『言語連想検査』~無意識とコンプレックス~

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    『言語連想検査』~無意識とコンプレックス~                                   
                  
    序論
    現在、日本ではコンプレックスというと「劣等感」(ここでは、実際はどうであれ、自分が人より劣っているとか、無価値だ、生きていけるか自身がないというような感情の意味とする)と捉えられている。
    これは戦後、アメリカより入ってきたアルフレート・アドラーの人格心理学の理論(劣等複合inferiority complexを理論の中心に置いており、劣等複合の克服を通じて人格の発達が成立するとした理論)が、日本人には親しみがあったため、アードラーの理論が流通し、又、その理論の中心概念である「劣等複合」が受け入れられて一般になったのだろう。
    「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」の事であるが、アードラーの理論の一般的な受容と、コンプレックスが日本において流布したため、コンプレックスというと「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。「コンプレックス」と言えば、暗黙に「劣等コンプレックス」の事を指す傾向があり、更に現代では、コンプレックス=劣等感という式が出来上がって今に至っているのだ。
    では、もとはどんな意味があるのだろうか。
    この言葉を最初に持ち込んだのはヨーゼフ・ボロイアーであるが、有名にしたのはユングだ。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、無意識(意識されていない心の部分)内にある、何らかの感情によって統合されている心的内容の集まり(ある事柄と、感情とが結合された状態)である。
    怒りや悲しみなどの強い感情や体験、思考が、無意識的に結びついている状態を意味するのだから、コンプレックス=劣等感は正しいとは言えない。
     コンプレックスが無意識内(意識されていない部分)にあるのだとすれば、私たちがそれを見つけるのは容易ではない。
     そこで登場するのが、投影法である。
    たとえば空を見たときに、「なんだかさびしそうな空だ」と感じたとする。しかし他人は「気持ちいい空だ」と思っていたような経験は無いだろうか。心の内の「寂しい」という感情を通して空を見ているから寂しいと感じ、一方友達は「気持ちの良い」という感情を通して見ているから気持ち良いと感じられる。心をモノに映し出すことを「投影」と呼ぶ。
    投影法(projection)という名称はフランク(1939)によって初めて用いられたが、その特徴は用いられるテスト材料や教示など刺激状況やテスト状況に多かれ少なかれ曖昧さ、不完全さ、あるいは多様性があり、これをどのように被検査者が受け取り反応するかが問題とされる。このような状況下にあって、被検査者は客観テスト場面におけるような明確な行動の規準をもたず、自らのパーソナリティ全体をもって反応しなければならない。そのため、この方法で被検査者の内的な世界を解き明かすことが出来るのである。(プリント)
    あいまいな刺激(言葉や絵など)であるから、被験者は対応を意図的に操作する事がしにくい。つまり、意識的な反応ではなく、無意識下の反応ということになる。
    刺激語へ反応(言葉や態度)に投影される、被験者の内的な世界(無意識の世界)を知る事が出きるというわけだ。
    代表的な投影法検査としては、インクのシミが何に見えるかで、被験者のものの見方、まわりとのかかわり方などを調べるロールシャッハテスト、20枚程度の絵から、自由に物語を作らせるTATなどがある。これらの投影法の基礎となったのがユングの開発した言語連想検査だ。
    言語連想検査はユング以前にヴント

