渡辺昇一「神聖な義務」

閲覧数3,485
ダウンロード数8
履歴確認

    • ページ数 : 3ページ
    • 会員550円 | 非会員660円

    資料紹介

    「生命倫理学の諸問題」レポート
    渡辺昇一「神聖な義務」について
    <はじめに>
    私は、この文章に出会うまで、ナチスによる大量虐殺が「優生思想」の考えに基づくも
    のだと知らなかった。単にユダヤ人へのいわれなき差別意識から、虐殺行為が行われたの
    だと考えていた。またさらに、ナチスはユダヤ人だけではなく、精神病患者・ジプシー・
    その他ヒトラーの考えでドイツ民族の血のためにならないと思われたドイツ人までも虐殺
    の対象とされていた事実にも私は無知であり、ただ衝撃を受けるばかりであった。第二次
    世界大戦中「民族浄化」の言葉の下ドイツ軍により命を奪われたのは、他民族であるユダ
    ヤ人やジプシーだけではない。同じドイツ民族の人間であっても、精神に異常をきたした
    り、体が不自由であったり、ヒトラーの考えに反旗を翻した者、つまり、戦闘要員となり
    得ないとみなされた多くのドイツ人もまた、「ドイツ民族のためにならない」として命を奪
    われたのであった。
    大量虐殺が繰り広げられ、血で血を洗うような戦争中にあって、精神異常とは何だった
    のだろうか。ヒトラーの考えに従い人を殺し続け、民族の血を清めることが国是であった
    としても、それを漫然と行うことが正常な精神状態といえるのであろうか。「優生学」とい
    う言葉が指し示す内容は戦後大きく変わったといわれるが、「優生学」という言葉が人々に
    与えるイメージは現在でも、ナチスの虐殺であり、その為、これに代わる言葉が必要であ
    るといわれている。しかし果たして本当に、ナチスの大量虐殺を招いた「優生思想」と現
    在の出産・出生制限による遺伝病の防止は、全く重なり合わなくなったのか私には疑問で
    ある。
    <渡辺昇一「神聖な義務」について>
    渡部氏は、福祉費の高騰の可能性を示唆し、その責任を、遺伝性でかつ明確な治療方法
    が確立されていない病気を持つ人々に転嫁している。またそうした遺伝病や精神疾患を有
    する人々を出産・出生制限により排除していくことが、今を生きる人間の「神聖な義務」で
    あると述べている。さらに渡部氏は、第二次世界大戦中、ヒトラー率いるナチスが行った
    ような、国家権力による異常者や劣弱者の一掃(大虐殺)には、倫理的に問題があるとし
    ながらも、「神聖な義務」と称して、遺伝病や精神疾患を有する人々に対して子孫を残すこ
    となく、自ら断種することを強制しており、その行為を人間の尊厳に沿うふさわしいもの
    だと評している。
    渡部氏がこうした遺伝的疾病、遺伝的要素の強い疾患、悪性の強い犯罪者や常習犯罪者
    の遺伝子は断絶させるべきだと考える表向きの根拠は、健全で高質な社会を構築し、維持
    していくため」である。彼は、ヒトラーと同時期に活躍したフランスの生物学者・外科医
    であるアレキシ・カレルの「異常者や劣弱者が、ある比率以上に社会に存在すると、社会
    全体がおかしくなるのではないか」という指摘を引用し、ヒトラーが行った大量虐殺を「非
    人道的犯罪の功績」と評し、ドイツ人もヒトラーが行った犯罪行為を反面では功績として
    携え、そう思っているドイツ人も少なくないと述べ、ヒトラーの行った「民族浄化」は現
    在のドイツに「繁栄」をもたらしたと述べている。つまり、ヒトラーによるユダヤ人や精
    神病患者・ジプシーなどの殺害行為によって。戦後ドイツの復興と繁栄がなしえたという
    のである。この考えを裏返して言えば、国を「繁栄」させようと思うのなら、国の発展と
    反映に非効率であり、不必要である存在を排除すればよいということになる。だからこそ、
    渡部氏は「国を発展させるための国

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    「生命倫理学の諸問題」レポート
    渡辺昇一「神聖な義務」について
    <はじめに>
    私は、この文章に出会うまで、ナチスによる大量虐殺が「優生思想」の考えに基づくも
    のだと知らなかった。単にユダヤ人へのいわれなき差別意識から、虐殺行為が行われたの
    だと考えていた。またさらに、ナチスはユダヤ人だけではなく、精神病患者・ジプシー・
    その他ヒトラーの考えでドイツ民族の血のためにならないと思われたドイツ人までも虐殺
    の対象とされていた事実にも私は無知であり、ただ衝撃を受けるばかりであった。第二次
    世界大戦中「民族浄化」の言葉の下ドイツ軍により命を奪われたのは、他民族であるユダ
    ヤ人やジプシーだけではない。同じドイツ民族の人間であっても、精神に異常をきたした
    り、体が不自由であったり、ヒトラーの考えに反旗を翻した者、つまり、戦闘要員となり
    得ないとみなされた多くのドイツ人もまた、「ドイツ民族のためにならない」として命を奪
    われたのであった。
    大量虐殺が繰り広げられ、血で血を洗うような戦争中にあって、精神異常とは何だった
    のだろうか。ヒトラーの考えに従い人を殺し続け、民族の血を清めることが国是であ...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。