アルミナ関連

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    1.アルミナ
     アルミナは耐熱性や化学安定に優れ、資源的にも恵まれた材料であるが、単味では固体酸触媒あるいは触媒担体として、さらには、他成分との複合酸化物として、もっとも普遍的に使われる材料である。
    <合成法>
     アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシドの熱分解、金属アルミニウムの酸化などで合成される。鉱物名では、三水和物型(Al2O3・3H2O)のベーマイトやダイアスポアがあり、これらの出発原料と焼成温度の違いから、異なった結晶組成(α、γ、η、θ、χなど)のAl2O3が得られる。例えば、天然物相からの焼成では
    ベーマイト→(大気中、500℃、焼成)→γ- Al2O3→(900℃、焼成)→δ- Al2O3→(1200℃、焼成)→α- Al2O3
     ギブス石→(大気中、250℃、焼成)→χ- Al2O3→(900℃、焼成)→κ- Al2O3→(1200℃、焼成)→α- Al2O3
     バイヤライト→(大気中、250℃、焼成)→η- Al2O3→(900℃、焼成)→θ- Al2O3→(1200℃、焼成→α- Al2O3
     触媒材料としての工業的製造法は、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどの塩類をアンモニア水で処理し、得られた水酸化アルミニウム(Al(OH)3)ゾルを焼成してアルミナを製造する。あるみん酸ナトリウムなどを原料とする場合には、塩酸処理でNaを除去したのちにアンモニアを加えるか、CO2で処理して水酸化物とする。また、高純度アルミナを得るには、アルミニウムアルコキシドなどの加水分解も行われる。生成物はアルミナ水和物/無水和物、無定形/各結晶相アルミナなど調整法によって変化する。さらに比表面積、細孔径分布、酸量などの物性は、出発原料、共存物質、温度、圧力、H2Oの存在など反応プロセスで多様に変化できる。ちなみに比較的低温で調製されるアモルファスアルミナ、η- Al2O3やγ-Al2O3では、130~300m2g-1、高温安定型のα- Al2O3でも~30m2g-1程度の比表面積が得られる。
    <表面の性質>
     アルミナの表面水酸基(Al-OH)の酸性は極めて弱く、350℃以上の排気あるいは、高温加熱で部分脱水することで、初めて露出アルミニウムに起因するルイス酸サイトを形成し(図1)、固体酸触媒機能を発現するといわれる。酸強度は二分系固体酸のシリカ・アルミナなどに比べてむしろ弱いが、ハロゲンが残存しているとルイス酸性が強くなることがある。また、加熱条件によっては酸点のほかに塩基点が存在する。
     Periは、完全に水酸基でおおわれたアルミナ表面(Al-OH)nから段階的に部分脱水して、いくつかの露出-Al-とAl-OHとの複合構造を想定し、脱水率とモンテカルロ法(乱数(不規則な数値)を十分に与えて、事象を確率的に解析する手法)による酸性サイトの構造との関係を検討した。その結果、露出した孤立Alサイト、それぞれ1~4個のAl-OHに囲まれたAlサイトの5種の酸強度の異なる酸性サイトモデルとを提案し、赤外スペクトルとの対応をつけた(図2)。
    <触媒機能、担体性質>
     アルミナは単独では固体酸触媒、複合酸化物では固体酸触媒や酸化触媒、脱硫触媒として用いられるほか、固体触媒の担体として広い用途がある。表にも示すように、金属、酸化物クラスター、金属錯体などを担持する多孔質担体としても多用される。その理由は、耐熱性に富み、適度な表面積、細孔径、酸性質をもつ金属酸化物のためである。表面とバルクの性質は直接関連しないが、バルクAl2O3は両性酸化物に属し、pH条件を変えることで、陽イオン交換/陰イオン交換が可能である。
     触媒としてはアルコールの脱水や炭化水素の脱水素、クラッキング、異性化に用いられるが、多くは、他の酸化物との混合物や複合化物としても用いられる。
     酸性の担体効果の例として、CO水素化でPd/ Al2O3 (酸性)ではCH4が生成するのに対し、Pd/SiO2(中性)ではCH3OHが生成する。炭化水素の反応では炭素質が沈着しやすいと考えられる。
    2.ゾル-ゲル法
     ゾル-ゲル法とは、溶液から出発して微粒子を含むゾル(sol)の状態を通り、さらに固体の骨組みの隙間に液体あるいは空気を含む(gel)の状態を経てガラスあるいはセラミックスを作る方法である。
    2.1.ゾル-ゲルプロセス
     図3にゾル-ゲル法のプロセスと生成物の微細構造のモデルを示す。プロセスは図の左側にブロックダイヤグラムで示してある。2重括弧の中に記した3種の生成物は目的の生成物(最終生成物)となるものである。
