行政法1第4課題

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    中央大学2009年課題

    資料の原本内容

     行政活動が行われる際に充足すべき前提要件の内、当該行政活動を行うについて、活動の対象者、利害関係者、他の行政機関等との関係において、予め、何等かの行為を行う必要がある等、一定のまとまりを持った一連の要件を手続という。行政活動が手続的制約に服することにより、行政活動の決定過程を慎重ならしめ、それを巡る利益を調整することができる。従来、行政手続が法的にどうあるべきかについては、判例や個別の法律で規律されていた。しかし、これでは、手続的制約は不備、不統一である。このことから、行政手続についての一般法として、行政手続法が制定されたのである。行政手続法の対象は処分、行政指導、届出、命令等がある。本論では、許認可等の申請に対する処分の場合の手続と不利益処分をする場合の手続について分けて論じていく。
     従来、申請や届出は、手続の中に含まれてこなかったが、手続を私人の側から考察する場合には極めて大きな意味を有する。申請をすることのできる法的地位は、不作為違法確認の訴え(行訴法3条5項、37条、38条)、不作為についての不服申立(行審法7条、49~52条)で保障されてきた。許認可等の申請に対する処分手続は、行政手続法によって、一般的に規制されるようになった。
    許認可等の申請に対する処分の場合の手続であるが、ここでいう申請とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何等かの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもののことである(行政手続法2条3号)。申請から許認可等までの処分をできる限り公正かつ透明にすることによって、申請者の権利利益の保護を図ることが必要になる。したがって、(1)標準処理期間、(2)審査基準、(3)申請に対する審査、(4)理由の提示、(5)情報提供、(6)公聴会の開催等について明らかにし透明性を向上させることが求められる。
    (1)標準処理期間とは、許認可等に応答するまでに通常要すべき標準的な期間のことをいう(同法6条)。(2)審査基準とは、申請により求められた許認可等をするか否かを法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう(同法2条8号ロ)。(3)申請に対する審査とは、法は受理段階での行政庁の意思表示を外し、申請が事務所に到達したことで、申請書の審査義務が生ずるとした(同法7条)。(4)理由の提示とは、行政庁が許認可等の拒否処分をするには、原則としてその処分と同時に、その処分の理由を示さなければならない(同法8条)。(5)情報提供とは、審査の透明化を図る趣旨で、行政庁に必要な情報の提供に関する努力義務を定めている(同法9条)。(6)公聴会の開催等とは、利害関係者の意見を聴き情報収集の機会を設ける努力義務を行政庁に課したのである(同法10条)。
     不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分をいう(2条4号)。不利益処分の問題点としては、行政庁による不利益処分が恣意的になされたり、また不利益を受ける者に弁明の機会を与えずになされると不当な結果となることがある。そこで、行政手続法は(1)処分基準を示す、(2)意見陳述の機会を与える、(3)不利益処分の理由を提示する、(4)重大な不利益処分の場合の聴聞、(5)通常の不利益処分の場合の弁明という手続を定めている。
    (1)処分基準であるが、行政庁が処分をするにあたり、恣意性、独断性、偏見性をもった発動とならないように、公正かつ平等な処分を担保する必要がある。そこで、行政庁は処分基準を定め、公表するように努めなければならないとされている。
    (2)意見陳述手続とは、不利益処分を課せられる者が自らの言い分を述べる手続である(同法13条1項)。この手続には口頭で意見陳述する聴聞と原則として書面で意見陳述する弁明の機会の付与とがある。例外として意見陳述の手続がとられず不利益処分がなされることがある(同法13条2項)。
    (3)理由の提示であるが、行政庁が不利益処分をする場合には、その理由が存在する。これを明らかにすることによって、行政庁が行う判断の公正と慎重さを確保し、そこで、理由の提示が原則として必要とされている(同法14条)。理由書であるが、取消処分の理由書については、根拠法条を付記するのみでは足りず、取消しの基因となった事実をも処分の相手方が具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならないとしている(最判昭49年4月25日)。
    聴聞または弁明の機会の供与は、従来、行政作用の取消し、撤回等不利益な行政作用が行われるに際して法定されることが多かった(公開の聴聞・古物営業法旧25条等)。また、利益を与えるような行政作用であっても当事者の状況を具体的に聴取してから行政作用を行うことが要請される場合に法定されていたこともある(電波法旧99条の12等)。いわゆる事実審型手続であった。平成5年に行政手続法が制定され、聴聞や弁明の機会の保障に関する一般法が定められた。
    (4)聴聞であるが、これには、通知・代理人・参加人・聴聞の主宰・聴聞の期日における審理の方式・陳述書等の提出・続行期日の指定・聴聞調書および報告書・聴聞の再開・不利益処分の決定・不服申立ての制限等がある。聴聞を開始するには、不利益処分の対象者にまず、何について、いつまでに、どのように防御できるかを知らせて準備させる必要がある。行政庁は不利益処分の対象者に対して、一定事項を書面によって通知しなければならない(同法15条1項)。聴聞手続きを経て不利益処分を受けた当事者がその処分に不服がある場合には、本来であれば、行政不服審査法に基づく不服申立てや行政事件訴訟で争うことができるはずである。行政手続法の聴聞は事前手続であるのに対し、これらは事後的な救済制度であり、両者は異なる制度である。
    (5)弁明の機会の付与であるが、聴聞とは違い、原則として書面を提出して弁明させる(同法29条)。聴聞で認められていた参加人や文書等の閲覧等の各規定は、弁明の機会の付与には準用されない。聴聞は許認可の取消・撤回、資格・地位の剥奪、法人役員の解任命令等、相手方に課される不利益の程度が重大な処分であるのに対し、弁明の機会の付与は、不利益の程度の小さな処分である。
     以上、行政活動はどのような手続的制約に服するかについて論じた。従来、行政手続が法的にどうあるべきかについて判例や個別の法律で規律されていたが、不備、不統一という理由から行政手続法が平成5年に制定された。この行政手続法には、処分、行政指導、届出、命令等がある。本論では、許認可する場合の手続き、不利益処分をする場合の手続きに分けて、両者の手続について概観した。聴聞と弁明の機会の供与については、行政手続法制定前では、不利益な行政作用が行われるに際して決定されることが多かったり、また、利益を付与する作用であっても具体的に聴取してから行政作用を行うことが要請される場合に決定されていたこともある。このことから、行政手続法制定前と制定後では、聴聞と弁明の機会の供与の性格が異なっていたことがよく分かる。
    参考文献等
    芝池義一「行政法総論講義」有斐閣、280-330
    塩野宏「行政法Ⅰ」有斐閣、234-284
    行政法1 第4課題
     行政活動は、どのような手続的制約に服することになるか。許認可をする場合の手続き、不利益処分する場合の手続きについて分けて論じなさい。(単に、行政手続法を書き写すだけでは、課題に答えたことにならないことに留意すること。)

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