『D坂の殺人事件』~内に隠れたユートピア~

全体公開
ダウンロード pdfダウンロード
ページ数3
閲覧数511
ダウンロード数5
履歴確認

    ファイル内検索

    資料紹介

    日本のミステリー小説の研究にあたり、江戸川乱歩の執筆した『D坂の殺人事件』という作品を題材として取り上げることにした。日本のミステリー小説とは、海外探偵小説が日本語に翻訳されて進出してきた明治・大正期のころ、日本の作家もその作風を追い求め、主に幻想的、奇怪物な作品を描いたというものである。これらは変格物と呼ばれ、外国探偵小説に見られるパズル的要素というものが当時の日本人作家の文章に欠けていたことと、探偵小説を題材とした雑誌は翻訳ものの短編ばかりが内役を占めていたこともあり、探偵雑誌が発刊されてもそれは断続的で散発的であった。
     大正期に入り日本の社会的水準が高まりつつあったとき、文学を読む者の中には知識欲を持った、またそういった小説を読むことを一種の娯楽であると考える読者も増えてきていた。そんなとき江戸川乱歩という作家が登場した。日本で初めての本格物探偵小説を世に輩出したのだ。

    資料の原本内容( テキストデータ全体をみる )

       『D坂の殺人事件』~内に隠れたユートピア~
     今回私は日本のミステリー小説の研究にあたり、江戸川乱歩の執筆した『D坂の殺人事件』という作品を題材として取り上げることにした。日本のミステリー小説とは、海外探偵小説が日本語に翻訳されて進出してきた明治・大正期のころ、日本の作家もその作風を追い求め、主に幻想的、奇怪物な作品を描いたというものである。これらは変格物と呼ばれ、外国探偵小説に見られるパズル的要素というものが当時の日本人作家の文章に欠けていたことと、探偵小説を題材とした雑誌は翻訳ものの短編ばかりが内役を占めていたこともあり、探偵雑誌が発刊されてもそれは断続的で散発的であった。
     大正期に入り日本の社会的水準が高まりつつあったとき、文学を読む者の中には知識欲を持った、またそういった小説を読むことを一種の娯楽であると考える読者も増えてきていた。そんなとき江戸川乱歩という作家が登場した。日本で初めての本格物探偵小説を世に輩出したのだ。
     本作品が掲載された雑誌『新青年』は、いわゆる文芸雑誌ではなく、かといって当時の大衆作家が活躍した倶楽部雑誌とも異なる存在であった。インテリ向きの娯楽..

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。