毒性学PBL

閲覧数1,093
ダウンロード数4
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    資料の原本内容

    毒性学PBLレポート

    2010/06/21
     抗ガン剤の分類には多数あり、成分、合成法などの観点から分類するいくつかの方法があるが主に作用機序からの分類をまとめた。アルキル化剤、抗ガン性抗生物質、代謝拮抗薬、ステロイド誘導体、抗ガン性白金錯体、植物由来成分、その他(誘導体、微小管の脱重合阻害薬など)に大きく分類した。

     

    <アルキル化剤>

     ●作用機序

    核酸やタンパク質をアルキル化してDNAの複製、mRNAの転写を阻害し、核酸を切断して細胞増殖を阻止する。分子内にアルキル化能をもつ官能基を2個以上持つ。高い求核性をもつグアニンの7位の窒素原子をアルキル化し、塩基を架橋させる。e.g. ニトロゲンマスタードN-オキシド シクロフォスファミド チオテパ

    ●メリットとデメリット

     反応機構が分子レベル・合成レベルで明らかにされている。ある一定の濃度に達すると、作用時間が短くても確実に効く。臨床でも頻繁に使われているのは、合成経路の開発が比較的容易で、種類が多く副作用に対する効果が大きいためである。副作用が大きいが、そもそもほとんどの抗がん剤の使用によって正常細胞も損傷を受ける。正常細胞の増殖速度よりがん細胞の増殖速度のほうが大きいことを利用するという方法であるので、抗がん作用に期待できる化合物ならば有効性を評価すべきである。

    ●使用方法と対象

     対象となるがん:悪性リンパ腫、急性白血病、乳がん、ホジキン病

    ●今後の展開

    作用機序が分子レベルで分かっているため、新薬を開発する上での戦略を立てやすい。また、数多くのアルキル化剤の合成に関する情報や臨床での使用例が多く、現場のニーズをさらに有効性の高い新薬の開発に生かすことができる。薬は有効性や副作用の有無はもちろんであるが、効率よく合成できることも多くの患者さんに使ってもらう条件となるので、このような観点から、他の抗ガン剤に比べて優れていると言える。
    <抗ガン性抗生物質> 

    ●作用機序

     芳香環を持ち、核酸塩基間へのインターカレーションによりDNAやmRNAの合成を阻害する。微生物が産生する抗生物質やその誘導体である。e.g. マイトマイシンC ブレオマイシン 11-デオキシダウノルビシンなど

    ●メリットとデメリット

    ある一定の濃度に達すると、作用時間が短くても確実に効く。

    ●使用方法と対象

    対象となるがん:慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚がん、肺がん、胃がん、膵がん、肝がん、結腸・直腸癌、子宮体がん、子宮頸がん、ユーイング肉腫など多種。
    <代謝拮抗薬>

    ●作用機序

    プリン塩基やピリミジン塩基と類似した化合物である代謝拮抗薬はDNAやmRNAの生合成代謝を阻害する。通常細胞にも影響があるが、癌細胞での細胞の増殖速度は正常細胞よりもはるかに大きいため、抗腫瘍作用を示す。e.g. フルオロウラシル メルカプトプリン テガフール

    ●メリットとデメリット

    細胞障害性の薬剤であるため副作用が大きい。

    ●使用方法と対象

    対象となるがん:急性白血病、慢性骨髄性白血病、消化器がん、乳がんなど。
    <ステロイド誘導体>

    ●作用機序

    ステロイドホルモンの誘導体により、免疫などの生体防御機能を高めて抗ガン性を示す。e.g. エナント酸テストステロン 酢酸クロルマジノン

    ●メリットとデメリット

    ホルモンとアルキル化剤などとの併用によって治療を効果的に行うことができる。併用した抗がん剤の副作用のみならず、ステロイドホルモンの投与による副作用(毛深くなる、不眠、食欲の変化、体重増加、重度のものでは白内障や感染症など)も現れる可能性がある。

    ●使用方法と対象

    対象となるがん:月経周期異常や不妊症、前立腺肥大症、などもとはホルモンとして利用されていた→ホルモンバランスを操ることで子宮体がんや前立腺がんなどの性特有のがんに有効だとされている。
    <抗ガン性白金錯体>

    ●作用機序

    DNAに直接結合して合成を阻害する。e.g. シスプラチン カルボプラチン

    ●メリットとデメリット 

    細胞障害性抗がん剤のため副作用が大きいが、特定のがんには非常に有効である。

    ●使用方法と対象

    対象となるがん:睾丸腫瘍、膀胱がん、腎盂・尿管腫瘍、子宮がん、卵巣がんなど。
    <植物由来成分>

    ●作用機序

    様々である。ビンブラスチン・ビンクリスチンは微小管重合阻害、カンプトテシンはトイソメラーゼⅠを阻害しDNA合成を阻害することにより抗がん作用を示す。e.g. ビンブラスチン ビンクリスチン カンプトテシン

    ●メリットとデメリット

    複雑な構造をもつものが多いが、その活性中心や作用機構を調べることで、有用性の高い新たな化合物を開発するヒントになることがある。偶然の発見によるところが大きいが見つかった化合物のうち非常に有用で多く利用されているものがある。これらの一部は微小管重合阻害など、細胞障害性ではなく分子標的型の抗がん剤であり、より選択的にがん細胞を殺すことができる。ただし合成の収率が悪く、多段階の反応を要するため医薬品として大量に合成するには都合が悪い。また、植物の生育が遅い場合や一定量の抽出に大量の植物が必要となる場合がある。さらに、重篤な副作用としてビンブラスチンの神経毒性があるが、このような神経毒性の詳しいメカニズムが解明されていないなど薬物有害反応に対する対応が難しい。

    ●使用方法と対象

    対象となるがん:悪性リンパ腫、絨毛がん、白血病、小児がん、肺がん、乳がん、再発したがんなど各化合物によって様々。
    なお、投与方法には静脈注射、経口投与、筋肉注射、胸腔内注入、腹腔内注入、各種臓器・がんへの直接投与、中心静脈への直接投与、がん病巣の栄養動脈への直接投与などがある。また、白血球減少による副作用(感染症など)のため期間をおいての反復投与などそれぞれの特徴によって細胞障害性薬物の投与方法は決定されている。患者さんの負担としては、経口投与や静脈注射が比較的少ないと考えられるが、これも治療するがんの部位や薬の性質、製剤化の可否によって投与方法が決定されている。
    【参考】

    北泰行ら編、創薬科学-有機合成からのアプローチ-、東京化学同人、2004、377p

    “Metabolome.jp” http://www.metabolome.jp 参照2010/06/20

    国立がん研究センター“がん情報サービス” http://ganjoho.jp/public/index.html 

    参照2010/06/20

    海老塚豊監修、医薬品天然物化学、南江堂、2004、519p

    各薬の適用対象の調査に日本医薬情報センター編、日本の医薬品構造式集2008を利用。

    3

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。