3-2過熱と過冷却

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    過熱と過冷却
    熱力学を身近に感じる話。
    過熱
     水が沸騰して勢いよく蒸気に変化するためには、水の中に小さな蒸気の泡が存在している必要がある。 水分子は水中にぽっかり空いた「空間」へ向かって蒸発するからだ。 もし水中に泡がなければ、水は水面から蒸発を続けるだけであり、非常に静かに事が進むだろう。
     何事にもまずは小さなきっかけが必要だ。 水分子はある温度を超えたからといって勝手に水中のあちこちで気体に変わるわけではない。 水中に初めの小さな泡を作るためにはかなりのエネルギーが必要だからである。 なぜだろうか。
     泡を作るということは、分子がぎっしり詰まったところに突如分子の希薄な部分を作るということだ。 周りからすぐに潰されてしまうに違いない。 しかしその圧力に打ち勝つのが「沸騰」というものではなかったか。 それくらいの障害は当然乗り越えられるはずだ。 その通り、この圧力については大して問題にはならない。 (巷の説明はこの点で不正確なものが多い。)
     水と蒸気の境界が新たにできるということは、その境目にある分子にとっては重大な変化である。 今まで周りから分子間の引力で同じように引っ張られていたのに、片側の分子密度だけが希薄になってしまう。 つまり一方にだけ強く引っ張られるようになってしまうのだ。 分子は蒸気の側へ飛び出しにくくなってしまうことになる。 しかしこれも問題ではない。 この効果は化学ポテンシャルに折り込み済みである。 そもそも水面では常にこの状態だ。
     化学ポテンシャルの計算で考慮されなかったのは、泡が膨らむ時に、このような境界の面積が増えるということである。 新たな境界を作るためには、分子を他の分子から引き剥がさなければならないということだ。 そのために必要なエネルギーを「表面エネルギー」と呼ぶ。 これは泡の表面積に比例する。 この余分に必要になるエネルギーを誰が賄うのだろう。
     沸点ちょうどの場合には、分子にそんな余裕はない。 しかし沸点より温度が高くなっていれば、蒸発に使った以上に余ったエネルギーをそのために回すことが出来る。 つまり、沸点より幾分か温度が高くなって、このエネルギーを賄えるくらいでないと沸騰は始まらないということになるわけだ。
     ところで、球の表面積は半径の2乗に比例するが、体積は3乗に比例することを思い出そう。 泡の半径が大きくなればなるほど、同じ数の分子が蒸発しても表面積の増え方はそれほど大きくはならないようになってゆく。 つまり1分子あたりが余分に負担するエネルギーが小さくて済むのである。 初めから大きな泡があれば、沸点をほんのごくわずかに上回るだけで、泡を大きくするためのエネルギーが簡単に賄えるのである。
     風船を膨らますのと似たようなものだ。 初めは難しい。 少し空気を入れるにもゴムを大きく押し広げないといけない。 しかし一度膨らんでしまえばこっちのものだ。 どんどん楽になる。
     十分に大きな泡が無い場合には水の温度が沸点を超えていても沸騰は始まらない。 沸騰が始まるのに最低限必要な泡の半径を「臨界半径」と呼ぶ。 温度が高くなるほど臨界半径は小さくなってゆくということだ。
     ところで、いつまで経っても十分に大きな泡が出来なかったらどうなるだろう。 水を静かに熱して行って、大きな泡が出来るようなショックが何も与えられなかったらどうなるだろう。 水は表面だけから静かに蒸発を続け、沸点を越えても温度は上がり続ける。 これは「過熱」と呼ばれる非常に危険な状態である。  そして何かきっかけがあると同

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    過熱と過冷却
    熱力学を身近に感じる話。
    過熱
     水が沸騰して勢いよく蒸気に変化するためには、水の中に小さな蒸気の泡が存在している必要がある。 水分子は水中にぽっかり空いた「空間」へ向かって蒸発するからだ。 もし水中に泡がなければ、水は水面から蒸発を続けるだけであり、非常に静かに事が進むだろう。
     何事にもまずは小さなきっかけが必要だ。 水分子はある温度を超えたからといって勝手に水中のあちこちで気体に変わるわけではない。 水中に初めの小さな泡を作るためにはかなりのエネルギーが必要だからである。 なぜだろうか。
     泡を作るということは、分子がぎっしり詰まったところに突如分子の希薄な部分を作るということだ。 周りからすぐに潰されてしまうに違いない。 しかしその圧力に打ち勝つのが「沸騰」というものではなかったか。 それくらいの障害は当然乗り越えられるはずだ。 その通り、この圧力については大して問題にはならない。 (巷の説明はこの点で不正確なものが多い。)
     水と蒸気の境界が新たにできるということは、その境目にある分子にとっては重大な変化である。 今まで周りから分子間の引力で同じように引っ..

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