表現の内容

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    資料の原本内容

       「表現の内容『感じたことや想像したことを絵や立体に表す』で、対象学年と題材を決め、具体的な展開例をもとに、『その子なりの多様な表現を保障する』教師の支援について述べよ。」
     図画工作では、大人の固定観念や視点から指導を行い均一した表現力の向上を図ることをねらいとしていたが、最近では子どもにゆとりを持たせ個々の表現力や資質向上を図れるように、学習指導要項においてさまざまな改訂が成された。ここでは改訂後の学習指導要項を要約するとともに、子どもの持つ多様性に富む表現を保障するために必要となる教師の支援について述べることとする。
    1. 学習指導要項の改訂によって基本方針も改善された。その主な要点としては、「子供の持つ多様な感性及び情操を育成する」「表現活動及び鑑賞活動の基礎となる資質や能力を育てる」「ゆとりを持ち、創意工夫を生かした教育活動を展開する」ことなどがあげられる。これらの内容には、多様な造形活動による完成及び個性の基盤形成、教育課程における弾力的指導、異文化理解や生涯教育の基礎形成などが重点とされ、単なる技能教科のひとつではないことを示すものとなっている。
     ここであげている弾力的指導とは、児童がゆとりを持ち楽しく造形活動に取り組めるよう、学校及び児童の実態に合わせられるような指導のことであり、従来のものとは異なり2学年ごとに目標及び内容をまとめて実行されるようになったことを示すものである。これにより、子どもが自分自身に最適な表現活動及び表現方法を見出すことが可能となったのである。またこれに伴い、発達や地域の実態に合わせ学年ごとに独立して実施する形態へと改善された鑑賞指導や、工作活動に適した授業時数を確保できるよう改善された工作指導も、改訂後の大きな特徴となっている。
    2. 学習指導要領の改訂に伴い、従来の構成であった「A表現」「B鑑賞」の柱立てにおいて「A表現」は、さらに『楽しい造形活動』『絵や立体、つくる』の2項目へと細分化された。ここにある『造形活動』は、この改訂によって表現活動の重要な要点であるとして全学年にわたって一貫性を持ち実施されるものとされたものである。これにより、造形活動を楽しみながらも自らの創作意欲を向上させることができるようにという観点を高学年においても位置づけられることとなり、造形活動全般の更なる充実への期待が込められるものとなったといえる。また、『絵や立体、つくる』では、従来の「絵や立体を表す」「つくりたいものをつくる」という2項目を一体化することで、子どもが自分自身で感じ取り、表し、想像することへの意欲をより一層重視するとともに、要素を段階的に指導するのではなく、子どもの自由意志を尊重することが必要となることが理解できるのである。これにより、個々の多様な表現力や創作意欲が引き出され、造形活動を価値のあるものとすることが可能となる。
    3. ここでは、5・6年に対する具体的な図画工作指導展開とそれに伴う教師の支援について述べる。ここでとりあげる題材は、「木の国へようこそ」というものであり、素材を感じるとともに創作的意欲の向上を図ることや、創造及び表現能力、デザインに対する想像能力を高めることができるように支援しながら完成までの過程を見ることを目標とする。
     5・6年になると、個々の創造及び表現能力はほぼ基盤が形成されるものと考えられるため、その能力をいかにして高め表現に対する応用力をつけることができるかが課題となる。低学年及び中学年で培ってきた表現能力を生かした子どもの自由な発想から展開される造形活動に重点を置くことと、友人との情報交流によって生み出される新たな技術がこの段階では必要となるため、教師は子どもの自由な発想を妨げることなくあくまでも補助的な立場を取るとともに、自身の持つ情報を提供することや子どもに不足している技術の実演指導を行うなど、教師主体の授業展開とならないよう留意することも重要となる。
     この表現活動では、材料として自由な発想をより多く生み出せるだけの「木片」、思い思いの形へと加工するための「のこぎり・糸のこぎり」、接着する際の「木工用ボンド」、作品完成後のさらなる想像力の向上を図るための「模造紙・サインマーカー」を用意する。これら、最低限度の材料を使用し子ども自身の想像力や発想によってどれだけの作品ができるか、またその完成までの作成過程でどのような工夫を行ったか、を評価することが重要であり、出来具合の上手・下手にとらわれないよう注意すべきである。
     はじめに、「木の国」とはどんな国か、どんな動物や建物があるか、などを子どもに想像させる。このとき、より自由に造形活動が行えるよう教師は「雲の上にありてっぺんが見えない」などを言葉がけし、積むことや築くことを連想させる。
     次に、木片を使用しそれぞれの子どもに自分の想像する「木の国」の動物や建物を素組みで表現させる。このときは、想像上の動物や実在の動物などに関係なく想像を働かせ造形することに重点を置き、子どもの自由な発想を妨げないようにする必要がある。また、実際にその発想したものを作成するためにはどの箇所に接着剤を使用しなければならないか、といったことを子ども自身の体験によって学習することができるようにする。
     素組みが一通り完成し子どもの発想通りに原型が出来上がったら、その原型からさらに発展させながら木片を積む・組み合わせるといった活動を開始する。この段階では、接着剤を使用しなければならない造形物の組み合わせ方や、接着剤を使用しなくても木片に切込みを入れることで組むことを可能とする方法の指導を実施する。それとともに、子どもがそれぞれどのような発想を展開し造形に取り組んでいるのかを把握する必要もある。
     作品が完成したら、子どもがそれぞれ自分の完成品に名前をつけどのように想像し、どのように工夫したかを各自発表するようにする。ここでは、それぞれの子どもの持つ「木の国」に対するイメージも発表させ、自分の作品は「木の国」の中でどのように存在しているのかを考えさせる。
     作品発表後、「木の国」の大地や海、子どもたちの作品以外の建物や動物などを模造紙の上に描きそれぞれの班ごとに提出・再発表させる。このとき、作品を模造紙の上にあらかじめ置き発想するのではなく、作品に対し子どもが抱いているイメージを紙上に描くよう提示し、平面においても想像力を働かせることができるよう補助することが必要である。
     これらのように、ただ子どもの自由意志に任せっきりになるのではなく、より子どもが具体的に想像しやすいように支援することが図画工作の支援に必要であるといえる。
    4. 以上のように、大人の持つ固定観念や価値観をそのまま子どもへの指導要素とする従来の支援方法ではなく、子どもの積極性を尊重し発想や活動に対する意欲を認めることで、造形活動を実施することへの楽しさや喜びを感じることができるといえるのである。

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