保健学的基礎

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    強いストレスをうけた子どもたちへの対応

    資料の原本内容

    強いストレスをうけた子どもたちへの対応
    共感的に話を聴いてあげる
    子どもは災害時に自分の体験したことやその時の気持ちを話しているうちに、気持ちが楽になり整理されていきます。そのためにできるだけ子どもの話を聞いてあげるための時間を取ります。その時には子どもの話を評価せずにただ耳を傾け、子どもの気持ちに「そうだったんだね」「そんな気持ちだったんだね」と寄り添います。つまり「こうしたらいい」といったアドバイスはあまりせずに、ただ気持ちをわかってあげようと思いながら話を聴きます。「がんばってこれを乗り越えないといけないよ」「これからあなたが一家を背負っていくんですよ」などと責任を強く感じさせ、「~しなければならない」という気持ちを喚起するような言い方や、「悲しまなくてはいけませんよ」「このことより何か他のことについて話しましょう」などと強制するような言い方などは控えます。もちろん、「もう後ろを振り向かず前を向いて」などアドバイスもしません。ただ子どもの話しに寄り添うように話を聴きます。子どもは、自分の話を共感的に聴いてくれる人に、ただ自分の気持ちを話しているうちに、自然と自分の気持ちに向き合い、自分の気持ちが楽になると感じることがあります。また何度も話を聴いてもらううちに、どうやって対処したらいいかわからなかった自分の気持ちが整理されていくことがあります。子どもは、同じ話を何度も繰り返し話すかもしれません。その場合も、「もうその話はこの前もしたでしょう」などと遮断せず、子どもが気が済むまで何度も聴いてあげます。
     一緒に遊んであげる
    小学生までの子どもだったら、お絵かき、ボール遊び、トランプなどで、一緒に遊んであげます。子どもは、遊んでいるうちに気持ちが整理されていくこともあります。また話を聞いても何も話そうとしなかった子どもが、遊びがきっかけで話をするようになる場合もあります。遊びは自分の気持ちを話すきっかけになることも多いのです。

    したがって例えば、お絵かきなどでは、一枚の絵に交互に書きいれて完成させその絵について話し合ってみたり、子どもが描いた絵について話題にしながら話をしていくと良いでしょう。子どもと一緒に遊ぶ時には、正しく行儀よく遊ばせるよりも、ルールは違っても子どもの遊びに付き合ってあげることが大切です。そのための第一歩、まずは子どもが何をして遊びたいか聞いてあげます。一緒に遊ぶ時には、子どもと一緒に楽しむ気持ちが大切です。遊びは、子どもにとって、自分の気持ちを表現し、自分の気持ちに向き合い整理していくことの助けになります。
    体に触れてあげる・抱きしめる
    特に小さな子どもは肩に触れてあげたり、しっかり抱きしめてあげると不安な気持ちが減り、不安定だった気持ちが安定することもあります。出来るだけスキンシップを図ってあげたり、小学生くらいまでの子どもであれば、しっかりと抱きしめてあげ、「守ってあげるからね」「大丈夫だよ」などと安心できる言葉をかけてあげると良いでしょう。信頼できる大人にしっかり抱きしめられ、守られていると感じることができれば、子どもの心は安定します。自分の子どもであれば、1日1回はしっかりと抱きしめてあげるといいでしょう。

    また、子どもを抱きしめる時には、大人の気持ちが安定していることが大切です。子どもを抱きしめる時には、自分の気持ちも安定した状態でやってあげましょう。しかし中にはスキンシップや抱きしめられることを望まない子どももいます。本人が望まないならば、決して無理強いしないことです。
    災害を体験した子どもが経験する代表的な感情と、その受け止め方について
    イライラ
    子どもたちは以前よりイライラしやすくなったりキレやすくなったりします。これは悲しみや怒りを表現できず身体の中にため込まれてしまっている状態とも考えられます。

    ・心配でイライラして落ち着かない

    ・むしゃくしゃして乱暴になる

    ・すぐカッとするようになる

    ・八つ当たりする

    などの反応がそれを表しています。

    子どもは、絵を描く、遊ぶなどの行為が、感情表現に役に立つことがあります。したがって子どもと一緒に遊んであげるという行動が、イライラやキレやすくなっていることへの対処になることがあります。また、かれらが腹を立てたり不満に感じている話、悲しいと感じた話を聞いてあげることも効果的です。話を聞いてあげる時には、子どもの気持ちを、「~と感じたんだね」「そうだよね」「悲しかったね」「それって腹が立つね」と共感しながら聞いてあげることを大切にします。「だから、悲しくならないように○○しようね」「そんなにくよくよ考えなくて良いよ」などとアドバイスすることは避けたほうが良いでしょう。ただ気持ちに共感するだけで気持ちは発散されて楽になっていきます。
    不安
    子どもたちは不安を強く感じています。

