w0775 社会福祉援助技術Ⅱ ②

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    資料紹介

    資料の原本内容

    「ケースカンファレンスの意義、目的、方法について述べよ。」
     ケースカンファレンスとは
     事例検討会の事でケアプランを作成した後に、利用者が援助過程の中で、状態の変化や新しい課題や問題点がないか、適切な援助目標や援助計画に基づいた介護サービスが提供されているかどうかについて、実際にあった事例を用いて援助を実施するために援助に関するサービスに携わる者が集まり検討する会議の事である。現場においては、サービス担当者会議がその役割を成す事が多く、必要であればケアプランの再検討を行っている。
    ケースカンファレンスの意義と目的
    チームによる事例検討会は、対人援助の領域において、有意義なケースカンファレンスの開催が不可欠とされるが、特にスーパービジョンの実践の場として極めて重要な意味を持っていると考えられる。一つは参加メンバーが利用者に対する援助の大目標を設定し、さらにニーズを分析し援助計画を完成させること。二つめに参加メンバーが共通の援助目的と相互の役割分担を認識し、利用者に関する情報を共有し合う、これら二つの機能があり、またソーシャルワーク実践の内容であると言える。つまり前者は援助計画の作成部分であり、後者は作成した援助計画の実施部分に相当し、問題解決型と情報共有型のケースカンファレンス両方の機能が合わさって、ソーシャルワーク援助が執行されると考える。
    このようなケースカンファレンスを開催する事で、単一のソーシャルワーカーによる援助計画がより精緻なものとなり、参加メンバー間での教育的効果も高くなり、検討して、利用者に対する的確な援助を実施するだけでなく教育的効果も考えられる。また、ケースカンファレンスは援助者であるソーシャルワーカーに教育的効果やスーパービジョンの為に活用される場合もあり、ケースカンファレンスの主目的が援助者の指導や教育にある。その際は指導するスーパーバイザーに相当するものが参加し、個別事例を通じてソーシャルワークの原理・原則を体得することになる。しかし、わが国の福祉六法体制において、行政組織内での査察指導として指導・監督や管理的機能を強調して採り入れたもので、本来のスーパービジョンとは異なる独自の概念であるとされている。
    社会福祉の現場では、専門職の質の低下が問題視され、専門職の養成に対するニーズも高まっている。利用者のニーズの複雑・多様化により、専門的知識や情報不足から援助効果を十分に発揮できない場合も多く、それを補うためにもスーパービジョンやより専門性の高いコンサルテーションの活用も有効な手段であるとされている。
    スーパービジョンとコンサルテーション
    スーパービジョンは同一職種によって行われ、より良い援助ができるように適切な助言や指導をする社会福祉援助技術を支援する援助で、一人のソーシャルワーカーが他のソーシャルワーカーから受ける専門職としての資質向上のための専門的援助過程である。
    スーパービジョンの機能には、管理的・教育的・支援的機能からなり、スーパービジョンを受ける人をスーパーバイジー、行う人をスーパーバイザーといい、ソーシャルワーカーの業務に責任を負う立場である。他に、コミュニケーション、評価の機能も併せ持ち、地域の社会資源および関連の法制度、行政的連携のもとに行われるものである。そのため、所属する機関や施設の機能に沿って、援助の質を高めるとともに、専門職種としての知識、技術、倫理、感性、言語、動作、個人情報保護等を身につける事が重要である。しかし経験の浅い職員がこれらの専門性を活用しながら生じた課題や法律、制度の改正に合わせて継続的に支援していくのは困難であるため、スーパービジョンによる成長をサポートする重要な関係と位置づけられている。また、これらの機能とは別に、組織展開を促進させる機能もある。スタッフの役割と責任の明確化や自己覚知を促し、良質で創造的な実践環境をつくり、スタッフのバーンアウトを未然に防止するような援助、自己実現につなげるように支援し、組織に対しての全体方針や実践に関するフィードバックを行う。前述の機能と併せて、現実のスーパービジョンの中でどのような具体的展開なのかを検討し、情報の共有、クライエント及び他の専門職のニーズを重視し、表面だけでなく、根底にあるものを分析し、より具体的な支援を提供する礎でもある。
    一方、コンサルテーションは多職種から特定の事に焦点を当てた助言を受ける事で、社会的専門性(弁護士や税理士等)を持つ組織や個人とある特定の問題を解決する為の専門性を必要とする個人、集団、コミュニティ等との間に形成される対人関係を通して問題解決を図り、コミュニティソーシャルワークの展開や社会資源の開発の方法と深く関わっている。スーパービジョンと違いソーシャルワーカーに対しての責任義務はなく、任意で対等な関係であるとされている。
     ケースカンファレンスの展開方法と評価
     事例を深め、事例提供者と参加者との共同作業によって、本人が問題解決の主体であるという観点から事例に接近する事で、事例の解決というソーシャルワーク実践力を養うものであると考える。
    援助専門職によるケースカンファレンスにおける事例研究の目標には、①事例を深める②事例を追体験する③援助を向上させる④援助の原則を導き出す⑤実践を評価する⑥連携の為の援助観や援助方針を形成する⑦援助者を育てる⑧組織を育てる、がある。これらの目標を実現するために、ケースカンファレンスを具体的に進めるには、①準備②開始③アセスメント報告④援助計画作成⑤援助計画の確認と実施⑥援助計画の見直し、というケースカンファレンスの展開過程があり、ソーシャルワークの展開過程と基本的には違いがない。また、ケースカンファレンスの評価項目には、①事例提供者の意図の明確化②支援に必要な情報の交流と共有化③総合的アセスメントによる支援課題の明確化④支援計画の具体化⑤利用者の主体的参加⑥市域の関係機関・専門職種との廉家・協力関係の構築⑦チームとしての支援の質の向上⑧社会資源の不備、課題の発見等が考えられる。質の高いケースカンファレンスを積み重ね、個々の事例を深く検討する事で、新たな事実の発見、事例の整理・類型化による困難事例の解決・緩和に向けての方法・技術の明確化、地域ネットワークの構築により、問題解決能力を高め、支援方法と方向性を一定化する事で今後の支援の手掛かりやよりよい制度への改善、行政への働きかけ等、新たな社会資源を構築する手ごたえや確かさへの根拠となり、ワーカー自身においても、スキルとして蓄積される。また、円滑なケースカンファレンスの推進には、参加するメンバー間での相互の信頼関係が必要であり、他のメンバーの専門知識や役割への理解、自己の職種の専門性についての認識、チーム内で求められている役割の把握、メンバーないでの利用者への共通したケース目標の確立、意思決定や評価の尊重が重要であると考える。
    ケースカンファレンスを行う事は、利用者と援助者の間に信頼関係を構築し、それぞれ違う立場で情報を収集する事で、利用者を幅広く理解でき、また参加した他業種との情報交換をする事により、より深く利用者の生活状況が把握できる。また、新たなニーズを発見する事で、別の他業種との連携が地域全体の連携にも繋がり、利用者へのセーフティーネットの網の目が細かくなるのではないか考える。
    参考著書
    『新 社会福祉援助技術演習』
    中央法規 2008年第8版
    社会福祉教育方法・教材開発研究会 編著
    『相談援助の理論と方法Ⅰ』
    中央法規 2008年
    社会福祉士養成講座編集委員会 編著
     社会福祉援助技術Ⅱ  
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