民法答案 請負契約の瑕疵担保責任

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    資料の原本内容

    民法答案
    問題
    建築業者であるAはBとの間で、請負代金3000万円で甲建物(住宅ではないものとする。)を建築する契約を締結し、甲建物を完成して、請負代金全額の支払いと引き換えにBに引き渡した。Bは、甲建物を3ヶ月くらい使用した後に、都合によって甲建物をCに代金2500万円で売却する契約を締結し、代金全額の支払いと引き換えにCに引き渡した。それから3ヶ月ほどして、Cは甲建物が傾いていることに気が付いた。
     甲建物の傾きは、建築業者Aが施行の際にミスをしたことが原因であった。その傾きが、修補の費用として300万円を要するほどの場合と、2500万円を要するほどの場合があるものとして、以下の問題に答えよ。
    問1: CはBに対して、甲建物の修補または甲建物の修補費用相当額の損害賠償を請求することができるか。なお、BC間における売買契約の締結当時、Cは甲建物に傾きがあることを知らず、知らないことにつき過失がなかったものとする。
    問2: Cから苦情を言われたBは、Cとの間で甲建物の売買契約を合意解除し、受け取った代金全額をCに返還した。この場合、BはAに対し、どのような請求をすることができるか。
    解答
    問1
     BとCは特定物である甲建物についての売買契約(民555条)を締結している。そこで、Bに対してCが瑕疵担保責任(民570条、566条1項)に基づく損害賠償請求が認められるか。
     瑕疵担保責任とは、売買の目的物に「隠れた瑕疵」がある場合における売主の担保責任である。その意味について、「瑕疵」とは、目的が通常有するはずの性質を具備していないことを指し、「隠れた」というのは、買主が瑕疵を知らなかった、もしくは、通常の取引上の注意をもってしても知りえなかったこと、すなわち、買主の善意・無過失を意味する。
     本問を見ると、甲建物は傾いており通常有するはずの性質を備えていない。また、設問より、買主Cは瑕疵につき善意・無過失である。
     よって、CはBに対して瑕疵担保責任を追及できる。
     次に、損害賠償額の範囲が問題となる。
     瑕疵担保責任による損害賠償は信頼利益の範囲で認められる。修理費用は瑕疵が無ければ支払うことは無かったというものであり、信頼利益に含まれる。
     以上より、Cは、Bに対し、300万円でも2500万円でも瑕疵担保責任に基づく損害賠償が認められる。
     さらに、CはBに対して甲建物の修補を求めることができるか。
     甲建物は特定物であり、BはCに甲建物を現状のまま引き渡せば足る(民483条)から、Bは履行を完了したといえる。
     よって、CはBに対して、甲建物の修補を求めることができない。
    問2
    1 AB間では請負契約(民632条)がなされているので、請負人の担保責任が問題となる。
    2 まず、BはAに対して、民法634条1項に基づく瑕疵修補請求は可能か。
      甲建物には傾きがあり、仕事の目的物に瑕疵があるといえる。甲建物の傾きによってその使用が困難になっていることから、瑕疵は「重大でない」(民632条1項但書)とは言えない。
      よって、BのAに対する民法634条1項に基づく瑕疵修補請求は認められる。
    3 次に、BはAに対し、損害賠償(民634条2項)を請求できるか。民法635条但書との関係が問題となる。
      民法635条但書は「建物その他の土地の工作物」について瑕疵があった場合に解除できない旨が規定されている。
      建替費用相当を損害として請求した場合、解除と同じ効果があると言えるので認められないようにも思われる。しかし、民法635条但書の趣旨は、解除を認めると建物に利用価値があったとしても除去しなければならなくなり、社会的・経済的な損失が発生するので、それを防ぐためである。
      思うに、損害が建替費用相当になるような場合、建物に利用価値は無いといえる。よって、民法635条には反しないので建替費用相当の損害賠償請求は認められる。
      したがって、300万円でも2500万円でもBはAに対して損害賠償を求めることができる。
      もっとも、この場合には民法635条但書の趣旨に反しないので解除も認められる。
    以上
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