ロマン主義的芸風とは何か」というテーマを具体的に叙していきたい。
     ロマン主義とは、勃興した市民階級と激動するヨーロッパ社会の精神が表出したものである。語源は中世の「ロマンス(恋愛や冒険物語)」であるが、次第に自然に対する叙情的な感覚をも指すようになった。 このロマン主義は18世紀後半から19世紀初頭のヨーロッパ全体で起こった芸術運動であり、新古典主義や合理主義への反動として起こった。18世紀の欧州を支配していたのは啓蒙主義であり、それは理性を偏重し、伝統を軽んじる傾向があったため、そういった流れに対する抵抗でもあった。18世紀末葉から19世紀劈頭にかけて、イギリス...

    コメント3件

    naoto24 購入
    参考になりました。
    2007/04/04 20:43 (16年12ヶ月前)

    reckazu 購入
    参考になりました。
    2007/06/10 11:03 (16年9ヶ月前)

    fjh0005 購入
    参考になりました
    2007/06/18 18:42 (16年9ヶ月前)

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。