宗教と生命倫理問題

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    宗教と生命倫理問題

    1 生命操作に対する二つの態度
    スイスの新興宗教団体が「クローン人間作り/信者使い米で開始」。これは、2000年9月22日付読売新聞(東京版・夕刊)が報じた記事の見出しである。教団の名は「ラエリアンムーブメント」。教祖のラエル氏(54)は、73年12月に「エロヒム」という異星人からメッセージを受けたと主張し、以来“地球上の生命は科学技術の進んだ地球外知的生命体エロヒムによって科学的に創造された”という創造説にもとづき、活動を行っている。信者数は世界各国に約5万5000人で、そのうち日本の信者は約5000人。教団は「クロネイド」というクローン人間製造会社を設立し、クローンの依頼を受けている。現在、生後10カ月で死亡した米国の男児のクローン作成を準備しているという。費用は1件につき20万ドルと高額だが、不妊症や同性愛のカップルからの依頼が相次いでいるという。
    クローン技術が話題となり、初の体細胞を用いたクローン羊「ドリー」の誕生が公表されたのは97年。国内でも、98年7月に人間の胎児の細胞を用いたクローン牛が誕生している。各国では、人間を対象とするクローン技術規制の動きも出ているが、クローン技術それ自体の研究は進みつつある。ラエリアンムーブメントは、いわば規制の“一線”を越え、クローン人間製造の宣言をしたことになる。
    国内で生命操作と宗教界とが関係してくるのは、90 年代初頭に始まる脳死・臓器移植をめぐる論議においてである。91年6月、「脳死を人の死とする」脳死臨調中間報告が出され、同年12月には、大本教がこの中間報告に「反対」の教団声明を発表した。教義上「心臓が止まってから、魂が肉体を離れて霊界に帰る」ことを人の死とする大本教にとり、脳死は人の死ではないからである。97年10月の臓器移植法施行の後、大本教では臓器提供しないという意思表示のための「ノンドナーカード」を全信徒に配布し、次いで街頭でも一般市民への配布を始めた。2000年秋、国会でクローン規制法案が審議された際にも、いち早く大本教は、慎重かつ十分な審議を求める要望書を、首相の諮問機関・科学技術委員会に送付。更に、ヒト胚研究小委員会にも、同旨の要望書を送付している。
    ラエリアンムーブメントと大本教。このふたつの教団は、以上にみたように生命操作をめぐりそれぞれ明確な立場を打ち出した。ラエリアンは、独自の創造説にもとづきクローン人間の製造を宣言し、大本教は、脳死・臓器移植や科学技術の急速な進展に対し、教義上の生命観にもとづき反対。両教団を並べてみると、科学技術の進展に対する二つの異なる態度を示しているように見える。急速な技術革新に関してイエスかノーかを問うだけならば、両教団は別々の方向を示している。 しかし「現代における生死観の提示」が宗教界に求められる一方で、その生死観は各教団の教義や特質に依拠するため、法律のように共有されるものにはなり得ない。こうした矛盾を含んでいることが、この状況の特徴である。
    以下に、脳死・臓器移植をめぐる国内の動きを追いながら、宗教界に求められる「生死観の提示」とその葛藤の推移について見ていくことにしたい...

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    宗教と生命倫理問題
    1 生命操作に対する二つの態度
    スイスの新興宗教団体が「クローン人間作り/信者使い米で開始」。これは、2000年9月22日付読売新聞(東京版・夕刊)が報じた記事の見出しである。教団の名は「ラエリアンムーブメント」。教祖のラエル氏(54)は、73年12月に「エロヒム」という異星人からメッセージを受けたと主張し、以来“地球上の生命は科学技術の進んだ地球外知的生命体エロヒムによって科学的に創造された”という創造説にもとづき、活動を行っている。信者数は世界各国に約5万5000人で、そのうち日本の信者は約5000人。教団は「クロネイド」というクローン人間製造会社を設立し、クローンの依頼を受けている。現在、生後10カ月で死亡した米国の男児のクローン作成を準備しているという。費用は1件につき20万ドルと高額だが、不妊症や同性愛のカップルからの依頼が相次いでいるという。
    クローン技術が話題となり、初の体細胞を用いたクローン羊「ドリー」の誕生が公表されたのは97年。国内でも、98年7月に人間の胎児の細胞を用いたクローン牛が誕生している。各国では、人間を対象とするクローン技術規制の動き..

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