確かな学力

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    資料の原本内容

       「『確かな学力』を育てる授業の確立のために必要な基本事項について述べよ。」
     現代社会において、子どもの学力低下が深刻な問題となって浮上している。子どもの基本的な学力・応用力・読解力などが軒並み低下しているのである。しかし疑問に思うのは、現代の子どもたちは学校が終わった後塾に通うこと、また家庭教師を雇ってまで勉強しているのに、なぜ学力低下という問題が起きるのか、ということである。この問題を解決するために、わが国において学習の中核を担うべき「確かな学力」を育成すべきであるとされ、小学校において子どもたちの将来を見据えた学習がなされるようになったのである。
    1. 学力及び確かな学力とは
     平成15年学習指導要領の改正に伴い、中央教育審議会では学校教育で育成すべき学力観について次のように述べている。まず、生きる力に対しては、「知の側面からとらえ『確かな学力』を育むため、学習指導要領に示されている基礎的・基本的な内容を確実に定着させること、各学校における創意工夫を生かした特色ある取組みを充実させる。」とされている。次に、「確かな学力」の定義とは「知識や技能、学ぶ意欲、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力等までをふくめたものである」、としている。この2つの定義によって、学力とは知識の量の多少によって決まるものではなく、「思考力」「判断力」「表現力」といった現代の日本人に欠けている、といわれている3点や学ぶ意欲などをも含めた総合的なものである、と変更された。
     また、中央教育審議会の第一次答申においては、生きる力の定義を「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」、「自らを律し、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性及び、たくましく生きるための健康や体力」、とし、学力のみならず日常生活を送るための基本的能力も学校教育の中で培うべきなのだ、としている。
    2. 「確かな学力」の中にある「確かさ」とは
     「確かな学力」を育む上では、その「確かさ」を認識し指導に当たらなければならない。学習指導要領改正以前より考えられていた「確かさ」とは、「知識の確かさ」「技能の確かさ」「記憶の確かさ」などがある。これに追加された「確かさ」が以下の通りである。
     反復練習ではなく思考する学習を増加させ「考える学習」を通して学ぶ「思考の確かさ」、多くの情報をしっかりと処理し、状況を的確に把握してその情報とつき合わせた結果得ることの出来る「判断の確かさ」、表現する主体の意図が正確に相手に伝わるよう、表現する主体の持つ意図とその主体の用いる手段・道具との関係性を最適なものとし、意図に合わせて手段を選ぶ「表現の確かさ」、知識や技能をしっかりと身につけ、正確さと習熟性を併せ持つ「保持の確実さとしての確かさ」、応用・適用する活動・経験を発展的で応用的な学習場面から多く学び取る「応用・適用の確かさ」、が追加された「確かさ」となっている。
     これらを総合して読み取れる意図として、学力のみを身に付けるだけではわが国の現状を改善することが困難であるため、「生きる力」「生きるために必要な力」を統合した学力作りに力を注ぐべきである、という点がある。これにより、「読書離れ」や「学校離れ」といった問題点も解決できるのではないか、という期待がこめられているとも考えられる。
    3. 子どもと接すること、子どもに対する理解
     教育の目的とは、一人ひとりの人格の形成及び国家・社会の形成者の育成である、とされている。これは社会がどのように変化しようとも変わるものではない、という「普遍的」な存在であり、この教育の目的を達成するために学習活動が展開されるのである。現代社会において、子どもたちの抱える教育上の課題は次のようになる。
    まず、思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題において課題があること、次に成績分布の分散の拡大化があり、その背景に家庭内での学習時間などの学習意欲や、学習習慣及び生活習慣において問題があること、また、基礎的・基本的な知識・技能については身についているものの、それらを活用する問題については不安要素が見られること、最後に子どもたち自身の自信の欠如や将来への不安、体力低下などの精神的・身体的課題が見られること、などが主な課題として指摘されているものである。
    そうした中で、子どもの教育における育成に必要とされるのが次の教育内容である。まず、言語能力や知的活動からなる「言語活動の充実」、次に科学技術の発展する世界状況に合わせた知識・技能の定着や、観察力、適応力を育成する「理数教育の充実」、日本人としてわが国の歴史や文化を学び国際社会において活躍できるような人材の育成を図る「伝統や文化に関する教育の充実」、基本的な生活習慣や社会における最低限の規範意識、さらに法律やルールを守ることの意義や大切さを理解し、主体的に判断し適切に行動できる人間育成のための「道徳教育の充実」、発達段階に応じた集団宿泊・職場体験・奉仕活動体験などの「体験活動の充実」、幅広い言語に関する能力や国際感覚の基礎を培い、国際的な人材を育成するための基盤をつくる「小学校段階における外国語活動」、などがある。
    これらの教育内容を踏まえた学習活動を展開することが教師の役割となるのだが、これには問題点もいくつかある。まず、教師自身が「確かな学力」が何かを理解していないため、何を教えるべきでありまた何を教育の中で伝えるべきなのか、という点を把握しないまま学習指導に当たってしまうこと、また「確かな学力」の重要性を見出すことが出来ず従来どおりの古典的な教育指導に当たる教師が存在すること、さらに「確かな学力」を理解していてもそれをどのように子どもに伝えればよいのか理解できず、高圧的及び暴力的な指導方法を選択してしまう、などである。この中でも特に、暴力的な教師によって育成される子どもたちはその影響により、「自分らしい行動ができなくなる」「教師主体の行動をとる」「自らも暴力的な人間となってしまう」、といった悪影響を受けることもある。こうした影響を避け、正しい学力作りに努めるためにも次の教材研究が必要となるのである。
    4. 教材研究及びまとめ
     学習活動において、教材は子どもに対して適度な緊張を持たせるとともに、教師に対しても教育活動に携わる中でどのように学力育成をすればよいのか、そのためにどのような目標を設定し、子どもに適切な学習効果をもたらすべきなのか、といった自己思案及び問題解決のための過程を生み出せるため、重要視しなければならないものとなる。教材を用いる際には、まず学習内容の目的及び内容を明確なものとし、系統的に整理されたものを用いることが必要となる。いくらよい資料が揃っていても用い方を間違えればそれはただの紙、物になってしまうのである。また、用いる際に既存の教材のみを年々使いまわすのではなく、新たな教材を作り出し子どもが興味を持つことの出来る構成を行うべきである。
     「確かな学力」を子どもに伝え理解させることは、新たな能力や可能性を生み出すことへとつながる重要な過程となる。そのためにも、教育活動の中で教師自身も学び理解しなければならない、という意識を持つことが必要なのである。
    参考文献
    奈須正裕 「子どもに確かな学力を育てる」 教育開発研究所 2004

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