議員の免責特権(判例評釈)

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    資料紹介

     医療法の一部を改正する法律案を審議する委員会における、国会議員Xの発言によって夫の名誉を毀損され、その直後に夫が自殺したとして、その妻Yが、不法行為を理由に当該議員と国を訴えた事件である。

    本件発言は、国会議員であるXによって、国会議員としての職務を行うにつきされたものであることが明らかであるから、仮に違法な行為であるとしても、「国が賠償責任を負うことがあるのは格別」、公務員であるX個人はその責任を負わないと解すべきである。したがって、「本件発言が憲法51条に規定する『演説、討論又は表決』に該当するかどうかを論ずるまでもなく」X個人に対する請求は理由がない。
    国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右「責任が肯定されるためには、当該国会議員が、そ
    の職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする」。本件発言は、そのような特別な事情に該当しない。

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    議院の免責特権(判例)
    (1)事実の概要
    医療法の一部を改正する法律案を審議する委員会における、国会議員Xの発言によって夫の名
    誉を毀損され、その直後に夫が自殺したとして、その妻Yが、不法行為を理由に当該議員と国を
    訴えた事件である。
    第一審(札幌地判平成5年7月16日)は、憲法51条は、議会における議員の言論の自由を
    最大限保障するために、他人の名誉等を侵害した責任を含め議員の議会内における言論に基づく
    一切の法的責任を免除したものである(絶対的免責特権)。しかし、51条は国会議員が議院で行
    った演説等に違法の点があっても、民事・刑事等の法的責任を負わない旨を規定したのみであっ
    て違法性がなくなるとするものではないから、51条が妥当したとしても国家賠償法1条1項所
    定の「違法」がないことにはならない、とした。
    原審(札幌高判平成6年3月15日)では、損害賠償請求が認められる余地をさらに限定し、
    まずXに対する請求それ自体は、たとえ本件発言が免責の対象とならないとしても、国家賠償法
    上、公務員個人の賠償責任は問い得ないと解されるから、失当である旨の理由が付加された。一
    方、国に...

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