中央大学通信【刑法各論】「死者の占有」

閲覧数3,725
ダウンロード数8
履歴確認

    • ページ数 : 11ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    Xは、人気のない山林の中にA子を連れ込み強姦した。犯行の発覚を恐れたXは同女を殺害し、穴を掘って死体をほぼ埋め終わったところで、同女の指に高そうな指輪がはめられていることに気づき、領得意思をもってこれを取った。Xの罪責を論じなさい。

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    『刑法各論』(A07B)<課題3> 教科書執筆者:斎藤 信治
                               
    1.論点整理

     本設問に対するXの構成要件該当性を整理し、論点を述べる。Xは、「人気のない山林の中にA子を連れ込み強姦した」ことにより、刑法177条の「強姦罪」が成立し、「犯行の発覚を恐れ(‥)同女を殺害し」たことで、刑法199条の「殺人罪」、「穴を掘って死体を(‥)埋め」た行為は、刑法235条の「死体遺棄罪」がそれぞれ成立する。

     そして、「穴を掘って死体をほぼ埋め終わったところで、同女の指に高そうな指輪がはめられていることに気づき、領得意思をもってこれを取った」行為を大別すると、刑法235条の「窃盗罪」か、254条の「遺失物等横領罪」の適用が考えられる。

    なぜならば、被害者であるA子が生前に有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護することを法が要請しているのかどうかが争点となるからである(「死者の占有」に関する設問である)。

    2.死者の占有に関する学説の整理

     人が死亡した直後、その人が生前に有していた財物を領得したとき、死者の占有を肯...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。