    資料の原本内容

    『言語連想検査』~無意識とコンプレックス~                                   
                  
    序論
    現在、日本ではコンプレックスというと「劣等感」(ここでは、実際はどうであれ、自分が人より劣っているとか、無価値だ、生きていけるか自身がないというような感情の意味とする)と捉えられている。
    これは戦後、アメリカより入ってきたアルフレート・アドラーの人格心理学の理論(劣等複合inferiority complexを理論の中心に置いており、劣等複合の克服を通じて人格の発達が成立するとした理論)が、日本人には親しみがあったため、アードラーの理論が流通し、又、その理論の中心概念である「劣等複合」が受け入れられて一般になったのだろう。
    「劣等複合」とは「劣等コンプレックス」の事であるが、アードラーの理論の一般的な受容と、コンプレックスが日本において流布したため、コンプレックスというと「劣等複合」を指すような日常の用語法が生まれた。「コンプレックス」と言えば、暗黙に「劣等コンプレックス」の事を指す傾向があり、更に現代では、コンプレックス=劣等感という式が出来上がって今に至っているのだ。
    では、もとはどんな意味があるのだろうか。
    この言葉を最初に持ち込んだのはヨーゼフ・ボロイアーであるが、有名にしたのはユングだ。ユングの定義によれば、コンプレックスとは、無意識(意識されていない心の部分)内にある、何らかの感情によって統合されている心的内容の集まり(ある事柄と、感情とが結合された状態)である。
    怒りや悲しみなどの強い感情や体験、思考が、無意識的に結びついている状態を意味するのだから、コンプレックス=劣等感は正しいとは言えない。
     コンプレックスが無意識内(意識されていない部分)にあるのだとすれば、私たちがそれを見つけるのは容易ではない。
     そこで登場するのが、投影法である。
    たとえば空を見たときに、「なんだかさびしそうな空だ」と感じたとする。しかし他人は「気持ちいい空だ」と思っていたような経験は無いだろうか。心の内の「寂しい」という感情を通して空を見ているから寂しいと感じ、一方友達は「気持ちの良い」という感情を通して見ているから気持ち良いと感じられる。心をモノに映し出すことを「投影」と呼ぶ。
    投影法(projection)という名称はフランク(1939)によって初めて用いられたが、その特徴は用いられるテスト材料や教示など刺激状況やテスト状況に多かれ少なかれ曖昧さ、不完全さ、あるいは多様性があり、これをどのように被検査者が受け取り反応するかが問題とされる。このような状況下にあって、被検査者は客観テスト場面におけるような明確な行動の規準をもたず、自らのパーソナリティ全体をもって反応しなければならない。そのため、この方法で被検査者の内的な世界を解き明かすことが出来るのである。(プリント)
    あいまいな刺激(言葉や絵など)であるから、被験者は対応を意図的に操作する事がしにくい。つまり、意識的な反応ではなく、無意識下の反応ということになる。
    刺激語へ反応(言葉や態度)に投影される、被験者の内的な世界(無意識の世界)を知る事が出きるというわけだ。
    代表的な投影法検査としては、インクのシミが何に見えるかで、被験者のものの見方、まわりとのかかわり方などを調べるロールシャッハテスト、20枚程度の絵から、自由に物語を作らせるTATなどがある。これらの投影法の基礎となったのがユングの開発した言語連想検査だ。
    言語連想検査はユング以前にヴント、言語連想の方法を心理学に用いることは、1987年のゴールトンの連想の実験心理学だが、これを臨床的に用いようとしたのはユングが最初である。
    ユングは、検査者の主観性に判断が委ねられてしまう反応語ではなく、連想時間の遅れや、連想の失敗という点に着目した。
    ある単語から連想されるものを何でも良いから答えるこの実験は、簡単そうに思えるが、反応が遅い単語があったり、意外なことで答えられなかったりする障害があることをユングは認めたのだ。彼は、簡単な言語の連想をするにあたって反応時間が相当遅くなるなどの障害は、知的な問題があるのではなく感情的な要因に起因すると考え、これを臨床的に応用するために言語連想検査を作成した。
    検査の方法は、100単語を刺激語とし、被験者にこれらから連想される単語を一つ、できるだけ早く答えてもらう。検査者はストップウォッチを持ち、刺激語を読み終えてからの被験者の反応時間を反応語とともに記録する。全ての連想が終わり次第、再検査としてもう一度前に言った語を繰り返して言ってもらい、覚えていれば+、忘れていれば-、一回目と異なる語を答えた場合にはそれを記録するというものだ。
    この実験は、前にも記したように多くの投影法の基礎になっている。そのことからも、言語連想検査の有益性が伺えるのだ。
