脊椎骨折  

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    資料紹介

    脊椎骨折

    資料の原本内容

    脊椎の骨折について

    胸椎以下の損傷

    上、中位胸椎(T1~10)は胸郭によって、腰仙椎部(L4~S)は腸腰靱帯によって可動性が制限されているために力学的に安定で、損傷の頻度が少ない。損傷された場合は外力が大きいので肺合併症が起こりやすい。胸腰椎移行部(T11~L2)は不動部の胸郭と可動部の腰椎の境にあって応力が集中しやすい。主に圧迫、屈曲、伸展、回旋外力、それらの複合によって生じる。損傷型には圧迫骨折、Chance骨折、破裂骨折、脱臼骨折、横突起骨折などがある。

     損傷のメカニズムによる分類は、脊椎を前方支柱、中央支柱、後方支柱に分け、それぞれの破綻によって分類される。
    ・圧迫骨折

    骨粗鬆症により脆弱になった高齢者の脊椎は、腰を落として尻もちをつくような転倒で椎体圧迫骨折を生じる。骨粗鬆症が高度の場合、物を持ち上げたりする動作のみでも生じる。症状としては腰背部痛や亀背・後円背のような変形、稀に下肢麻痺を生じる。

    しかし、実際にはほとんど自覚症状の出ない場合も多い。特に徐々に骨折が進行していくような場合、物を持ったり、歩いたときに腰背部痛がある、背中が丸くなる、身長が低くなるなどの症状が出た場合には本疾患を疑う。

    部位としては、構造的に胸腰椎移行部に最も圧迫力がかかり易いため、第12胸椎・第1腰椎に多い。稀に悪性腫瘍の椎骨転移により病的骨折を生じるときもある。この場合、腰背部痛は激烈で、下肢麻痺や体幹の支持性・運動性を失う場合もある。腰背部痛が強く、胃癌・乳癌・子宮癌などの血液転移性腫瘍の既往がある場合、医師に速やかに報告した方がよい。

    臨床所見は、胸背部痛、腰痛、骨折部の叩打痛である。関連痛として、下肢の痛みやしびれ、胸椎部の圧迫骨折による肋間神経痛様の疼痛などである。

    圧迫骨折による脊髄麻痺は少ないが、まれに遅発性に麻痺を生じる。これは椎体の圧潰が進行して脊髄圧迫症状が出現するからであり、粉砕骨折により椎体後壁が脊柱管内に入り込む場合と、圧迫骨折が楔状となり後弯変形が著明となる場合である。麻痺の出現までは骨折後1日から2年近くに及ぶこともあり一定しない。麻痺症状としては筋力低下や知覚障害、歩行障害、尿失禁などの膀胱直腸障害も出現することがある。
    ・Chance骨折

    2点固定座席ベルト装着時の自動車事故(シートベルト損傷)や転倒で後方支柱に伸延力が作用して生じる。脊椎の屈曲外力により、脊椎の椎体圧迫骨折を生じることなく脊椎の後方から前方に至る椎弓と椎弓根の水平断裂を示す骨折が特徴である。(ダッシュボード損傷) 神経合併症はあっても軽微ですが不安定骨折で後弯変形の増強に注意が必要になってくる。
    ・破裂骨折

     軸圧による前方支柱と中央支柱の損傷であり、椎体の前半分および後半分の圧潰、粉砕ならびに椎体後縁骨片の脊柱管内突出が生じる。脊髄・馬尾損傷を高頻度に合併する。後方支柱の靱帯は無傷だが、椎弓の縦割れ、椎弓根間距離の拡大と硬膜損傷がみられる。合併する麻痺の主な原因は脊柱管内嵌入骨片である。
    ・脱臼骨折

     屈曲、伸展、回旋、剪断の外力によって発生するが多くは複合による。胸腰椎移行部に発生する頻度が高い。Three-columnのすべてが損傷され、不安定型骨折である。高頻度に麻痺を合併する。屈曲回旋力による脱臼骨折、剪断力による脱臼骨折、屈曲伸延力による脱臼骨折と分類される。屈曲回旋によるものは前外方への椎体転位を認め、しばしば下位椎体の上面のスライス骨折を合併し、椎間関節は骨折または嵌頓する。複数の横突起骨折や肋骨骨折を合併していることが多い。剪断力によるものは椎間関節骨折、特に上関節突起骨折、前縦靱帯、後部靱帯群や椎間板の断裂が生じる。前方転位のposteroanterior shear subtypeと後方転位のanteroposterior shear subtypeがある。
    <治療方法>

    ・保存的治療

     保存的治療の適応は基本的に麻痺を合併していない症例です。麻痺の合併がなくても損傷脊椎の不安定性が高度で遅発性麻痺の危惧がある場合は待機的に手術を検討する。完全麻痺であっても馬尾や神経根の改善を目指す手術の適応の検討を行う。大損傷は、椎体圧潰の高度でない圧迫骨折、麻痺合併がなく椎体圧潰の高度でない破裂骨折も保存的療法が原則。小損傷は、軟性コルッセットの適応で疼痛の軽減がみられれば離床が可能になる。圧迫骨折では、圧潰が中等度以下であれば軟性か硬性コルッセット装着で離床は2週間後とする。後弯をきたした圧迫骨折や神経障害のない破裂骨折に対する保存療法には頑固たるものはない。荷重を避け後弯進行を予防するための長期臥床にはさまざまな問題が出現する。軽度の後弯では整復は要せず、高齢者や全身の合併症を有する者に対しては積極的な整復を行わず、約4週間臥床させ外固定装具で早期離床するとよい。
    ・観血的治療

     脱臼骨折、神経障害を伴った破裂骨折、Chance骨折(シートベルト損傷)、圧潰が高度で後弯を伴った圧迫骨折が手術適応となる。
    ・圧迫骨折

     後方進入によって椎間関節に圧縮力を加えることにより、椎体の前方部に伸張力を作用させ、椎体高を復元させる。
    ・破裂骨折

     椎体後方部の脊柱管内嵌入骨片に対する除圧方法として、後方内固定器具よって損傷部靱帯に伸張力を加えて骨片を整復する間接的徐圧と脊柱管内骨片を摘出する直接的徐圧がある。直接徐圧は前方侵入によって破裂椎体を亜全摘しつつ嵌入骨片を摘出し支柱骨移植を行う「前方法」と後方進入によって経椎弓的、後側方から突出骨片を摘出したり、前方に打ち込む「後方法」がある。いずれも後方内固定器具を併用する。後方法は前方支柱移殖がない為、矯正損失や内固定器具の折損の可能性が高い為、適応は神経障害が軽度で脊柱管内骨片占拠率が低く、椎体圧潰の強くない症例となる。
    ・脱臼骨折

     急性期(受傷後3日以内)の麻痺を合併した脱臼骨折においては、麻痺の程度に関わらず緊急手術適応になる。麻痺の合併がない場合は待機的手術とする。既存の合併疾患や受傷時の合併損傷のため全身状態に問題がある場合は全身管理を優先させる。

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