ストレッチ

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    ① ストレッチングとは
    ストレッチングとは、関節可動域(range of motion : ROM)を広げる目的で、筋肉などの組織を伸ばす運動のことをいいます。 関節可動域とは、対象となる関節が動く範囲のことです。
    ②ストレッチングの分類
    A. 動作速度・時間による分類
    ・ダイナミック ストレッチング(dynamic stretching)
    弾みをつけ、1回の動作を短時間に、リズミカルに繰り返す方法です。日本でも「柔軟体操」などと呼ばれ、古くから行われてきたことはご存じですね?
    弾みをつけることから筋を損傷する可能性が高く、筋肉痛の原因になったり、あるいはスポーツ傷害の原因になる場合もあるとされます。
    しかし、実際のスポーツの現場では常に「動的柔軟性(動作の中で発揮できる柔軟性)」が求められますから、実際に動的に筋を伸ばすこの方法が無価値であるとは私には思えません。私自身は、無理のない範囲で、このプログラムをよく採用しています。
    もちろん、健康目的でストレッチングを行うことを考えれば、次のスタティック ストレッチングのほうが安全で価値が高いでしょう。
    ・スタティック ストレッチング(static stretching)
    持続的に長い時間静止したまま伸ばす方法です。
    今、一般的にストレッチングというと、このスタティック ストレッチングを指すまでになっているようですね。
    ただ、スタティックであるからといって、強く伸ばしてしまっては細かい筋肉の傷をたくさんつくってしまったり、その結果、逆にけがをしやすいコンディションになってしまったりします。
    ストレッチングは安全だと過信するのではなく、適度に行うことを心がけましょう。
    B. 運動の方法による分類(中原の分類)
    ・他動的(受動的)ストレッチング
    パートナーなどの補助を借りて、他動的に行うものです。
    ・スロー ストレッチング(slow stretching)
    これは、特定の筋群を「これ以上伸ばせないというポイント(最大伸展位)に達するまで徐々に伸ばしていく方法です。
    ・自動的ストレッチング
    自力で行う方法です。後で解説しますが、ターゲットとする筋と反対側の筋を収縮させると効果が上がります。
    ③ 柔軟性 flexibility, suppleness
    柔軟性は「ある関節(関節群)の運動可能範囲の大きさ」、つまり「関節可動域の大きさ」を示す言葉であるといえます。この関節可動域が大きいほど「柔軟性が高い」ということができるのです。
    柔軟性(suppleness)はスタミナ(stamina)、スピード(speed)、筋力(strength)、スキル(skill)とともに、「スポーツの5S」の一つに数えられています。5Sは各要素の頭文字をとったものです。
    ④ ストレッチングのターゲット
    私たちの柔軟性を制限する因子として「骨の構造」と「軟部組織(筋組織、筋膜、腱、靱帯、関節包など)」があげられます。前者は努力によって変化させることはほとんど不可能な部分ですが、後者は変化させることが可能です。
    つまり、ストレッチングがターゲットとして選べる範囲は、上記の軟部組織に限られるといえるでしょう。
    軟部組織の中でストレッチングに対し最も大きな抵抗になるのは、筋膜であるといわれます。この部分を伸展することができれば、柔軟性が高まると言い換えることができます。
    ただし、軟部組織の一員である靱帯や関節包については、それらが伸びてしまうことにより「関節の不安定性」を招くことになるため、私はターゲットとすべきではないと考えます。これらの組織に負担をかけずに正しい姿勢で行うことを心がけましょう。なお、詳細については、危険性の高い種目を紹介したページを参照してください。
    結論として、ストレッチングが主にターゲットとするのは、筋膜、筋膜に包まれた筋の収縮要素、そして腱ということになるでしょう。
    ⑤ 伸張反射と相反性神経支配について
    A. 伸張反射
    筋が伸ばされると、筋の中にある筋紡錘という感覚装置が働き、筋が傷害を負うことがないよう、反射的にその筋を収縮させます。この性質を伸張反射といいます。
    ストレッチングを行うときは、この伸張反射が起こらないような方法で行うことが望まれます。その面では弾みや反動をつけて行うダイナミック ストレッチングはリスクが大きいといえるでしょう。
    B. 相反性神経支配
    ある筋が緊張(収縮)しているとき、それと反対の働きをする筋(拮抗筋)はリラックスするように神経支配を受けます。これを「相反性神経支配」と呼びます。
    この性質を利用して、例えばハムストリングス ストレッチングの場合、ハムストリングスに拮抗する大腿四頭筋を収縮させると、ハムストリングスがよりリラックス(相反性抑制)することになるのです。
    パートナー ストレッチングの場合、拮抗筋の収縮がパートナーの補助にとってかわる形になり、相反性神経支配がうまく働かないことになるでしょう。この点では一人で行うストレッチングのほうがよいということがいえると思います。
    もちろん、リハビリテーションなどの手段として行う場合など、パートナー ストレッチングが有効となる場合もあります。
    ・筋平衡反射
    上記AとBは、ヒトが直立姿勢を保持したり、運動を行うのに重要な役割を起こす反射です。これらを合わせて筋平衡反射と呼びます。
    ⑥ ストレッチングの目的(効果)
    傷害を予防する
    筋の緊張を緩和し、リラックスさせる → 心身のストレス解消
    関節の可動域を大きくし、柔軟性を高める
    筋のポンプ作用により、血液循環を高める
    ⑦ ストレッチングを行うさいの注意点
    (スタティック)ストレッチングは、どの種目でも基本的に以下の点を守ることが基本です。
    a. 無理をしない
    b. 息を止めない(息を吐きながら)
    c. 弾みをつけない
    d. 痛みを感じる寸前の、心地よい範囲で止める
    運動の前後に行うことが基本ですが、運動前は軽いウォーキングや体操などを行った後のほうがストレッチングの効果は高いと考えられます。
    ※上にもあげたように、ストレッチングを過剰に行うことは、より障害を起こしやすいコンディションをつくることになります。
    ※快適に感じる適度な範囲で行うように心がけてください。
    ※人はいったん成長してしまうと神経の長さをより長くすることはできません。痛いのを我慢して行うストレッチングは、大切な神経を無理やり伸ばして痛める可能性もあります。

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