    実験の目的
    今回の実習は、多くの投影法の基礎となったユングの言語連想検査の検査者および被検査者を経験し、投影法の特徴および問題点を理解すること。また、自分の検査結果から自らのコンプレックスの内容についての理解を深めること。
    方法
    実験方法
     まずユングの用いた刺激語100単語(表1参照)を用い、二人一組になって検査者と被検査者を交互に経験する。
    一回目の検査で、検査者は被検査者に「今から単語を一つずつ、順番に言っていきますので、それを聞いて思いつく単語を一つだけ出来るだけ早く言ってください。」と教示し、ストップウォッチを持ち、刺激語を言ってから、相手が反応語を言い終わるまでの反応時間を書き留めていく。全部の連想が終わったあとで、「もう1度繰り返しますので、前と同じことを言ってください。」と教示し、再検査する。被検査者が前回の反応を覚えていたら+(プラス)、忘れているときは-(マイナス)を記入し、前回と異なった単語を言ったときはそれを記入していく。
    なお、ユングは連想検査において、コンプレックスの存在を探す手がかりとして以下のようなコンプレックス指標というものを定めている。  1)反応時間の遅れ  2)反応語が思いつけない  3)刺激語をそのまま繰り返して答える  4)2語以上を用いて反応する。(文章になっていること。)  5)明らかな刺激語の誤解  6)再検査のときの忘却や間違い  7)刺激語を外国語に訳して答える  8)刺激語を言うと、先ず「はい」と言ってから反応したり、反応語の前に何か言う場合  9)明らかな奇妙な反応  10)同じ反応語が繰り返される  11)観念の固執 (河合,1984)
    被検査者 
    心理学科2年Bクラス 女性 (検査者とは高校入学時からの友人である)
     自分
    検査日
     平成19年4月24日 授業の時間内にピアノ室で行った。
    材料
    河合(1971)に示されているユングの連想検査の刺激語を表にした用紙、1枚。 ストップウォッチ(2人1組となった1グループに1つ) 鉛筆
    手続き
    河合(1971)に示されているユング連想検査の刺激語を用い、言語連想検査を実施した。
    1) 2名1組となって、検査者と被検査者に分かれる。
    2) 検査を始める前に「今から単語を1つずつ、順番に言ってゆきますので、それを聞いて思いつく単語を1つだけ、       できるだけ早く言って下さい。」と教示を出した。
    3) 検査者はストップウォッチを持ち、刺激語を言ってから被検査者が反応するまでに要した反応時間と反応後を記録用に記録していった。なお、このとき検査者は刺激語を言い終わってからスタートを押し、被検査者が反応を出し終わったときにストップウォッチを止めた。
      反応時間を相手に見られないように記録した。
    4) 100番目までの刺激語が終わったら、「もう1度繰り返しますので、前と同じことを言って下さい。」と教示を出して再検査を行った。
    もう一度検査を行った。「もう1度繰り返しますので、前と同じことを言って下さい。」だった。
    このとき、被検査者が前回の反応を覚えていたら+(プラス)、忘れていたら-(マイナス)を記入し、1回目と違う言葉を言ったときは、それを記入した。
    結果の処理
    検査結果の分析には自らが被験者となった検査結果を用いること。
    反応時間の平均と標準偏差を算出すること。
    反応時間の度数分布を作成する。
    コンプレックス指標の①反応時間の遅れについて、度数分布、平均、標準偏差の値とから極端に反応時間の遅れた単語を見出す。
    コンプレックス指標の②以降についても検討する。
    以上を元に自分のコンプレックスの内容について考察し、投影法の特徴と問題点を考察する。
    結果
     今回の実験では、自らを対象に検証した。実験結果から、平均時間と標準偏差を算出したところ、平均時間1.94秒、標準偏差は1.50秒(0.001秒以下四捨五入)となった。格刺激後に対する反応時間を図にし、平均から外れた数値を読みやすくしたものが図1である。その中で平均から極端に外れている(2秒以上)数値を読み取ったところ刺激語「部分」、「注意する」「結婚」「鶴」「同情」「軽蔑する」の6つに対する反応に時間がかかっていたことが分かった。また、「部分」については14.00秒と約7倍もの時間を要していることが分かった。平均から1秒以上に下げて、反応を見てみると、上記の6つに「誇り」「木」「ガラス」「心配」が加わることが分かる。また反応時間を分布図にしたものが、図2である。この図から、反応時間が分布は正に歪んでいることが分かった。また刺激語と反応後を見比べ、検討してみたところ「打...

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