午後の曳航

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    資料紹介

    13歳の主人公は自分が天才であること、世界はいくつかの単純な記号と決定で出来上っていること、父親や教師は存在自体が害悪であることを知っている。彼の父が他界して5年が経つが、母親は今、息子が抽出の小さな穴から盗み見ているともしらず、とある二等航海士との情事にふけっている。窓の外に海が見える。遠くで汽笛がなる。少年は宇宙的な聯関を感じる。
    この作品は主人公登の目、母親房子の目、二等航海士竜二の目の3つの視点から描かれている。房子、竜二の視点から見れば、この物語はどこか切ない、そして大衆的なラブロマンスである。未亡人と航海士の恋、その卑俗さを分かっていながら、安いロマンスの主人公のように涙を流す房子、自分の中にある男のロマンのような思想を結局一つも語ることなく、女の涙に応える男。二人の行き着く先は平和な日常生活(マイホームでの生活)なのだが、それに至るまでを正確に醒めた視点で書ききっている。しかし、この話はそれでは終らない。少年は知っている。父親という存在、健全で暖かい家庭、これらが始める教育というのは怖しく破壊的である。自分に「成長」を迫ろうとする。彼には恐くてたまらない。竜二が父親の役割を務めたことで、少しずつ変わっていく自分の家の様子に彼はおびえきってしまっているのである。彼は自分にいろいろな思想を啓蒙した存在である<首領>たちと集まり、会議を開く。自分達は天才である。感情のない訓練のために猫も殺した。<首領>は六法全書を見せる。刑法第四十一条、十四歳ニ満タザル者ノ行為ハ之ヲ罰セズ。
    首領たち少年グループが竜二を丘の上に引き連れていくこと、小さな船が大きな船を曳航する様子に、私は夕暮れ時に感じる、ため息をつきたくなるような寂しい美しさを感じた。この作品は、登たちが主役というわけでもないし、房子たちのラブロマンスが中心というわけでもない。

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    13歳の主人公は自分が天才であること、世界はいくつかの単純な記号と決定で出来上っていること、父親や教師は存在自体が害悪であることを知っている。彼の父が他界して5年が経つが、母親は今、息子が抽出の小さな穴から盗み見ているともしらず、とある二等航海士との情事にふけっている。窓の外に海が見える。遠くで汽笛がなる。少年は宇宙的な聯関を感じる。
    この作品は主人公登の目、母親房子の目、二等航海士竜二の目の3つの視点から描かれている。房子、竜二の視点から見れば、この物語はどこか切ない、そして大衆的なラブロマンスである。未亡人と航海士の恋、その卑俗さを分かっていながら、安いロマンスの主人公のように涙を流す房子、自分の中にある男のロマンのような思想を結局一つも語ることなく、女の涙に応える男。二人の行き着く先は平和な日常生活(マイホームでの生活)なのだが、それに至るまでを正確に醒めた視点で書ききっている。しかし、この話はそれでは終らない。少年は知っている。父親という存在、健全で暖かい家庭、これらが始める教育というのは怖しく破壊的である。自分に「成長」を迫ろうとする。彼には恐くてたまらない。竜二が父親の役割...

    コメント1件

    bassline 購入
    余よくわからなかった
    2006/03/16 23:37 (18年1ヶ月前)

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