1-3熱平衡

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    熱平衡
    第0法則について
    熱の正体
     温度の高い物体と温度の低い物体を接触させて長い時間放っておくと、やがて同じ温度になる。 このとき、温度の高い方から低い方へ「熱が移動した」という考え方をする。
     本当は熱などという実体は存在しなくて、ただ一方が持っていた激しい分子運動がもう一方へ伝わっただけのことである。 だから分子の運動エネルギーが移動したと考えても良い。 「熱はエネルギーの一形態だ」と言われるが、分子運動のことを知っていれば、まぁ、当たり前のことだ。
     さらに言わせてもらえば、熱エネルギーは温度の高い方から低い方へ一方的に流れたわけではない。 物体が「自分の方が温度が高いから君にあげるよ」なんて判断しているはずがない。
     本当は何が起こっているのか。 温度の高い物体の中には激しく動く分子もあれば、たまたま遅くなっている分子もある。 温度の低い物体の中にだって、色々な衝突を繰り返すうちに、たまたま非常な勢いを持つものも出てくる。 2つの物体が接触した時、お互いの分子が衝突しあって色々なエネルギーの分け合い方をするのであるが、温度の高い物体の方が勢いのある分子が存在する割合が高いから、統計的に温度の低い物体の方へ運動エネルギーが移動する割合の方が多いことになる。
     それを全体から見ると、高温から低温へ熱がじわじわと移動したように見えるのである。 やがてやり取りの割合が同じくらいになってくると、あたかも流れが止まったように見えるわけだ。 この状態になることを「熱平衡に達した」という。
     しかしこれは分子運動論を知っているから出来る説明であって、統計力学の考え方である。 統計力学が確立する以前の人は別の考えを持っていた。 熱は物質の一つではないかと疑っていたのだ。
    試行錯誤の時代
     錬金術が熱心に研究された時代には、燃素(フロギストン)と呼ばれる物質が存在すると信じられていた。 これが多量に含まれている物質は良く燃えるという考えだ。 確かに、物が燃えるという現象は、燃素が物質中から勢いよく飛び出してくる様子を見ているのだと説明されればそんな気もしてくる。 太陽から燃素を受けて大きく育った木は、燃えて燃素を失うと灰になって土に還る。 なかなか説得力があるが、もちろん間違っている。 金属の燃焼のように、燃えることで質量が増えるような場合があることが見付かったのだ。 フロギストンが抜けたのに質量が増えるなんて!
     それでもしばらくは「フロギストンは負の質量を持っているのではないか」という可能性を信じてフロギストン探しは続いていた。 やがて酸素という存在が確認されて、質量の変化がそれを使って説明されるようになる。 もうフロギストンの出番はない。
     しかし酸素だけでは熱の正体が説明できなかった。 そこで代わりに「熱素」(カロリック)と呼ばれる非常に軽い物質が存在するという説に傾いた。 (calor というのはラテン語で熱を意味する。) 熱い物体には熱素が多く含まれており、熱が伝わるのは、この物質が物体から物体へと移動する現象として説明できると考えた。 あたかも乾いた雑巾が水を吸い込むように! ラボアジェの作った元素表には、この「熱素」が記されている。
     しかしこれもやがて否定される。 大砲の穴をくり抜く作業で大量の摩擦熱が発生するが、通常の化学反応では説明できないほどの熱がいつまででも取り出し続けられることに気が付いたからである。  熱の正体が分子の振動であるという説は以前から出てはいたが、すぐさま受け入れられたわけではなく、18世紀の終わ

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    熱平衡
    第0法則について
    熱の正体
     温度の高い物体と温度の低い物体を接触させて長い時間放っておくと、やがて同じ温度になる。 このとき、温度の高い方から低い方へ「熱が移動した」という考え方をする。
     本当は熱などという実体は存在しなくて、ただ一方が持っていた激しい分子運動がもう一方へ伝わっただけのことである。 だから分子の運動エネルギーが移動したと考えても良い。 「熱はエネルギーの一形態だ」と言われるが、分子運動のことを知っていれば、まぁ、当たり前のことだ。
     さらに言わせてもらえば、熱エネルギーは温度の高い方から低い方へ一方的に流れたわけではない。 物体が「自分の方が温度が高いから君にあげるよ」なんて判断しているはずがない。
     本当は何が起こっているのか。 温度の高い物体の中には激しく動く分子もあれば、たまたま遅くなっている分子もある。 温度の低い物体の中にだって、色々な衝突を繰り返すうちに、たまたま非常な勢いを持つものも出てくる。 2つの物体が接触した時、お互いの分子が衝突しあって色々なエネルギーの分け合い方をするのであるが、温度の高い物体の方が勢いのある分子が存在する割合が..

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