ゴールドラッシュから見るロシア正教

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    資料紹介

    柳美里の『ゴールドラッシュ』ではしばしばヒロイン響子の視点が、ドストエフスキイの書く『罪と罰』のヒロイン、ソーニャの視点を意識して書いてあるのがわかる。聖書に関する記述が多く出てくるのだ。
    しかし、現代物語の『ゴールドラッシュ』では『罪と罰』と大きく違う点がある。固く信じられるものがないのだ。響子は孤児院で輪姦されるも、悪いのはお前だ、と言わんばかりの仕打ちを受ける。指導員から聖書を渡され、ヨブ記を読むものの、救いは得られず、「闇と苦悶が恐ろしいほどリアルに感じられ荒れ地と不毛の地をさまようしかないこと」を悟ってしまうのである。「神」にすがることもできず、周囲も信頼できない、そんな世界に響子は生きてきた。何のために生きているのかもわからず、信じるものは自分だけだったのだ。しかし主人公の少年が殺人を犯すことで、自分の生きる意味(少年を自首させること)を理解する。結局響子は宗教には頼らず、自分を頼って生き、少年にも「宗教の必要はない、誰かを信じて生きろ」と言う。それだけ今の日本では宗教と言うものが薄れてしまったということだろう。彼らがむやみに神頼みをするような場面は出てこない。

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    ゴールドラッシュから見るロシア正教
    柳美里の『ゴールドラッシュ』ではしばしばヒロイン響子の視点が、ドストエフスキイの書く『罪と罰』のヒロイン、ソーニャの視点を意識して書いてあるのがわかる。聖書に関する記述が多く出てくるのだ。
    しかし、現代物語の『ゴールドラッシュ』では『罪と罰』と大きく違う点がある。固く信じられるものがないのだ。響子は孤児院で輪姦されるも、悪いのはお前だ、と言わんばかりの仕打ちを受ける。指導員から聖書を渡され、ヨブ記を読むものの、救いは得られず、「闇と苦悶が恐ろしいほどリアルに感じられ荒れ地と不毛の地をさまようしかないこと」を悟ってしまうのである。「神」にすがることもできず、周囲も信頼できない、そんな世界に響子は生きてきた。何のために生きているのかもわからず、信じるものは自分だけだったのだ。しかし主人公の少年が殺人を犯すことで、自分の生きる意味(少年を自首させること)を理解する。結局響子は宗教には頼らず、自分を頼って生き、少年にも「宗教の必要はない、誰かを信じて生きろ」と言う。それだけ今の日本では宗教と言うものが薄れてしまったということだろう。彼らがむやみに神頼みをする...

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