社会的影響a

閲覧数2,003
ダウンロード数6
履歴確認

    • ページ数 : 6ページ
    • 全体公開

    資料紹介

    資料の原本内容

    社会的影響
    背景と目的
    判断や態度の形勢あるいは行為の決定に関して人々は相互に影響を及ぼしあう。そのような影響は一般に「社会的影響(social influence)」と総称されている。Sheriff(1935)は、自動運動現象(暗室内で光点を凝視していると実際には静止しているにもかかわらず動いているように見える現象)による光点の(見かけ上の)移動距離を判断させる場合、2人または3人の被験者を一緒に暗室に入れ、相互に他社の判断値が聞こえる状況において判断を繰り返すと、各被験者の判断値はある限られた範囲に収束することを明らかにした。自動運動現象による光点の移動距離というような物理的基礎のない(物理的には光点は固定されている)きわめてあいまいな対象の判断においては、他者からの(すなわち社会的な)影響を強く受けることになる。またAsch(1955)は、標準刺激として呈示される1本の線分と長さの等しいものを比較刺激として呈示される3本の線分の中から選ぶという知覚判断の課題において、わざと間違った判断を回答するよう事前に指示しておいたサクラたちの中へ、何も知らない被験者(critical subject:臨界被験者)1人をいれ、彼らがサクラたちの判断にどのように影響されるかを観察した。たとえば6人のサクラが一致して間違った判断を回答する中に一人置かれた臨界被験者は、その間違った判断に同調する傾向にあった。このような影響は集団圧力と呼ばれ、サクラの人数や役割を変えて、集団のサイズの効果やサクラの全員一致がくずれた場合の効果などが調べられている。今回の実験では情報的影響に関して、複数の個人が同一の対象について困難な判断を行おうとするとき、ほかの人々の判断が匿名情報として提供されると、各被験者の判断にどのような影響が生じるかを、定量的に検討する。
    方法
    [装置]
    豆362個、透明なふたの出来るボトル、実験の説明用紙、記録用紙。記録用紙は、条件によって異なる文言が記述された。(実験条件:予備実験による学生の回答の平均値が164.4個であったと記載 統制条件:事前情報なし)
    [手続き]
    実験の目的や仮説を知ることで、社会的影響の効果を消すことのないように、被験者には、実験とは異なる実験目的を伝えた。この実験では、数の推測能力を測ることを目的として伝えた。
    課題:被験者は透明な入れ物に入っている豆の数を推測。その結果を記録用紙に記入し、その確信度も記入。
    実験条件:他者の推測の結果が、被験者の推測に影響を与えるかどうかを調べるため実験条件では、事前に他者の推測(予備実験の平均値)を伝えた。情報は記録用紙に記述した。
    統制条件:他者の行動の影響が無い場合を、ある場合と比較するため、統制条件では、他者の推測の結果を伝えなかった。
    実験の教示は口頭、および、記録用紙を配布して、その記録用紙内で行った。
    結果
    表1 統制条件下での各数値 表2 実験条件下での各数値 被験者 推測値 誤差率 確信度 被験者 推測値 誤差率 確信度 A1 126 -0.65193 -1 B1 73 -0.79834 -2 A2 1000 1.762431 -2 B2 85 -0.76519 -1 A3 136 -0.62431 -2 B3 128 -0.64641 -1 A4 125 -0.6547 -1 B4 135 -0.62707 -2 A5 600 0.657459 -1 B5 126 -0.65193 -2 A6 54 -0.85083 -3 B6 121 -0.66575 -1 A7 70 -0.80663 -2 B7 284 -0.21547 -2 A8 76 -0.79006 0 B8 135 -0.62707 0 A9 275 -0.24033 2 B9 200 -0.44751 -2 A10 216 -0.40331 1 B10 235 -0.35083 0 A11 132 -0.63536 -3 B11 539 0.48895 1 A12 50 -0.86188 -1 B12 112 -0.69061 -1 A13 202 -0.44199 1 B13 252 -0.30387 -3 平均 235.5385 -0.34934 -0.92308 B14 104 -0.71271 -3 標準偏差 271.6277 0.750353 1.5525 平均 180.6429 -0.4847 -1.23077 標準偏差 121.6316 0.335999 1.150728
    表1、2で示したように統制条件下での被験者の推測値の平均は235.5385、標準偏差は271.6277であり、誤差率の平均は-0.34934、標準偏差は0.750353であった。また、確信度の平均値は-0.92308、標準偏差は1.5525であった。実験条件下での被験者の推測値の平均は180.6429、標準偏差は121.6316であり、誤差率の平均は-0.4847、標準偏差は0.335999であった。また、確信度の平均値は、標準偏差は1.150728であった。
    考察
    今回の実験において他者からの情報が被験者の判断に影響を与えたかどうかだが、統制条件下の推測値の中にはとびぬけて数値が高いものがあるためにt検定を行ったところ、t(25)=0.69で有意ではなかった。今回実験が失敗した理由を考えると、まず候補に挙がるのが、授業の一環として実験を行ったため、学期の初めに配布した資料など、何らかの形で今回の実験のテーマが「社会的影響」であると知っていた可能性が大きいこと(実際僕は知っていました)や、容器の中にはいった豆の見せ方が、被験者のいる講義室の前で呈示しただけのため、席の位置によっては豆の一粒一粒が見えた人と容器のどれくらいまで豆が満たしているかしか見えなかった人がいるかもしれないということ。また、実験の集計のために使用した解答用紙の冊子の中に「A(もしくはB)」という記述があったことによって、この実験が何らかの比較実験の一種であることを被験者に伝えてしまった可能性が考えられる。よって今回の実験の改善策としては、まず絶対にこの実験が社会的影響に関しての実験であると被験者に気づかせないこと、そのためには今回の用に心理学実という講義に参加している受講生を被験者とするのではなく、一般に被験者を応募した上で、統制条件と実験条件の被験者を別々の部屋に分けた上で、条件によって異なる解答用紙の冊子を配布し、それぞれの目の前にひとつずつ豆の入った容器を呈示して、その豆の数を推し量らせるということが上げられるだろう。

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。