基礎実習レポート3

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    基礎実習レポート

    1-3 紫外可視吸光光度法:酵素を用いる臨床化学分析
    2010/04/28 実験実施

    2010/05/6 提出
    Ⅰ.目的

     血清中総コレステロールの定量を汎用されている臨床化学分析法により行い、酵素的分析法ならびに紫外可視吸光光度法の基礎概念および操作を習得する。
    Ⅱ.概要

    吸光光度計を設定する。

    コレステロール標準液について吸光光度測定に基づく酵素分析を行い、

    検量線を作成する。

    血清試料について同様にして酵素分析を行い、作成した検量線を用いて血清中総コレステロール値を決定する。
    Ⅲ.原理

     テキストに準ずる。
    Ⅳ.手順

    吸光光度計の設定
     試料室、セル数、試薬ブランク補正、セルブランク補正の設定をテキストの指示に従って行った吸光光度計の操作確認を行った。
    検量線の作成
     発色試液3.0mLをピペットマンを用いて4本の試験管に取り、37℃で5分間予備加温した。標準液0.01mLおよび精製水0.01mLを3本の試験管(Std-1)に加え、精製水0.02mLを1本の試験管(Blank-1)に加えた。よく振り混ぜた後、37℃で正確に5分間加温した。各々の試験管を氷水で5分間冷却した後、Blank-1を対照として波長600nmにおけるStd-1の吸光度を測定した。3つの試料の測定結果から、吸光度の平均値と標準偏差(S)、相対標準偏差(RSD)を求めた。
     発色試液を発色試液3.0mLをピペットマンを用いて4本の試験管に取り、37℃で5分間予備加温した。標準液0.02mLを3本の試験管(Std-2)に加え、精製水0.02mLを1本の試験管(Blank-2)に加えた。以下同様にしてStd-2の吸光度を測定し、平均値と標準偏差(S)、相対標準偏差(RSD)を求めた。
     標準液0.04mL(Std-3)に加え、精製水0.04mL(Blank-3)についても同様の試験を行い、Std-3の吸光度を測定し、平均値と標準偏差(S)、相対標準偏差(RSD)を求めた。
     Std-1、Std-2、Std-3の総コレステロール濃度を各々100、200、397.4mg/dLとして検量線を作成した。

    血清総コレステロールの定量
     血清0.02mL(Test)について同様の試験を行い、Testの吸光度を測定し、Std-1、Std-2、Std-3の平均値と標準偏差(S)、相対標準偏差(RSD)の結果を求めた。検量線とTestの吸光度から血清総コレステロール濃度を求めた。
    Ⅴ.結果

     手順で示したStd-1、Std-2、Std-3およびTestの平均値と標準偏差(S)、相対標準偏差(RSD)の結果を以下の【表1】に示す。

    【表1】コレステロール標準液の吸光度の測定値と計算結果(1)
     これを見るとStd-2、Std-3、TestにおいてRSD≫5.00となっており何らかの原因により、結果が操作による誤差の範囲内であると判断できない。このことから、適正に操作が行われたと推定できるデータのみを採択することとした。すなわち、考察に述べることを判断の根拠としてStd-2については③のみ、Std-3については②と③のみ、Testについては①と③のみを採択し、計算した結果を以下の【表2】に示す。
    【表2】コレステロール標準液の吸光度の測定値と計算結果(2)
     この結果から最小二乗法より作成した検量線を【グラフ1】に示す。また、【グラフ1】と検体(Test)の吸光度測定の結果を用いて、検体中の総コレステロール濃度を測定した。その結果(x,y)=(151.3,0.196)も併せて、下のグラフに示した。

    検量線を用いて求めた検体中の総コレステロール濃度は151mg/dLであった。
    【グラフ1】検量線とTestの値
    最小二乗法
     Std-1、Std-2、Std-3において得られた吸光度の平均yと、標準液の総コレステロール濃度xのプロットを結ぶと理論上直線になるから、その直線の方程式をY=ax+bとおく。点(x,y)=(xi,yi)からY=ax+bまでの距離をdi (i=1,2,3…n) とし、その総和をSとしたとき、Sの値が最小になるようにaおよびbを定めた。

    ②より、
    データからB=2.079×、C=0.8927、D=264.6、E=697.4を計算して、
    a=0.00124

    b=0.00842                     を求めた。
    Ⅵ.考察と問題の回答

     

    溶液の濃度、吸光度、セルの長さの間にはLambert-Beer則、すなわち、A=εcℓ(吸光度:A、セルの長さ:ℓ、溶液濃度:c、モル吸光係数:ε)が成立する。つまり理論上吸光度と溶液濃度は比例の関係にあるので、これに大きく外れる値が出た場合には操作に不備があったと考えるのが妥当である。εは溶液固有の値であり、使用したセルの長さはすべて1cmなので、実験誤差は濃度調製の誤差だと言える。このことから今回、吸光度の測定において大きな誤差が生じてしまった原因として考えられるのは、発色試液および標準液を量り取る際に手順で示された量よりも少ない量を測りとってしまったことである。何回か使用するうちにピペットマンの先端部分に気泡が混入して正確な量を量りとれなかったのであろう。0.1mLや0.01mLというごく少量の試料を量る場合には1滴の誤差も濃度に大きく反映されてしまう。また前述の理由で発色試液を少なく量りとってしまった場合、溶液中のコレステロールエステラーぜおよびコレステロールオキシターゼ、ペルオキシターゼの量も減少することとなる。すなわち物理的な溶液濃度の誤差に加えて、化学反応の進行にも量的な影響を及ぼすため、吸光度の測定値が理論値から大きく外れたと考えられる。

     また、吸光光度計の操作の段階でも測定誤差が生じたと考えられる。セルをセットする際に光が通過する部分に触れると、指紋や手の水分がセルに付着し、測定値に誤差が出る。同様に、光が通過する面をキムワイプでふき取る際に細かな塵が付着し、測定値に誤差が出たと考えられる。また一回測定が終わるごとにイオン交換水でセルを十分に洗ったが、この際十分に水分がふきとれていないと、作成した試料溶液中の総コレステロール濃度が小さくなり測定誤差が出る。

    以上を考慮し、RSDの計算結果から、吸光光度計の測定誤差の範囲内と判断できる測定値を検量線作成に採択した。

     発色剤中にアスコルビン酸オキシダーゼを添加するのは、血清中に存在するアスコルビン酸を除去するためだと考えられる。アスコルビン酸は水溶性物質であり、血清中に溶解している。構造上の特性から電子を放出しやすく、活性酸素種を還元する働きがある。すなわち検体である血清中にアスコルビン酸が存在すると、遊離型コレステロールの酸化によって発生した過酸化水素が還元されてしまうので、青色色素の生成が阻害されると考えられる。これを防ぐ目的でアスコルビン酸オキシダーゼを添加する。
    Ⅶ参考

    斎藤寛ほか編,パートナー分析化学Ⅰ,南江堂,2007,299p

     山口政俊ほか編,パートナー分析化学Ⅱ,南江堂,2007,321p

     “アスコルビン酸注射液(PDF)” 2010/05/04参照
    www.irom-pharma.co.jp/product/interview_pdf/4987073603238.pdf  

     

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