    ・以前よりちょっとした物音にビックリするようになっている

    ・胸がドキドキしたり苦しくなる

    ・また地震や津波が起きるのではと心配ばかりしている

    ・急に怖いことを思い出す

    ・怖い夢を見て目を醒ます

    などの反応がそれを表しています。

    しかし、これは震災で怖い思いをした子どもにとっては当り前の反応だとも言えます。子どもは怖い体験を受け止めて整理することができずに苦しんでいるのです。このような子どもたちには安心感を与えられるよう、守ってあげるという姿勢で接します。「大丈夫だよ」「そばにいてあげるよ」などと安心できるような言葉をかけて、「怖かったね」と気持ちを受け入れてあげます。また不安がっている子どもに対しては、ハグしてあげる、肩や背中に手を置いたまま話を聞いてあげることも効果的です。「不安」「怖い」など感情の表現がうまく出来ない子どもには、「怖かったのかな?」とそれを言葉にする手助けをしてあげます。また、テレビの報道を見せることは、子どもの不安をあおりたてる結果になることがあります。災害報道のニュースは必要最小限にして、出来れば災害映像や危機感や恐怖感をあおりたてるような報道番組を何度も繰り返して子どもに見せるのは控え、報道の内容は大人が子どもに伝えてあげるようにします。
    悲しみ
    災害で様々なものを喪失した子どもは悲しみを抱えます。それは、大切な人、家、学校、ペット、友達、遊び場、日常の生活など、失われるものは様々です。

    ・よく泣くなど、悲しそうにしている

    ・悲しい夢をよく見る

    ・ふさぎこんでいてあまり話をしない

    などの反応はそれを表しています。

    大切なものを喪失して、悲しみを感じているのは当然の反応です。それがしばらく続いても自然なことです。深い悲しみの中にいるとしても、それを大げさ・おかしいなどと決めつけたり、早く癒さないといけないと急かさないでください。悲しみが癒えていくのをゆっくりと見守り、サポートします。悲しみをいやすためには、まず悲しんでいる子どもの話を聞いてあげます。家族や友達との死別など強い悲しみを伴う出来事については、なかなか全部は話したがらない場合も珍しくありません。そういう場合は、話さなければならないと無理強いしたり細かく聞き出したりせず話をするのを待ちます。亡くなった大切な人のことを語り始めたら、黙って聞いてあげ、「悲しかったね」と気持ちに共感してあげま

    す。子どもをハグして思い切り泣かせてあげるのも良いでしょう。その時には、「さあもう泣くのはやめて」「いつまでも泣いていても仕方ない」などと言わず、ただ泣きやむまで悲しみを受けとめてあげることも大切です。子どもは、悲しみを抱えていても悲しみをあらわさない、つまり泣かないし悲しいと言わないことも珍しくありません。悲しみを表さないからといって悲しくないわけではないことを知っておきます。たとえ遊んで楽しそうにふるまっていても、深く強い悲しみを感じていることがあります。
    「悲しい」という気持ちの表現がうまく出来ない子どもには、「その時悲しかった?」とそれを言葉にする手助けをしてあげます。子どものなかには、悲しみをどう表現していいかわからず、自分の気持ちを話したがらない人もいます。そういう場合は、絵を描いたり、音楽を聞いたり、本を読んだりなどの気分転換のほうが、無理に話をさせるよりも、気分を落ち着かせるのに役立つかもしれません。また人と交わるより一人でいたいと思う子もいるでしょう。そういう場合は、無理に話をさせようとせずに見守ってあげます。「あなたが何か話したくなったら何でも話してね」と話をしたくなったら聞く準備があることを伝え、話したいと言ってきたら聞いてあげましょう。また家族や友達を亡くした小学生以下の子どもは、何か悪いことが起こるという不安におびえたり、幽霊などにおびえたりすることがあります。そういう場合彼らの心は、死というものを受け入れることがうまく出来ていないのかもしれません。彼らにはその人は死んでしまって、もう生き返っては来ないんだということを受け入れることができるように関わる必要があります。死というものがまだよく理解できていない子どもには、死んだ人はもう息をしないし、動かないし、痛みや苦しみも何も感じないなど、死についてゆっくりと理解できるように関わっていくことが望ましいでしょう。そのときには、「あなたが生きていてよかった」「まだ生きている家族がいることを喜ばなくては」「運命だったんだよ」「あっという間で苦しまなかったんだよ」など、相手に自分の考えを押し付けるような言い方は控えます。
    罪悪感・無力感・抑うつ感・怒り
    災害に遭ったあと、子どもは、自分は何もできなかったと自分を責めたり、自分だけが生...

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