運動残効a

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    資料紹介

    資料の原本内容

    目的
    運動残効とは、一定方向へ動き続ける対象を観察し続けた後には、静止している対象が逆方向に動いているように見えるという現象である。これは動きへの選択的順応効果であり、脳内の視覚システムに動きを検出するための独立した処理機構が存在することを示しているといえる。そして、運動残効がいったいどのくらい起こるのかを定量的に調べることによって、動きを検出する機構の特性を心理物理学的に検討することが出来る。今回の実験では運動残効を定量的に測定するために、恒常法を用いたキャンセレーションを扱う。残効のキャンセレーションとは、残効とは逆向きの動きによって見かけ上、テスト刺激が静止して見えるようにすることで、加えなければならない速さを考察することによって残効の強さを定量化できるというものである。
    方法
    装置
    パーソナルコンピューター(各実験協力者に1台)、19インチCRTディスプレイ(各実験協力者に1台)、実験協力者の目から注視点までの距離を固定する器具(各実験協力者に1基)
    刺激
    注視点の左右に正弦波縞刺激の矩形窓を配置し、縞が上下方向に動いた。矩形窓の大きさ:9cm×4.5cm、注視点から矩形窓までの距離:各2.25cm、観察距離50cm、縞の数:8周期、縞のコントラスト:順応=0.8 テスト=0.4、順応刺激:左の縞は上へ、右の縞は下へ動いた。速さは4Hz、コントラストは0.8、テスト刺激:-0.25Hz~0.25Hz(順応なし)または-0.125Hz~0.5Hz(順応あり)の6段階で動いた(右が下へ、左が上へ動く場合を+とする。)、コントラストは0.4、0.5秒呈示。
    手続き
    観察者はテスト刺激が動いて見えた方向を毎回キーボードを押して答えた。右=下向、左=上向の場合をR。左=下向、右=上向の場合をLとし、それぞれ右左の矢印キーで答えた。6つのテスト速度(方向)はランダムに各15回ずつ呈示された。
    順応なし条件:テスト刺激が1秒おきに呈示された。順応あり条件:最初に順応刺激を20秒観察し、その後、テスト刺激が1秒の再順応をはさんで呈示された。
    結果
    順応なしの場合、-0.25でRが0%、-0.125でRが0%、-0.06でRが0%、0.06でRが100%、0.125でRが100%、0.25でRが100%。
    順応ありの場合、-0.125でRが0%、-0.06でRが0%、0.06でRが20%、0.125でRが100%、0.25でRが100%、0.5でRが100%だった。
    以上とそれをまとめた図1から、グラフは両方とも単調増加傾向になっており、順応なしの場合、速度0のときを点対象の中心としたグラフになっている。また、順応ありの場合のグラフを見てわかることは大まかに言ってR response=50 speed=0.172の点を点対象の中心としたグラフになっているということである。
    またこれら2つのグラフの関係は順応なしのものをほとんどそのまま右側にシフトしたものが順応ありのものとなっているということである。
    考察
    結果の項で述べたように2つのグラフの関係は順応なしのものをほとんどそのまま右側にシフトしたものとなっていることから、恒常法によるキャンセレーションによって運動残効が検出されたといえる。また、運動残効があることから、われわれの脳はある程度の時間同じ方向に動くものをみると、それに対する知覚能力が一時的に弱まるということがわかる。それには各方向への動きに対応した神経細胞があり、それらが一定時間以上の刺激により麻痺してしまうのだろう。なお今回は恒常法を実験の方法として使ったが、このほかにも調整法や極限法などがある。調整法とはある刺激に対して、その刺激と同じものを実験協力者が調節するものであり極限法とはたとえば今回の場合、残効が残るのはどれほどまでかを順に刺激を呈示して調べていくものである。これらに対する恒常法のメリットは極限法のように実験協力者の予想によって数値が変わってしまう可能性が低い場合のほか特に今回の場合、残効は一定時間内に限られるものであるため、それが残っているうちに刺激に対する実験協力者の反応が観察できるという点が大きなものである。また、ほかの実験協力者の実験結果を参照してみると、特に順応ありのグラフにおいて大まかな点対象の中心といえる点が個人個人によって、speed=0.1459、0.1328、0.18と開きがあったことから個人差は存在していると考えられる。
    図1 運動残効(破線が順応なし、実線が順応あり)

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