馬六明の身体表現

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    馬六明の身体表現~性二分の虚構を撃つ
     芸術家とは、生み出した芸術によって評価されるものである。芸術家を語るにはその芸術作品を検討する必要があるだろう。今回の課題を遂行するにあたっては、馬六明の「芬・馬六明の3」(1993年)(注1)から、まずは考えたい。講義で取り上げた作品の中で、違和感を抱いた絵だからである。この作品に言及するに当たっては、まずは鑑賞者の認識を提示し、その認識に対する見解を述べたい。講義の際と同様の形式である。
     椅子に腰掛けた一人の人物の写真。写真の中の人物が身に付けている物をあげると、ワンピース、ストール、イヤリング。ワンピースとは、「(ワンピースドレスの略)婦人・子供用の服で、身ごろとスカートとが一続きになったもの。」(注2)である。ストールとは、「毛皮・羽毛・織物・編物などで作る婦人用肩掛。」(注3)である。いずれも、「女性」が身に付けるものである。服飾からはこの人物は女性であると推定される。口元を微妙に開けた表情も、もしこの写真の人物が「男性」であれば口元がだらしなくしまりがないのであって見苦しい、であるからして、このような表情を「男性」がするはずがないという経験則から、「女性」であるという判断に資する。写真から人物について判断するに、この人物は「女性」であると思われるのである。
     しかし写真を凝視するにつれ、次第に「彼女」が「女性」ではないのではないかという懐疑に至る。まず、「彼女」はストールを巻いている。しかし、ストールに顕われでた喉部には凹凸がある。この凹凸は、生物学的二元論における「男性」の特徴である。また、ワンピースから突き出た肩も角張っている。この肩の角張りも、生物学的二元論における「男性」の特徴である。ワンピースに包まれた太目の寸胴の上半身も同様である。これらの特徴から、この人物は「男性」であると考えるに至る。しかし、一方で、喉の凹凸も、ストールの装飾次第では、「隠蔽」する事が可能である事が考えられる。「彼」が着るワンピースも、半袖であれば、肩の凹凸も「隠蔽」する事が可能である。寸胴の上半身も、胸にパットを装着して膨らみを持たせることで「寸胴」という形状を「隠蔽」する事が可能である。
     つまりこの写真は、服飾からは「女性」を連想させ、表情からも「女性」連想させるが、身体からは「男性」を連想させるのである。この「女性」と「男性」の両者が混合している状況こそが、この写真を見る際の違和感なのだろう。この違和感は、まず、自分自身の価値・規範を照射するものではないだろうか。この写真は、鑑賞者に対して、生物学的二元論における「女性」は「女性」の格好をすべきであり、生物学的二元論における「男性」は「男性」の格好をすべきであるという規範があるかどうか問うているのではないだろうか。写真の人物の「彼/彼女」が笑っているのは、鑑賞者の常識を嘲笑っているかの如くである。
     次に、一人の人物に「女性性」「男性性」が存在しているというこの違和感を抱かせる状況は、「性=人間の本質」という考えを解体する作用があるように見える。すなわち、人は当人の意思次第で「女性」でも「男性」でもありえることを表現しており、「女性」や「男性」とは「女性/男性である」のではなく、女性/男性を「演じる」のであるということを表現しているのではないか。
     では、このような表現を提供する馬六明とは何者であろうか?以下多くを引用することになる、牧陽一『アヴァン・チャイナ』によれば、馬は「一九八九年の天安門事件地下へと潜行した前衛的な行為芸術の系譜を引く芸術家」(注

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    馬六明の身体表現~性二分の虚構を撃つ
     芸術家とは、生み出した芸術によって評価されるものである。芸術家を語るにはその芸術作品を検討する必要があるだろう。今回の課題を遂行するにあたっては、馬六明の「芬・馬六明の3」(1993年)(注1)から、まずは考えたい。講義で取り上げた作品の中で、違和感を抱いた絵だからである。この作品に言及するに当たっては、まずは鑑賞者の認識を提示し、その認識に対する見解を述べたい。講義の際と同様の形式である。
     椅子に腰掛けた一人の人物の写真。写真の中の人物が身に付けている物をあげると、ワンピース、ストール、イヤリング。ワンピースとは、「(ワンピースドレスの略)婦人・子供用の服で、身ごろとスカートとが一続きになったもの。」(注2)である。ストールとは、「毛皮・羽毛・織物・編物などで作る婦人用肩掛。」(注3)である。いずれも、「女性」が身に付けるものである。服飾からはこの人物は女性であると推定される。口元を微妙に開けた表情も、もしこの写真の人物が「男性」であれば口元がだらしなくしまりがないのであって見苦しい、であるからして、このような表情を「男性」がするはずがないと..

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