    ゾル-ゲル法では、図3の左の列に記したように、まず出発溶液を調製する。このためには、普通、原料化合物、加水分解に必要な水、溶媒としてのアルコール類、触媒としての酸または塩基、必要に応じてその他の化合物あるいは溶媒を混合して均質溶液とする。酸化物を作るのが目的であれば、原料化合物としては対応する金属のアルコキシド、アセチルアセトナト、酢酸塩などのゾル-ゲル法の金属有機化合物、および硝酸塩などの無機塩が使用される。ハイブリッドやナノコンポジットをつくるときには必要に応じてその他の有機化合物や無機化合物を加える。
    調合溶液を数十度に保って加水分解と重縮合反応を起こさせると酸化物微粒子または高分子が分散している液体のゾルとなり、さらに反応を進めると粒子がつながってゲルになる。ゲル化した時点でゲルが水や溶媒を含んでいるならばこれを蒸発させて乾燥ゲルとする。乾燥ゲルはふつう多孔質である。乾燥ゲルを最終生成物として利用する場合には、最高処理温度が100~150℃かそれより低いので、有機物の分解が起らず、必要な成分として溶液調合時に加えた有機物の機能を利用するナノコンポジットや有機-無機ハイブリッドをつくることができる。
    数百度で加熱すると、ゲルはガラスあるいはガラスに近い状態になって強度が増す。出発溶液中に無機または金属微粒子の原料を入れておき、この加熱によって微粒子を析出させると微粒子が分散した機能材料が得られる。有機分子の集まりである有機ピグメントを導入し、200℃近くまで加熱してピグメントを分解することなくゲルを強化することも可能である。
    ゲルを数百度またはそれ以上の温度で加熱すると、粒子の焼結が起こって細孔がなくなり、ゲルは綴密な透明ガラスやセラミックス(結晶性無機材料)となる。綴密化に必要な加熱温度が従来の方法に比べて数百度も低いので、ゾル-ゲル法は低温合成法で、高温に加熱すれば分解してしまうような物質を含む材料をつくることを可能にする。
    2.2ゾル-ゲル法の特徴
     ゾル-ゲル法は、
    低温合成であること
    溶液から出発するので、成形体をつくるのに粉末処理(粉末成形)を必要としないこと
    によって特徴付けられる。この二つの特徴から、ゾルーゲル法の長所として表2に示す4項目があげられる。表には、この長所によって生じる効果も記してある。以下(1)~(4)について考える。
    長所(1)低温合成性
    ゾルーゲル法が低温合成法と呼ばれる理由には二つある。一つは出発液中で室温に近い低温で反応(例えば加水分解ならびに重合反応)を起こさせて固化してできたゲルを最終製品とすることができるからである。表2中の①有機-無機複合材料、②有機分子・生体分子分散無機質ゲルの作製が可能なのはこのためである。言い換えれば、これらの材料はゾル-ゲル法の低温合成性を利用することによって初めてできる材料である.
    低温合成と呼ばれる理由の二つ目は生成するゲルを構成する粒子がサブミクロンの大きさで、細孔を除くための焼結(コラップス(Collapse)ともいう)の温度が低いことである。これは、生成物がガラスやセラミックスの場合にあてはまる。ガラスでは、例えば従来の原料を使ってパイレックスタイプのホウケイ酸塩ガラスを作るためには1600℃という高温に加熱して原料を溶融する必要があるが、ゾル-ゲル法では650℃に加熱すればよい。
    長所(2)各種微細構造可能
    ゾルーゲル法では、表2に記したように、各種の微細構造を持つ材料をつくることができるが、これは、ゾル-ゲル法が低温合成性であること、溶液から出発し、そのゲル化によって材料をつくるというゾル-ゲル法の特徴に基づいている。各種の微細構造を実現することができるばかりでなく、出発溶液の組成、pH、反応温度、反応時間、雰囲気などを調整することにより微細構造、例えば、細孔径とその分布、結晶の配向の有無などを制御することができることに注目すべきである。
    長所(3)材料各部の組成均一
    ゾル-ゲル法は溶液から出発する。溶液中では目的材料の成分はイオンか分子の状態で溶解しており、混じり合っているので、合成目的の材料が多成分系であっても反応によって希望の多成分化合物ができると期待される。この場合、例えば、ガラスやセラミック材料について(特定のイオンや微粒子を含む場合にはマトリックスのガラスやセラミックスについて)、機能を示す組成をつくるのが目的であるから材料のなかのどの部分でも同じ希望の組成であることが望ましい。
    ゾル-ゲル法でこのことが達成できることを荒井は、高温触媒担体となるBaO・6A12O3組成のセラミックスについて確かめている。すなわち、このセラミックスを炭酸バリウムと水酸化アルミニウムの粒子からなる粉末混合物の焼結によって作った場合には、粒子内および粒子間でBa/A1比は非常に大きく変動したが、ゾル-ゲル法ではBa/A1比は粒子内でも粒子間でも一定で、希望の化合物...

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