3-3最小作用の原理

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    最小作用の原理
    ラグランジアンって・・・。
    変分原理
     前回の話を分析してみよう。  我々は質点が転がり落ちる時間 t を最短にするようなコース f (x) を求めたかった。 その時間 t を
    と表した場合、t が最小になるための条件は
    という方程式が成り立つことだった。
     ここで大切なのは、この条件を求める上で、関数 T の具体的な形については全く問題にしなかったということである。 ただ T が f (x) と f '(x) の関数になっているということだけを利用した。 これは応用するのに大変都合の良い話ではないだろうか。 変数を入れ替えるだけで次のような言い換えが出来てしまうのだ。
     何らかの量 I を最低にするような物体の軌道 q (t) を求めたいとする。 この時、この量 I を q (t) と q' (t) の関数 L を使って
    と表した場合、I が最小になるための条件は
    という方程式が成り立つことである。
     さて、もうバレバレだろうが、この関数 L とはラグランジアンのことである。 では、何らかの量 I というのは一体何なのだろう? それが謎である。 とりあえずこれを「作用」と名付けることにする。 名前をつけると分かった気になれるものだ。 そして、とにかく現実の質点の運動はこの「作用」を最小にするようになっているのだ、と考えることにする。 これが「最小作用の原理」というやつだ。  一般には必ずしも最小になるわけではなくて、極大だったり、傾きが0の変曲点だったりするような問題もあるので、「ハミルトンの原理」あるいは「変分原理」と呼んでおくのがいいのかも知れない。
     さて、残された問題は、この考えがうまく当てはまるためには関数 L をどのような形で定義してやればいいのだろうかということだけである。 ああ、ラグランジアンというのは何という人為的な量だろう。 それでもこの考えに当てはまる量が現実に存在するのだから驚きである。 見つけた奴がいるというのも驚きだ。 いや、見つけること自体は大して難しくもないのだが、そういう量があることを初めに信じた奴がいたはずで、私はむしろそのことに感心するのだ。
    フェルマーの原理
     このような量が存在するだろうという信仰の元を作ったのがフェルマーという人物である。 彼はあの「フェルマーの最終定理」でも有名だ。 これは面白い話なので本当は詳しく話したいくらいだが、今回の話題とは関係のない数学の話なのでやめておくことにしよう。 知らない人は調べてみるとよい。
     彼は光の進路についての簡潔な法則をも発見している。 それは「光線は目的地まで最短時間で到達できる進路を選ぶ」というものである。 実際は変分原理に似た形式のもっと厳密な表現がされているのだが、意味的にはこんなものである。 これを「フェルマーの原理」と呼ぶ。
    注:実際には次のような表現がされている。 「光は2点間を結ぶあらゆる可能な経路の内、経路を連続的にわずかに変えたときに、その光学的距離(経路を通過する時間)の変化が起こらないような経路をとる。」 まさに変分原理そのものの表現だろう? こう言っておかないと、鏡に反射するより直接行った方が近いじゃないか、なんて反論が出てきてしまうのだ。
     光が直進することについてはわざわざこんな表現をするまでもないだろう。 しかし、この簡潔な原則から光の反射角や屈折角までもが説明できてしまうのだ。 光がガラスに入るところで少し曲がり、出るときにも少し曲がるのだが、その進路は光が最短時間で到達できるようなルートになっている。
     何と不思議なことだろうか! まるで全てのことを予めご存知であられる全能の神がおられて、光の行き先を知り、その行程が最短になるように進路を定めておられるようである。 この法則は当時の神学と結びつき、「神は倹約家である」という格言まで作られた。 これは少々行き過ぎで無理があるかも知れないが、分かったことを取敢えず何にでも応用してみるという姿勢は大好きである。
     簡潔な原則だけから他の雑多な諸法則が導けるのだとしたら・・・これこそ究極の法則の形なのではないだろうか? 現在の物理学の中にはこのような形式の法則を重んじる思想がある。 むしろ、それが主流派ではなかろうか。 特に「あらゆる可能な経路のうちで・・・」という辺りの形式が量子力学の解釈とマッチして大変都合のよいことになっているのだ。
    資料提供先→  http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/action.html

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